風化
とある研究チームが、何億年も前の絵を見つけたというニュースが世の中を賑わせた。
その絵はある特殊な技術で復元されるとすぐさま都内の美術館に飾られ、多くの人が訪れて大盛況となった。
そこに一組の親子連れがやって来た。
「お母さん、あの絵って何が描いてあるの?」
一応他の展示物もある中で親子が足を止めたのは、やはり話題の絵の前だ。
「うーん、それはお母さんも分からないわ。何せ何億年も前の絵だから、調べてる人もなかなか分からないってテレビで見たけど…。」
「ふーん。そうなんだ。」
「何であの絵が気になったの?」
「なんかね、怖い感じがするんだ。」
「怖い感じ?」
母親は顔を上げると、何かに気がついたような表情で子供に向き直る。
「きっと絵の色が灰色だからじゃない?灰色と黒しか使われて無いから怖いって思ったんだと思うけど。」
「うーん。」
子供は何か納得のいかないようだ。
「何か意味があるきがするの。」
「意味ねぇ…。」
「何かの文字に見えない?」
「うーん。」
今度は母親が悩み始めてしまう。
「そうねぇ、いつかもしかしたらそういう見方の研究も始まるかもしれないけど、それは誰にも分からないわ。
もしこの絵に意味があって、その意味が分かるとしたら芸術家の人か学者さんだけね。
何億年も前なんて人間がこの星に来る前の事だから。」
「ふーん。」
「そんな事よりお腹が空いたでしょ?今日は何か食べて帰りましょうか!」
「うん!僕カレーがいい!」
男の子は高く上向きに尖った耳を嬉しそうに揺らしてはしゃいだ。
母親も黒目だけの目で愛おしそうな眼差しを男の子に向けた。
親子は遥か昔、"新聞"と呼ばれた展示物の前を去り、仲良く手を繋いで美術館を後にしたのだった。
読んでいただきありがとうございます。
ジャンルがファンタジーなのか悩みましたが、ダークファンタジーと言うことで。
では、またいつかどこかで。




