1.7決断
これの10話後ぐらいまでの話は浮かんでいます。
書いていませんが
「ごめんなさい……」
近寄ってくるなりこれである。まるで俺が重傷を負ったかのようだ。
いや、かなりの傷は負ったが謝られる程のものではないし謝る理由もよく分からない。
「謝らなくていいから」
俺がそう言うと「でも……」と優子が顔を下に向けて言う。
「俺がこうなったのは別に優子のせいではないし、俺の独断での交戦なんだから」
「でも、私がもう少し早く着いていれば……」
「俺は、まだ生きてるし今回は良いだろ?」
「でも大きな怪我を負ったし……」
これは優子に何言っても気を取り直しそうにない。
話を変えれば何とかなるのでは、と閃く。
「それより【オーク】の攻撃で負傷した隊員は?」
優子の力があればまず死ぬことはないだろうが、万が一というのも有り得る。
「もう少し入院は必要だけど状態は良いみたいだよ」
思った通りである。優子の治癒力は圧倒的で大規模な戦闘でも重宝されるぐらいだ。
「そうか」
そう言いすぐ話題を切り替える。
「俺がいない中ちゃんと任務できるか?」
「大丈夫! 翔君の入院期間の間に入る任務を周辺警備だけにしてもらったから」
周辺警備というのは、中世の都市にいる門番兵みたいなものだ。ぶっちゃけて言えば他よりかは危険度がぐんっと下がる任務である。
「お、おう……」
「そろそろ時間みたい」
あまり面会をしていて体調を崩すといけないということで面会時間は限られている。
「じゃあ私行くね。早く治してね」
「おう」
そう言うと優子は振り返り部屋から出ていった。
それと入れ替わりのように晋作が入ってくる。
「今日まで何も異常はない。この状態が続けば後数日……いや、後2日ぐらいで退院できるはずだ」
それは朗報だ。流石に束縛され続けていると気が滅入ってしまう。
「まぁ、退院後はちょっと特別訓練を受けてもらうことになるが……」
「特別訓練? どういうことだ?」
「Lv4の【A.D】を持つ君でさえこれだけ手こずらされた【オーク】の上を行く【D】がいるということはもっと手こずらされるどころか倒される可能性は十分あり得る。そこで翔君には訓練を受けてもらうんだけど、訓練というよりかは修行かな……?」
「どいうことだ?」
「【A.D】の力っていうのはある程度の力――具体的に言えば30%の以上の力は出せないように歯止めがかかっているだ。人体に危険があるかもしれないからね。ただ、これだと限界があるんだ。今回の件のようにこちらはLv4の【A.D】を失いかけた。翔君の飲んだあの薬はその歯止めを一時的に解除することができてさらには100%以上の力を出せるようにする。これを覚醒と呼んでいるんだけど。特別訓練と言うのは薬なしで覚醒をできるようになることなんだ」
いまいち話が分からない。つまりあの薬を飲んで起こったことを故意的に起こすということだろうか。
「そんなことできるのか?」
「君ぐらいの技量があれば可能だ。ただかなりきつい訓練になるだろう。覚悟はできているか?」
その質問に俺は悩んだ。これ以上に戦うことは自分の身にも仲間の身にも危険が生じるのではないか、そう思うと気が引けてしまうのだ。
だが、俺はやるしかない、そう思った。
力をつけることで危険が生じてもそれを回避させることができるかもしれないと思ったからだ。
「もちろん」
俺はそう返事した。
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