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ロストナンバー  作者: 宇野 宙人
閑話 
52/70

消えた下着泥棒 中編

「んで、下着盗まれたお前の友達って誰?」


 被害者の話を聞くため屋上を後にした景は、希初とライラに付き添われ、自分のクラスに向かっていた。

 ちなみに彗は、未だ疑いが晴れてない紫苑の見張りとして屋上に残っており、祐とナイトは「ちょっと用事が……」と言って、どこかに行ってしまった。


「藤沢さんだよ」

「……誰?」

「藤沢桜さん。ほら、あのおさげ髪で隠れ巨乳でちょっと天然の!」

「…………悪い。全然記憶にない」


 本気で首をかしげる景に、希初はハァ~と息を吐く。


「景君。もうすぐ一学期も終わるんだし、そろそろクラスメートの顔と名前くらい覚えようよ」

「男子は何とか覚えたんだけど……って、そんなことより」

「分かってる。犯人探しが先だって言いたいんでしょ」


 希初は百も承知とばかりに、歩みを速める。


「ところで、希初。紫苑以外の犯人に心当たりはないのか?」

「う~ん、そうだね。強いてあげるなら、ここ最近起きている“アレ”が関係あるかも」

「“アレ”?」


 疑問符を浮かべる景に、希初が説明し出す。


「実はね、景君。ここ数日、学校で色々な物が不自然に紛失するっていう事件が相次いで起きているの」

「マジか。いや、でもそれなら、もっと騒ぎになってなきゃおかしくないか?」

「それは盗られた物が、昼休みに購買で買ったサンドイッチとか、部活中に使ってたタオルとか、大したことないものばかりだから、本気で探す人がいなかったんだよ」

「……それに、調べた限り、生徒の中に犯人らしき人物はいなかった」

「調べた?」

「……私も盗られたから。キウイの香り付き消しゴム」

「ああ、そう」


 希初とライラの話を聞き、景は頭の中で犯人像を予想してみる。

 盗られたものは、サンドイッチ、タオル、消しゴム、そして下着。何の共通点もない盗品の数々に、景は犯人の目的を図りかねる。


(単なる愉快犯? でも、生徒の中に犯人はいないらしいし)


 そんなことを考えている内に、2組の教室へ辿り着く。

 中に入ると教室には女子生徒しかおらず、男子生徒は一人もいない。


「やっぱり、居たたまれなかったんだね」


 ふとそんなことを呟く希初に、景は全力で聞こえないふりをする。


「それで、その藤沢さんって、どこにいんの?」

「えーっと…………あれ?」


 希初はキョロキョロと辺りを見回すが、彼女の姿はどこにも見当たらない。


「いないね。食堂かな?」

「……私、見てくる」


 言うや否や、教室を出ていくライラ。残された二人は、彼女の背中を見送りつつ、話を進める。


「さて、景君。これから、どうする?」

「どうするって……待つしかねえだろ」

「待てるの? この空気の中」

「……嫌なこと訊くなよ」


 周りからの冷めた視線をひしひしと全身に感じながら、景はため息をつく。

 他人の目は気にしない性質とはいえ、全く平気と言うわけでもない。


「じゃあさ、先に現場検証でも行っとく?」

「不破は待たんでいいのか?」

「後でRINEするから、大丈夫だよ」


 ほら、と希初がピンク色のカバーに覆われたスマホを取り出す。


「……希初」

「ん?」

「最初から、そいつで藤沢本人に電話すれば良かったんじゃねえの?」

「あ~、それは無理だね。さっちゃん、すぐ失くしちゃうとかで、普段携帯とか持ち歩いたりしないし」

「それ、携帯の意味ねえだろ」


 かくして二人は教室を出ると、現場である女子更衣室に直行した。




◇◇◇◇◇◇




 階段を降り、廊下を右に少し進んだ先に例の女子更衣室はあった


「ここが現場か。そういや、今更だけど男のオレが女子更衣室に入っていいのか?」

「大丈夫じゃない? どうせ、今は誰もいないんだし」


 そういう問題なのか、と景は思ったが、希初はドアを開けると、さっさと中に入っていく。


「へぶっ!?」

「……何してんの」


 更衣室に足を踏み入れると同時にこけた希初は、ジタバタと床でもがきながら「ち、違う」と反論する。


「な、何か……何かが私を、押さえつけて……」

「あれ、早房?」


 その二人の前に姿を現したのは、つい三十分ほど前に二十三人もの男子勢を一人で退けた葵だった。


「葵!? 何してんだ、こんなとこで?」

「いや、下着泥棒が出たって聞いたから、ここでちょっと調査を……」

「け、景君。そんなことより、今は私を助けてっ!」


 うつぶせで叫ぶ希初に、葵は「ああ、ゴメンゴメン」と軽く謝罪しながら能力を解く。

 押さえつけられていた力が消え、むくり、と起き上った希初は、ちょっと涙目になりながら鼻を押さえていた。


「うぅ、鼻打ったぁ~」

「いや、本当ゴメンね。てっきり、犯人かと思って」

「何故に?」

「だって、犯人は現場に戻るって言うし……」


 何とも浅い理由で犯人扱いされた希初に、景は同情の念を禁じ得ない。


「そもそも、どうやって中に入ったんだ? 入口には、鍵がかかってただろ」

「外から。窓は開いてたからね」


半分ほど開いた窓を指さしながら、葵は事もなげに言ってのける。ちなみに、この更衣室は二階で、地上から三~四m程離れた位置にあった。


(……まあ、こいつなら不可能じゃないか)


“光輪最強”の念動力使いなら、その高さまで自分の体を浮かせ、移動させることなど朝飯前。

 息をするより簡単にやってのけても、何ら不思議はない。


「それで、君たちはどうしてここに?」

「アンタと同じだよ。と言っても、先に調査してたなら、手間が省けたかな」


 景がそう答えると、葵は意外そうな顔をした。


「へ~、君が自分から厄介事に首を突っ込むなんて、珍しいね」

「犯人扱いされてる悪友が、飯を奢ってくれるって言ったから、その分の働きはするつもりだ」

「ブレないね。君は」


 相変わらず打算的な後輩に、葵は苦笑する。


「話すのは別に構わないけど、手掛かりになりそうなのは何も無かったよ」

「そうか。まあ、期待はしてなかったけど」


 予想はしていたらしく、景はあまり落胆した様子もなく、話を続ける。


「希初。現場は当時のままか?」

「うん。元々、荒らされた様子は一切無かったから」

「ふむ」


 景は扉や窓枠などを注意深く観察しながら、更衣室を一回りする。


「……何らかの仕掛けが使われた形跡は皆無。葵の言う通り、手掛かりは無しか」

「だから、そう言ったじゃん」

「だとすると、動機やアリバイの線で攻めるべきか…………面倒だな」


 憂鬱そうに呟く景。その時、ようやく顔面強打のダメージから立ち直った希初が口を挟む。


「ねえ、何かやけに親しそうだけど、景君って逆倉先輩とどういう関係なの?」


 希初の疑問に、葵と景はほぼ同時に答えた。


「運命を共にした戦友かな」

「加害者と被害者」


 まるで違う二人の回答に、希初はますます混乱する。


「えっと、全然分かんないんだけど……」

「まあ、そんなことより、今は犯人捜しに集中しようぜ」

「そうだね」


 モヤモヤが晴れない希初を放置し、二人は話を本題に切り替えた。


「取りあえず、こういうことが出来そうな能力者をピックアップして、そこから動機やアリバイで絞ってく感じでいくか」

「時間かかりそうだね。これじゃあ、今日中に君の悪友の疑いを晴らすのは無理かな?」


 完全に面白がっている様子で訊いてくる葵に、景はいつも以上に素っ気なく返す。


「いや、別に犯人を捕まえなくても、紫苑の無実は証明できる」

「えっ?」


 景の言葉に反応したのは、葵ではなく希初だった。


「景君! 私それ、初耳なんだけど」

「当たり前だろ。今、初めて言ったんだから」


 迫り、詰問する希初に、景は軽く受け流す。


「その紫苑というのは、もしかして、四時限目の時、最後まで僕に向かってきたそばかすの子かい?」

「ああ、そうだけど。そういや、葵は何でプールの見張り番なんかやってたんだ?」

「先生に頼まれてね。何か、毎年の恒例行事みたいなものって言ってた」

(毎年、紫苑みたいなのがいるのかよ。大丈夫か、この学校)


 自身が在籍する学舎に対して、何とも言えない不安を感じる景。


「それで、景君。一体、どうやって紫苑君の無実を証明する気なの?」

「簡単なことだ。つーか、あいつの能力を考えれば、普通分かるだろ」

「分かんないよ!」

「即答か」


 景は肩をすくめる。相変わらず、妙な時にしか彼女の勘の良さは発揮されないようだ。


「お前らが屋上に来た時、“紫苑が女子更衣室の前にいた”という目撃情報があるって言ってたよな」

「うん、そうだよ」

「そして、紫苑の能力は自分や自分が触れた物を透明化する」

「うん。それで?」

「…………」


 続きを促す希初に、いい加減分かれよ、と呆れた目をする景。


「……つまり、自分自身を透明化できるアイツが犯人なら、現場近くで目撃情報が上がるのはおかしい、ってこと」

「あっ、そうか」


 納得する希初。だが、同時に新たな疑問が彼女の中に生まれる。


「でも、景君。それなら何であの時、それを言わなかったの?」

「そりゃあ、面倒くさかったから」


 オイ、と双方からツッコミが入るが、本人はどこ吹く風と澄まし顔。


(まあ、流石に少し可哀想とは思ったけど…………いい機会だし。アイツには、しばらく反省してもらうとするかね)


 これでアイツも少しは大人しくなるだろう、と景は鎖でグルグル巻きにされた悪友を思い浮かべながら、更衣室から出ようとドアに近付く。

 だが、次の瞬間。バタン、と勢いよく外からドアが開かれ、景はそれに思いっきり顔をぶつけた。


「……希初」

「あ、不破さん」


 更衣室のドアを開けたのは、教室で別れたライラだった。


「……何してるの? 景」

「お前のせいだよ」


 痛みで床にうずくまる景は、自分を見下ろしてくるライラに恨みがましい視線を向ける。


「……それはそうと、連れてきた」

「ど、どうも~」


 ライラの後ろからおずおずと現れたのは、お下げ髪の少女、藤沢桜。


「えっと、事件について訊きたいことがあるって言われて、連れて来られたんだけど……」

「ああ、わざわざ悪いな」


ぶつけた額をさすりながら立ち上がる景は、取りあえず、と更衣室を出て、五人・・はどこか落ち着いて話が出来る場所へ移動し始めた。


「…………何で、お前までついてくるんだ? 葵」

「いいじゃないか。君と僕の仲だろ」


 馴れ馴れしく肩を抱く彼女の手を振り払い、景は食堂のラウンジの一角に腰を下ろす。

 他の四人もほぼ等間隔で丸いテーブルを囲むように座った。


「さて、それじゃあ話を聞かせてくれるかな。藤沢さん」

「何で、お前が仕切る?」


 微妙に面白くなさそうな声を上げる景だったが、葵に「じゃあ、君がやるかい」と言われ、口を閉じる。

 そして、当の藤沢は何やら困り顔で視線を彷徨わせていた。


「え、えっと~」

「おっと、そう言えば自己紹介がまだだったね。顔馴染とばかり話していたから、すっかり忘れていたよ」

「あ、あの……」


 もじもじする度に、不破ほどでないが豊かな双丘が揺れる。


(そういや、こいつ下着盗まれたってことは、今……)


 景の視線が自然と彼女の胸に吸い寄せられそうになった時、両隣にいる希初とライラから物凄いプレッシャーを感じた。


(景君。さっちゃんは今、不破さんの能力で作った下着を身につけているから、変なこと考えないでね)

(…………了解)


 希初から以心伝心(テレパシー)による説明を受けた景は、自粛するように目を伏せる。

 それでも、しばらくの間、彼女たちからのプレッシャーが弱まることは無かったのだった。




◇◇◇◇◇◇




「―――なるほど。つまり、水泳の授業が終わってロッカーを開けると、下着だけが無くなっていて、他のロッカーは荒らされるどころか、探られた形跡すら無かったと」

「その通りです。ね、藤沢さん」

「う、うん」


 おずおずと肯定する藤沢に、葵が顎に手を当て、ふむふむ、と考える仕草をする。

 話をまとめると、授業が終わってから藤沢がロッカーを開けると彼女の下着だけが無くなっていた。

 更衣室には鍵がかけられていて、その鍵は授業中ずっとプールの監督をしていた先生が保管していたため、普通に侵入するのは不可能。

 合い鍵は無く、扉に細工をされた形跡もない。


「密室、か。まあ、何の意味も無いけどね」


 葵の言葉に、全員が無言で同調する。生徒全員が能力者である光輪では、密室など謎でも何でもない。


「一応聞くけど、心当たりは?」

「え、えっと……」

「あ~、無いですね」


 歯切れの悪い藤沢に代わって、希初が答える。


「ふむ、動機の線は望み薄と。じゃあ、その時間にアリバイの無い生徒を探して……」

「あ、それも終わってます。ウチのクラスの男子以外は全員アリバイがありました」


 下着が盗まれたとされる推定時刻は四時間目の授業中。

 諸事情により監督の先生がいなかった2組の男子を除けば、他の生徒は全員教室内にいた。


「ちなみに、授業に遅れてきた生徒も途中で退席した生徒もいないそうです」

「……この短時間で、よく調べられたね」

「ふっふっふ、情報庫(データバンク)の名は伊達じゃないんですよ」


 誇らしげに無い胸を張る希初。だが、結局のところ、犯人については何一つ分かっていない。


「う~ん、外が無理なら内部犯とか? 最後に更衣室の鍵をかけたのは?」


 すなわち密室になる前に盗んだのではないかと葵は考えたが、


「藤沢さんですけど」


 希初の返答により、あっさりとその推理は破綻した。


「……やっぱり、犯人は2組の男子の中に……」

「いや、それは無いね」


 消去法から、唯一アリバイが不透明なクラスメートの男子たちを疑い始めたライラだが、葵はそれをきっぱり否定する。


「……どうして?」

「僕と戦った後で、そんなことする根性ある奴がいると思うかい?」

「…………納得」


 膝を叩くライラ。そして、再び犯人探しは行き詰まる。


「あ~、ダメだ。やっぱり、僕にはこういうのは向かないね」


 お手上げとばかりに、葵は椅子の背もたれに体重をかけ、大きく仰け反った、その時。

 ガッシャァァァン!!、というガラスが盛大に割れる音と共に何かが外に飛び出していった。


「な、何!?」

「何か飛んでったぞ!」


 ラウンジに残っていた生徒たちが騒ぎ出す中、いち早く動き出したのは葵と希初だった。

 二人は割れた窓から外に出ると、飛び出した何かを追いかけていく。


「……待って」


 その後にライラが続き、他の生徒もちらほらとラウンジから様子を伺いに、外へ出る。


「行っちまったな」

「…………」


 残された景と藤沢は、向かい合った状態でお互い一言も発することなく時を過ごす。

 藤沢はどこか気まずそうに俯いているばかりで、景もクラスメートとはいえ、大して親しくもない相手に話しかけるほどのコミュ力は有していなかった。


 そうして、微妙に間が保たなくなった頃、景のポケットから着信音が響いてきた。


「はい、もしもし」

『景君。私だけど』


 携帯越しに聞こえてきたのは、馴染み深い希初の声。


「何だ、希初」

『えっと、説明するより見てもらった方が早いと思うから、今すぐ藤沢さんと一緒に中庭に来て』


 希初は早口でそう伝えると、こちらの返事も聞かずに通話を切る。


(何なんだよ、一体)


 とはいえ、彼女の一方的な振る舞いはよくあることなので、景は深く考えず、藤沢を連れて中庭に向かった。




◇◇◇◇◇◇




 教室棟と研究室棟に挟まれた中庭はそれなりの広さを持っているが、校舎裏ということもあって一年中薄暗く、滅多に人が来ない場所として有名だった。


「あ、来た来た」


 その中庭に到着した景と藤沢を出迎えたのは、希初とさらにもう二人。

 

「ナイトに祐。何で、ここに?」

「まあ、色々あってな」

「そんで、ナイトは何で地面に倒れてんの?」

「……色々、あってな」


 地面に寝っ転がって「ふ、不覚」などとのたまっているナイトを見下ろしつつ、祐は妙に歯切れの悪い返事をする。


「希初。一体、何があった?」


 そんな二人を見て、景は首をかしげ、希初の方に向き直って訊ねる。

 だが、その答えは彼女の口からではなく、遥か上空から聞こえてきた。


「それは、僕が説明しよう」


 シュタッ、と静かな音を立てて着地した葵は、腕の中に何かを抱える格好で景たちの前に姿を現す。


「葵、それは?」

「ああ、犯人だよ。最近、起きていた盗難事件、そして今回の下着泥棒の正体だね」

「は?」


 “犯人”と言われ、再度、葵の腕の中にいるものに目を向ける。


「こいつが? マジで」

「うん。まあ、正確には犯猫(・・)だけどね」


 葵の腕の中にいたのは、薄汚れた白い毛並みの猫。やたらと大人しくしているが、尻尾をブンブン振り回してるのを見ると、相当機嫌が悪そうだ。


「いや、ちょっと待て。こいつが犯人とか、色々と無理ありすぎだろ」

「確かに。普通(・・)の猫なら、不可能だね」


「普通」の部分を強調する葵に、景は少し引っかかりを覚え、そして気づく。


「まさか、その猫」

「うん。能力持ちだよ」


 マジか、と呟く景。だが、後ろでは彼以上に驚いている者がいた。


「えっ!? ど、動物が能力を持つことなんて、あり得るんですか?」

「かなり珍しいけど、前例はあるよ。あまり知られていないけどね」


 藤沢の疑問に答えを示した葵はそれを実証するかのように、抱えていた猫をいきなり高く放り投げる。 宙を舞う白猫は一回転し体勢を立て直すと、そのまま落下することなく、空中に留まった。


「念動力系か」

「そ、僕と同じだね」


 浮遊する猫はそのまま逃げようとするが、葵の自由自在フリーコントロールによって簡単に引き戻される。能力は同じでも、やはりレベルは段違いのようだ。


「フシャ―ッ!」


 再び腕の中に戻された白猫は、不機嫌そうに鳴く。


「嫌われてんな」

「まあ、結構乱暴な手を使ったからね」

「……よく生きてたな。お前」


 景が同情に満ちた眼差しを白猫に向けるも、当の本人はぷいっ、と顔をそむける。


「ハハッ、どうやら君も嫌われているみたいだね」

「ほっとけ。で、何でお前がその犯猫と一緒にいて……ナイトが倒れてんだ?」


 地べたに倒れるナイトを一瞥した景は、全ての疑問を解消するべく、葵に事件の概要を訊ねる。


「ん~、全部話すとなると、ちょっと長くなるんだけど」

「簡潔にまとめろ」

「難しいこと言うね」


 景の注文に、葵は「ん~」と唸りつつも説明を開始した。




後編は、一週間以内にお届けします。

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