第九話
暦さんにあらためて告白されてから一週間。前より考えるようにしてるが、答えは出ない。だれか簡単な解決方法教えてくれ……誰も死なないやつを頼む。
「聞いてるんですか大山くん!!」
「は、はいぃ!!」
やば、今は霧島先生の授業中だった……悩みすぎて全然聞いてなかった。
「それじゃあ、読んでください」
「え、えっと……すいません。聞いて無かったです……」
「……そんなに私の授業はつまらないですか?」
「いや、そういうわけじゃ……」
「……ちょっと今日の放課後残ってくださいねー?話があります」
「……了解っす」
どうやら先生の逆鱗に触れてしまったらしい……ついてねぇ。
時間は流れて放課後だ。今俺は生徒指導室にいる。三者面談とか以外でこの教室を使う日が来るとは……俺はいっつもいい子にしてるはずなのに。ちなみに暦さんや飛鳥だが、今日は別の用事があるらしい。いつもなら絶対になにかしらアクションを起こすのだが、今回は何もしないのだろう。
ガラッ
「はいはーい。お待たせしました大山くん!!」
やたらニコニコした霧島先生が教室に入ってきた。なんで機嫌よくなってんだ?
「さてさて、とりあえず先生とお話しましょうかー」
「えっと、お話って今日の授業のことじゃないんですか?」
「まあそれもありますけど、それ以外にもいろいろとお話しましょうねー?」
「はぁ、わかりました」
「あの二人の邪魔が入らないですからね……今日こそかんきゲフンゲフン……とりあえず今日の授業のことからですねー♪」
もしかして俺は今ピンチなんだろうか……?ものすごく不穏な言葉を先生から聞いたんだが……逃げられるだろうか……?
「今日のこともそうですが、最近ボーっとしすぎですよ?いくら成績がいいからって授業はちゃんと聞かなきゃダメなんですからねー?」
「すいません。次から気をつけるようにします」
「うんうん。ものわかりのいい子先生好きです♪」
「話しは終わりですよね?それじゃあ帰りますねー」
「ちょっと待った!!!」
「……なんでしょう?」
「そー簡単に逃がさなゴッホン!!このまま進路相談でもしましょうか♪」
扉の前に立たれて部屋から出れない……チッ逃亡は失敗したか……
「……わかりました。といっても俺はまだ何になりたいか決まってないので、特に希望はないです。それじゃ!!」
ガシッ!
「まあまあ、そんなにすぐ帰らなくてもいいじゃないですか♪座ってください♪」
「………」
再度逃亡を試みるが失敗……椅子に座らされてしまう。まずいんじゃないか?このまま監禁コースとかシャレにならん……
「そんな怖い顔しないでくださいよー。何もしないですって♪」
「……わかりました。何が聞きたいんですか?」
こうなったら先生の話に付き合うしかないだろう。隙を突いて逃げ出す準備だけしとこう……
「まあ世間話でもしましょう♪大山くんは他の先生方からも評判はいいですよね♪」
「そうですか?別に普通だと思いますよ?」
「そんなことないです!とってもいい子だって噂がたつくらいですからねー」
そうだったのか……まったく心当たりがないな。ああ、授業の資料とかの手伝いをよくするからかな?なんかよく頼まれるんだよなー。たまたま俺がいることが多いらしい。
「大山くん、女性関係以外はすごくいい子ですよね♪」
「女性関係以外ってなんですか!!なんか俺が女の子たちを誑かしているふうに聞こえるじゃないですか!!」
「実際に誑かしてるじゃないですかー邪魔者が多くて大変です♪」
「いや、そんなことしてないはずなんですけど……」
「大山くんは無自覚さんですからね……いろんなとこで複数の女の子引っ掛けてきてるんですよ?」
「そんなはずは……」
「でも実際、柊さんに春日井さんが引っかかってますよ?」
「うぐっ……」
それを言われると言葉がないが……でも他の女の子たち複数になんかしたことあるか?……不良に絡まれてるのを助けたりしたやつか?でもそんなので惚れるとか少女マンガじゃあるまいしないよな。登校のときにぶつかった子か?それこそないか……ぶつかったとき大抵キレられるからな。そういや飛鳥にもぶつかったときキレられたな。トラックに轢かれそうになった子を助けたやつか?まあそれもないよな。人を助けるくらい誰だってするだろうし。他にもいろいろあるけど、全部違いそうだな。少女マンガとかならありえるだろうが……現実は厳しいしな。そういやこういうこと俺ってよくあるんだよなー不幸体質なんだろうか?
「大山くんは随分心当たりがあるみたいですね……?」
「え、いや、違いますよ。人助けは多いなってくらいで」
「……大山くんの人助けは女の子限定ですよね」
「人聞きの悪いと言わないでください。女の子以外でも困ってる人がいたら助けますよ」
……あれ?俺って女の子以外で困ってる人見たことあったか?あまりないよなぁ……世の中の女の子たちはよほど困ることが多いみたいだな!
「先生!女の子は困ることが多いみたいですね!」
「いや……普通の人たちと変わらないと思いますよ?」
「そうですかね?変だな……俺の前じゃ女の子以外がそこまで困ってることは無いんですけど」
「……まあこれは大山くんが悪いわけではないですからね」
「??」
「いや、なんでもないですよ……そういえば、大山くんってお姉さんいましたよね?女の子を助けるのが癖になってるのってお姉さんのせいですか?」
「別に女の子を助ける癖なんてないと思いますけど……姉さんが理由ではないのは確かですね。あの人は誰の力を借りなくても一人でなんでもできる人ですから」
「おおーさすが大山くんのお姉さん。大山くんにそこまで言わせるとは……只者ではないですね……」
「でもよく俺に姉がいるって知ってましたね?」
「ちょっと大山くんのことを調べれば、すぐにわかりますよ?」
「まあそれもそうか……」
「それに見過ごせない情報もありましたしね……」
「見過ごせない情報?」
「なんでもないですよー?大山くんは知らなくていいことです♪」
「はぁ、そうですか。あ、そろそろ暗くなってきたんで俺は帰りますねー」
「あ、はーい。気をつけて帰宅してください」
「はーい」
そういって俺は教室をでる。そして出てすぐに玄関に全力疾走した。
「ってあー!!しまった!!あまりにも普通に帰してしまいました!!このまま家に監禁するつもりだったのに!!大山くん!!ちょっと待ちなさーい!!」
チッ気づかれたか!まさかこんなに早く気づかれるとは思わなかった。意外と上手くいったと思ったんだが……さて、先生に追いつかれる前にさっさと家に帰るとしますか。
危険なことを回避する能力が一段と上がった凛太郎だった。