1.5 戦闘(3)
寒いですね。
俺は咄嗟に耳を抑えたが、その巨大な声により起こった空気の振動で両耳の鼓膜が破けてしまう。ほぼ機能しない耳を手で押さえて倒れこむ。
音の力は強い。高音でガラスが割れた何てのもあるぐらい音の力は強い。今の【オーク】の叫び声は一種の攻撃でもあるように思えた。
耳が痛いだけではなく、頭が割れるような激痛が走る。激痛に悶え地面に倒れ込む。
痛くて動けそうにない。足もプルプルと震えて立つのもままならない。
触感はあるため地面が揺れるのが分かる。【オーク】が近づいてきているのだ。
あぁ……ここまでか……。
俺は覚悟した。
そんなことを思っているうちに【オーク】が近くまでやってきたようだ。
地面に倒れ込む俺の体を手で握り顔の前まで持ってくる。俺の目の前には【オーク】の顔がある。
【オーク】は握る力を強くする。俺の体からバギゴギという音が鳴ると共に体中の骨が折れたことによる激痛が全身を走る。痛くて叫びたいのに声が出ない。
【オーク】は俺の体を思いっきり壁に投げつける。既に激痛が走っているためそれ以上の痛みを感じないようだ。
意識も朦朧としてきた。
その時、俺は思い出す。最終手段として開発された、能力を一時的に活性化させることのできる薬があるのを思い出した。どんな状態でもこの薬は使えるが、体に負担が大きく諸刃の剣というわけだ。
視界が霞む中腰のポケットから一粒の錠剤を取り出す。それを飲み込む。
その効果はすぐに現れたようで、力も入らなかったはずの体にはみるみる力が湧き視界もはっきりとした。
効果が続くのは3分か……。
3分で倒せなくても瀕死まで持っていくとができれば上出来だろう。
俺は足に力を込めて飛び上がり一瞬で【オーク】の目の前まで移動する。今までとは比べ物にならないくらい速さだ。
その勢いのまま予め握っていた金属の杭をぶん殴る。今までの攻撃とは比べ物にならないくらいの攻撃力を持った杭が【オーク】目掛けて放たれる。
更に追い打ちのように顔に一発回し蹴りを入れる。杭の攻撃のすぐ後だったからか敵の守りが一切無かった。直接蹴りのダメージを受けた【オーク】はその巨体を宙に浮かせ吹っ飛んだ。
今のはかなり効いただろうか……?
冷静に考えながらも次の行動に移る。
まず、敵に刺さった杭を爆発させる。体の内側からの攻撃には一切耐性がないらしい。爆発のダメージを全て受けた【オーク】の体はほんの一部を四散させる。
次に、杭を更にもう一本取り出しそれを手に持ったまま走る。ほんの数秒で倒れている【オーク】の近くまでやってきた後、右足の膝目掛けて杭を撃つ。
それをすぐ爆発させ、追加で股を殴る。
さっきの爆発で膝に大きなダメージを受けた【オーク】は立とうにも立てない状態にいた。
最後に、飛び上がり【オーク】の腹に乗る。そのまま腹を連続で殴る。殴り続け30発程殴った後後退した。
これでさすがに【オーク】も動けないはずだ。
「そろそろか……」
俺は壁を背に座る。
そろそろ薬の効果が消える頃だ。
さっきまで消えていた全身の痛みがどんどん舞い戻ってくる。
朦朧とする意識の中俺は目を瞑った。ここまでボロボロになったのに達成感に溢れていた。
次回投稿は11月23日21時予定