その日、起きたこと
母はわたしが小さいころ死んだ。父親だけを知っていた。
「母様は、どうしてお空にいっちゃったの?」と聞いたら好きなものを買ってくれた。
でも、ほんとは知っていた。お父様のせいだ。お父様が嫌いだった。嫌だった。
自分が贅沢するために私を使うのが、私がお父様に染まっていくのが。
そして人は私を「傾国の姫」と呼ぶ。お父様のことは「愚王」と呼んだ。違うわよ、あいつは愚かじゃない。計算高い狂った腹黒男よ。
時がたち、私の十歳の誕生日。盛大な誕生日パーティが行われた。私の好物だらけに見えて、お父様の好きなものだらけ。
そしてそんなパーティも終盤になったきたとき、一人の少年が私のドレスにジュースをこぼした。
笑って誤摩化すつもりだったが、父様が近づいてきてこう言う。
「あぁっ!私の愛しい娘のドレスが汚れてしまった!なんと無礼な!」
嘘つけ。あなた、暇なだけでしょ……さりげなくお父様を止めようとする。
「どうする?こいつどう殺す?私の愛しい娘よ」
笑みをたたえた狂った瞳。殺さない、なんて言ったら「お母様みたいに」殺されそう。泣きたくなる自分を唇をかんで律する。「お父様みたいに」狂った笑みを演じて、絶望の表情の少年を見ながらこういう。
「そうですわねぇ、首でも切りますわ」
その日の深夜、少年が広場で殺された。
聞こえる泣き声をお父様は私がうるさがってると言い、剣を持った兵士を向かわせ、殺させた。
次の日、いつも静かな国内が沸き立っていた。一人の従者がこう伝える。
「は、反乱軍が攻めてきます!」
なぜかとっても嬉しかった。でも、お父様はとても焦って、兵士をたくさん出す。
そうこうしてるうちに城が囲まれて、兵士達も寝返った。くすくす、お父様焦ってる。
「くっそ、ちくしょう、なんで、なんでだよ!」
そう叫んだと思うと唯一残ってくれた貴族の娘に、ナイフを向けた。
「キャーーーーーーーーー!」「え!?ちょっと、ちょっと待ちなさい!何をしてるの?お父様ぁ!」
どうしたの!?なんで?
「お前が言ったんだろ?シャリーナ!」
お父様?その子はお母様じゃないわ、どうしましょう、錯乱してる?私たちの声を聞かずにそのままナイフを振り上げるお父様。貴族の娘はお父様の手を必死に押さえて止めてる。戸惑う私にその子が言った。
「姫様、そこの剣を私に!」「えっ!?あ、ええ!」
壁に立てかけてある国宝らしい美しい剣、それをよくわからないままその子に投げる。
「ありがとうございますっ、やぁぁぁぁぁぁぁ!」「がぁっ」
嫌な音がした。おびえる私にその子が言う。
「姫様、お逃げください…逃げてください!はやく、はやくっ!」
「え、でも、でも……「はやく!」」
見知らぬその子が有無を言わせぬ迫力で、私をせかす。
「ごめんなさい!」
ついに私は、城の窓から飛び降り、逃げた。