1.6帰還
5.0ぐらいまで続く予感
目を覚まし目を開けると、目の前は真っ白だった。
一瞬ここが天国だと思ったがすぐ違うと気づいた。
手足が動かない。顔は動かせるので手の方を見る。それでやっと分かった。
「拘束されてるのか……」
俺はベッド横たわっている。手足は拘束具を付けられベッドに縛られた状態ということだ。ついでに言うと今俺がいる場所もなんとなく把握ができる。
さっき目の前が真っ白だって言ったが横を向くと、心拍を測ったりする機器や、注射やメスの乗った台がある。様々な医療器具があるこの部屋は治療室ってところだろう。部屋はプラスチックだろうか何製か分からない透明の板で囲われているようで、そこから女性が一人こちらを見ている。
「優子」
部屋の外から涙を流しながらこちらを見ているのは優子だ。
「翔君、君にはもう少しこの状態でいてもらうよ」
優子がいる側とは反対側から声がする。俺はそちらの方へ振り向く。
そこには、医者――茂木晋作がいた。
「なんでだ?」
俺はそう言った。
「君は分からないのだろうから説明してあげるよ。と言っても詳しく言うと長くなるので割愛させてもらう。」
「君は間一髪のところで、救出に来た増援部隊に助けられた。優子君の能力による回復もあり何とか一命を取り留めた。だが……」
「君はこの1周間ずっと意識を取り戻さなかった。また、あの薬を使った痕跡があったのと血を多く失っていた。あの薬は健康状態の人間には影響ないがここまで多く血を失った人間に投与して影響がないとも言えなかった。暴走する可能性があるのと君がLv4だということを考えて安全と確認されるまでは拘束しているのだ」
暴走と言うのは、つまりは【D】になることだ。なんらかの原因――殆どが【A.D】所持者の著しい免疫の低下により【A.D】が人間を乗っ取ってしまうことを言う。そうなると【D】と何の変わりもない。
「なるほど」
俺は言った。
「そういえば、【オーガ】は?」
俺が死んでいないということは【オーガ】は瀕死となり逃げたか倒されたかどちらかになる。
「【オーガ】は死んだ――というより食われたという方がいいのか……?」
「どういうことだ?」
「【オーガ】はあの場にはもういなかった。だがその代わり何か巨大な【D】が捕
食された痕跡が残されていたのだ。またその【D】と戦闘をしたと思われる痕跡も残されていた」
つまりどういうことかというと、【オーガ】はこれとは別の【D】と戦闘を行い負け捕食されたということだ。【D】の中にも弱肉強食の概念があり弱い【D】は強い【D】に食べられることがある。
【オーガ】も戦闘で消耗していたこともあり弱った所を一方的にとどめを刺され食われたのだろう。いくら弱っていたとは言っても【オーガ】を倒したとなるとLv4の【D】だと思ったほうが良いだろう。また、【オーガ】を捕食したことにより、さらに強化された【D】になっていることは間違いない。
「そんなことは考えなくて良い。とりあえず薬を飲んで今は休むのが良いだろう」
そう言って薬を差し出す。
俺はそれを受け取り、水と一緒に飲んだ。寝ようと思い目を閉じたがそういえば外に優子がいることを忘れていた。
「優子を入れてやることはできるのか?」
俺は晋作に尋ねる。
「それぐらいなら良いだろう」
晋作は自動ドアから部屋の外に出て優子と何かを話している。少し話した後優子がどこかへ言ったかと思うとよくある緑色の服を着込んでやってきた。
次回投稿は11月26日水曜日21時
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