1.3戦闘
夜が寒い
その圧倒的な気迫で俺は押しつぶされそうだった。一瞬硬直した俺だがすぐ指揮をとる。
「攻撃開始!!!」
分隊員も驚きと恐怖で硬直していたがその合図を聞いて我に返り、銃を撃つ。
【オーク】への攻撃が開始され怯んでいる間に、俺は中央広間にいるはずの優子を探す。
案の定優子と分隊員はすぐ見つかった。俺の分隊がいる所から壁沿いに90度右に進んだ所にいた。中央広間が円なので、俺がいるところを南とすれば優子達は東にいるということだ。
ここから俺だけが優子のとこに行くと俺の分隊員が危うい。かといって全員で移動したところで【オーク】の攻撃の的が増えるだけだ。
『優子、今すぐそこから俺の方に来い。入り口から出てこの場から離れろ。全員を連れて一回帰って援軍を呼んで来てくれ』
俺は無線で優子に言った。
『でも、ここで傷の手当をしないと……』
優子は涙声で嗚咽混じりに言う。
『お前の能力なら助けれるだろ……!』
優子の【A.D】は特殊型「支援」だ。名の通り色々な支援ができる。範囲回復や集中回復などが可能で支援に特化しているのだ。
『でも、翔君だけじゃ……』
『もう時間がない。早く逃げろ!』
俺一人だけでは結構きつい。だが、援軍が来れば状況が変わる可能性がある。それだけの時間は稼げる。
『俺なら大丈夫だから』
俺は優子にそう言い無線を切る。
「攻撃止め! 優子の撤退の護衛をしろ」
分隊員に命令する。
「隊長はどうするんですか!?」
隊員の一人がそう言うが無視する。そんな時間は残されていない。
「そろそろこっちに優子が来るはずだからそれについていけ」
そんなことを言っているうちに全速力でこっちに走ってきた優子分隊と俺の分隊が合流。優子分隊と俺の分隊員は中央広間から撤退した。
撤退を確認した後、【オーク】の方に向き直る。さっきの銃撃は全く聞いていないようで傷ひとつついていない。やっと目覚めたという感じだ。
グオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!
完全に目覚めた【オーク】の強烈な咆哮が耳に突き刺さる。
「……鼓膜が敗れるかと思ったわ」
咆哮で巣自体が揺れる程だ。
次回投稿は11月16日日曜日の21時