読まれない小説を延々書き続ける拷問。
私は普通にネット小説を読んでいるだけだった。
ネット小説は面白い。頭のいい人も悪い人も自分の経験値を吐き出して最高の物を作ろうとしている。
ふと不安になったのだ。貴方たちの知識って普通にお金になるよね。それを捨てるように吐き出している。
理解できる人がいないと思っているのかも知れないけど私は普通に理解できる。説明が上手い人に至っては正気なのかと心配になってしまう。
そんな人たちを見ていると、私も自前の知識を用いて小説を書いてみようかと思った。
最初に書いたペットが乱闘して主人公を守ったり問題を解決する小説は思ったより人気だった。でも作家になれるほどではなかったみたい。難しいなぁ。作家になりたいなあ。
そう思っていながら毎日の身だしなみを整えて朝御飯を食べて出勤する。幸せだなぁ。こんな単純なことになぜ幸せを感じるんだろう。
そう思っていた。私は、誘拐され、監禁された。
あはは……なによこれ。私みたいな貧相な女をわざわざ誘拐してどうするの?
私は早々に猿ぐつわを噛まされ、舌を噛みきることもできないまま暴行を受けた。もうやめて。もうやめて。
そいつらが次に言ったのは私に小説を書けと言うことだった。意味が分からない。確かに私は小説を書いたことはあるが、お世辞にも上手くはなかったのに、なぜ私に白羽の矢が立ったのだろう。
そう思ったがすぐにわかった。私以外にも無数の人がこの牢獄に繋がれているのだ。私は、端役の一人なのだ。
彼らは私に小説を書けと言ってきた。意味は分からない。ひょっとしたら私たちが書いた小説を他の誰かに読ませて知識を吸収させて世に出すつもりなのだろうか。そんなこと上手く行くはずがない。でも書かないでいると私は鞭で撃たれた。やめて、許して、そう言っても一向に止まない。書くから、そう言えば止まった。
私は仕方なく書くしかなかった。面白くないと殴られる。面白いと思うように書かないと駄目だった。許されなかった。とてつもなく苦しかった。
私が如何に貴重だと思う知識を吐き出して作品を書いても書いても、世に出る時には違う人の名前だ。でもやがて、健康管理だけは良くなった。それなりのものは食べられるようになった。
私は奴隷なのだ。新作を面白く書くことだけを強要された。
そのうちに私は、この暮らしに、慣れた。どうせ誰も私自身を評価はしない。私は自分以外の他の植物を肥やす土塊なのだ。
やがて、私は、低体温症で、死んだ。
お前も作家奴隷にしてやろうか(閣下風に)
よく考えると、作家の世界だけの話ではないよね、これ。