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第十三話

「黒須くん、大丈夫なんですかね? 速水さんも安全に帰れたでしょうか?」

「大丈夫も何も昼間には何もしてこねえよ」

「登校する時に、吸ったらダメです。いくら、昼間に何もしてこないって言ったって、蓮沼先輩が本当に黒幕なら、池田さんのように誰かを使う可能性だってあるじゃないですか? その時に、黒須くんが停学とか退学になってたら、誰が守ってくれるんですか?」


 翌朝、桜華学園へ登校する途中、優夢は先日の失踪事件の黒幕である由貴がいるため、不安なようで伐に登校しても良いのかと聞く。

 伐は気だるそうに言うと制服の内ポケットからタバコを取り出して口にくわえる。

 彼の様子に優夢は慌てて、伐からタバコを取り上げると警護をするならしっかりとして欲しいと言う。


「……ちっ」

「舌打ちもなしです」


 伐は優夢の言い分もわかるようで舌打ちをすると、優夢は伐に態度が悪いのも良くないからと釘を刺す。


「……何のようだ?」

「黒須くん!?」


 その時、伐と優夢の並んで歩いている間を男性が割って入ろうとする。

 伐は何かに気が付いたようで右手で男性の腕をつかむと男性の腕にはナイフが握られている。

 ナイフを見て驚きの声をあげる優夢だが、伐はナイフで刺されそうになる事などなれているのか興味などなさそうに男性を見下ろして言う。


「……簡単に使われやがって」

「黒須くん、な、何をする気ですか?」

「少し黙ってろ」


 男性の目はどこか光がなく、伐の言葉に反応する事もない。

 その姿に伐は一つの答えを出したようであり、眉間にしわを寄せると男性の腕をひねり、地面に這いつくばらせる。

 優夢は伐が男性に暴力を振るおうとしていると思ったようで驚きの声をあげるが、伐は優夢に黙っているように言うと左腕を振り下ろす。


「く、黒須くん!?」

「慌てるな。殺すわけじゃねえよ。操られてるだけのバカを殺すのは寝覚めも悪いしな。何より、誤魔化しずれえ。人通りもあるしな」

「わ、わかりました」


 伐の左腕は男性の胸に突き刺さり、男性は糸が切れたようにぐったりとしている。

その姿に優夢は顔を真っ青にするが左腕が刺さった男性の胸からは血が溢れ出すような事はない。

 その様子に優夢は伐が歪みとなった章久の中から、失踪事件の被害者を引っ張り出した事を思い出したようで、その時と今の伐の姿が重なったようで大きく頷いた。


「……先輩、あのうさんくさい男に電話しておいてくれ」

「近江さんですね……あの」


 伐は男性の中にある何かを探す事に忙しいようで自分の携帯電話を取り出して優夢に投げて渡す。

 優夢は伐が誰の事を言っているか直ぐに理解したようで伐の携帯電話から真の電話番号を探そうとするが何か気になる事があるようで伐に声をかける。


「何だ?」

「黒須くんって、ガラケーなんですね」

「……今、それを言う事か?」

「そ、そうですね」


 優夢は伐が携帯電話を使っている事が不思議に思えたようであり、素直にその事を口に出すが、その一言は場の空気を読んでおらず、伐は眉間にしわを寄せた。

 伐の様子に優夢は納得したようで慌てて、アドレス帳から真の電話番号を探すと電話をかけ、3回ほど呼び出し音が鳴る。


「はいはい。どうかしたのかい。ノラ猫くん?」

「近江さんですか?」

「あれ? 優夢ちゃん? ノラ猫くんは?」


 電話の先の真は軽い調子で返事をすると、伐の携帯電話から電話があったはずなのに相手が優夢である事に首を傾げる。


「今、黒須くんはお取り込み中なんです」

「そんな、実況中継? 優夢ちゃんもノラ猫くんのいろいろと開発されちゃってるわけだね」

「そ、そうじゃありません!? 良いですか」


 優夢は伐の代わりに電話をかけたと言おうとするが、真からの言葉は卑猥であり、優夢は顔を真っ赤にして電話の先の真を怒鳴りつけた後にまくしたてるように伐がナイフを持った男性に襲われた事を説明する。


「へー、ノラ猫くんが襲われたんだ。ナイフ程度で? ずいぶんとうかつな人だね。ノラ猫くんを殺すなら、最低でも拳銃くらいは用意しないといけないよね」

「そう言う事を言っているわけじゃありません!!」

「……貸せ」


 説明を終えても真はたいした事ではないと思っているようであり、優夢をからかっており、その姿に伐はため息を吐くと携帯電話を取り上げた。


「ノラ猫くん、無事かい?」

「心配もしてねぇのに聞くんじゃねえよ。時間の無駄だ。それにあまり時間をかけると遅刻するとかうるせえんだよ」

「あれ? ……実は結構、面倒な事になってる?」


 伐は真の形だけの心配にため息を吐くと、早く用件を済ませたいようで気だるそうにため息を吐く。

 電話先の伐の声に真は思っている以上に事が厄介な方向に進んでいると思ったようで声の質は変わって行き、悪ふざけをする様子ではなくなっている。


「あぁ、囲まれた。日が昇るとやれる事が限られてくるが、数で仕掛けてきたな。歪みとしての力はねえから、何人か送ってくれ」

「く、黒須くん、これって危ないですよね? 安全だって言ったのは嘘だったんですか!?」


 携帯電話を片手に頭をかいている伐の隣で優夢は学園に向かう通学路の途中でナイフや金属バットを持った男性数名がこちらに向かってあるいてきているのを見つける。

 その目には光はなく、自分達の意思ではない事が理解できた。

 優夢は歪み相手ではなく、物理的な身の危険に顔を引きつらせると、安全だと言った伐を責めるようにまくし立てる。


「……十人? さっきの男も入れれば十一人か? 一晩でこれだけの男をくわえこんだのか? ずいぶんとお盛んだね。俺も相手をして貰いてえもんだ」

「な、何を言ってるんですか!? 落ち着いてないで逃げましょうよ。そ、そうだ。この間みたいに光の球になって」

 伐は武器を持った男性達の人数を数えると呆れたようにため息を吐くと電話を切り、携帯電話を内ポケットに入れる。

 落ち着いた様子の伐とは対照的に優夢は逃げないと殺されると思ったようで伐の制服をつかみ、彼を引っ張った。


「あれは無理だな。日が高いうちは使えねえ。相手の歪みと同じで力が制限される」

「そうなんですか?」

「あぁ、猫は夜行性だからな」

「く、くだらない事を言ってないで、力が使えないなら急いで逃げましょう」


 伐は力が制限されている事を話すと優夢は泣きそうな顔で伐に逃げようと言う。


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