表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

2017年/短編まとめ

MIOちゃんとオミくんと深夜の牛丼屋さん

作者: 文崎 美生

オミくんと喧嘩をした。

原因は些細なことで、幼馴染みでありながらイトコと近い関係で、それでもやはり、お互い言い出したら引くに引けなくなってしまったのだ。

気が付けば私は、財布と携帯だけを持って、家の外へと飛び出していた。


怒るとお腹が減るらしく、どこかでなにか食べようと思い立つ。

こんな時間じゃ、開いているところも少ないけれど、と携帯を見下ろせば、指し示された時間は日付変更線を越えていた。


駅前の牛丼屋に足を踏み入れはいいものの、キムチの入った牛丼を注文してから気付く。

私、所持金いくらだったっけ、と。

財布をこっそり覗けば、銀色のコインが一枚と茶色が数枚。

どう見積もっても足りない。

もちろん、お札はなかった。


こんな深夜に呼び出せる間柄の友人知人なんて、近所にはいないのに、と思う。

他に幼馴染みが二人いるが、一人は深夜に出歩くような子ではなく――私としても出歩かせたくない子だ――もう一人は何をしているんだ、と言いながら私には関係ないと首を振る子だった。

それどころか、早く仲直りでもなんでもすればいい、と言われそうだ。


そう考え、結局は泣く泣くオミくんに「迎えに来てください」と電話をすれば、ノイズ混じりに「はぁ」と溜息が聞こえ、通話が切れた。

数分後、息も切らさず平然と店内に入ってきたオミくんは、座るでもなく私に向かって「阿呆か」と暴言を飛ばす。

ごもっともだと思う。


ようやく私の目の前の席に腰を下ろしたオミくんは、長い前髪を払い「お前は阿呆か。もっと考えて行動出来ないのか?俺が来なかったら、どうするつもりだったんだ」と、やはり流れるような罵倒を飛ばす。

それでも、少し、オミくんの額に滲んだ汗に、少しだけ、嬉しくなった。

喧嘩中だったはずなのに、だ。


そうしてオミくんは、しれっと店員を呼んで、追加で自分の分の注文をする。

しかも大盛りで。

「これ食べたら帰るからな」と言われ、私は素直に頷いた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ