第十話 ふふ、物語というものはいつか終わるものさ
さて、今回で終わりとなってしまいました……今思えば非常に駆け足だったなぁと思っています。
第十話
一人の少年が地下への階段を降りていた。
「まさかとは思っていたけどこれはいいことになったね……木曽家の人たちもとんだお宝をみすみす手放すなんて………やっぱり、没落していく家系を見ているのは他家であっても心が痛いね」
その割にはあまり表情が変わりない言い様だった。
「さて、僕が出来ることといえば何があるのかな?」
少年は地下室の扉を開ける。そこにあったのはもう一つの扉だった。
「さってと………とりあえずあの二人がどうなったのか………良く見ておいたほうがいいかもねぇ………土蜘蛛、ようやく君の主を見つけてあげることが出来たよ、いってくれ」
少年は暗がりへと視線を飛ばすが、そこから返ってきた返事は文句を言ったのだった。
「え〜剣治、何言ってんだよ……これから俺はデートなの。野郎の相手をしている暇なんてないんだよ………第一、俺の主は女の子じゃなかったわけ?」
「残念だが九割がた女性っていったよ。一割は男の可能性だってあるって言っただろ?」
「ちっ、どうせお前のことだから実は九割男だったんだろ?」
「さぁ?それはどうだろうね」
剣治は答えずに扉を開ける。
「さ、急いで行ったほうがいいよ」
「いやだね俺にも何かいいことがないと却下だ」
「じゃ、予報してあげよう。彼と一緒にいると絶対に美少女、美しいお姉さん方と会うことが出来る」
その言葉に陰から嬉しそうな返答が帰ってくる。
「ほ、本当か?」
「ああ、本当だ……今度は嘘をつかない」
「よしっ!乗ったぜ!じゃあな」
「ああ、思う存分エンジョイしてくるといいさ」
陰の主はすばやく移動するとすぐに扉の中に姿を消したのだった。
そして、残されたほうの少年は今度は別の部屋の扉を開ける。そこには『零式』とかかれた鉄の棺桶の様な物があった。棺桶内には管が通されており、時折聞こえてくる息遣いが不気味さを漂わせている。
「…………さて、どれほどの力を発揮するのかな?時雨君、ぜひとも僕にその成果を見せて欲しい………」
陰の主が消えた扉にその鉄の棺桶を入れ込む。棺桶に変化は無く、素直に入り、姿を消してしまった。
「………じゃ、僕もそろそろ行く準備をしないとね………」
そして、最後にその扉に入っていったのは謎の少年だったのである。