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剃刀  作者: パラ
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第五話

 暦さんと飛鳥が危険な話をしていた時から一週間。珍しいことに、この一週間はとても穏やかにすごせたと思う。暦さんと飛鳥はあの話をしてから少し仲がよくなったのか、些細なことじゃ喧嘩をしなくなった。そのおかげで俺への被害も少なくなったわけで、このまま穏やかに高校生活がすごせればいいなと俺は思っている。……みんなに言っておく。あまり淡い幻想はたとえ心の中ででも考えないほうがいい……考えてしまったら最後、それは絶対に壊されてしまうと俺は身をもって今日知ることになった……


 いつものように昼休みや放課後ではなく、それは授業中に起こった。毎度のこと騒がしい原因を作るのは暦さんだった……


 「凛くん、教科書を忘れたから見せてほしいわ」

 「……いや、さっき教科書で予習してたよね?それ使いなって」

 「あれは諸事情があって使えなくなったわ」

 「……なんでそんな都合よく教科書なくなるんだよ。嘘つかないで自分の見てください」

 「本当に使えなくなったのよ?さっき飛鳥さんに破かれてしまったの」

 「なんでいきなり飛鳥は教科書を破くようなことを……?」

 「この間凛くんが教科書を忘れたときに見せ合いっこした教科書だって自慢していたら、いきなり奇声をあげて破かれたわ」

 「……」

 「まったく飛鳥さんったら、何を考えているのかしら?プレミアがついてもおかしくない代物だったのに……」

 「理由はなんとなくわかった……それじゃ仕方ないから一緒に見よっか」

 暦さんと見せ合いっこをしていると大抵なにか起こるのだが……大丈夫だろうか?いや、いつも偶然何かが起こってるだけで暦さんのせいではないだろう!人を疑うのはよくないよな!ちなみにこの間の席替えで暦さんとは隣同士になった。前は新学期になり立てだったので名前順だ。今俺がいる席は窓側の一番後ろでその右隣に暦さんがいる。この席になってから寝るのがとても楽になって大変助かっている。まあ大抵暦さんがちょっかい出してきて寝れない状況になるのだが……ちなみに飛鳥は隣のクラスだ。暦さんと飛鳥が同じクラスだったら、俺の精神は三日ともたないだろう。少なくなってきたとはいえ、あの二人は未だに殺し合いの一歩手前の喧嘩をするのだ……それを止めなければいけない俺としては、二人が接触するのを極力避けたいのだ。まあ、それでも喧嘩になるときはなるのであまり気にしても仕方ないのだが……

 「そこ!私語がうるさいですよ」

 おっと、暦さんと雑談をしていたら先生に怒られてしまった。普通に話してたが、今は授業中なのだ。

 「すみません、先生」

 「む……大山くんですか……なら許しましょう。大山くんはいい子ですので」

 「はあ……ありがとうございます」

 「でもちゃんと授業は聞いてくださいよー?いくら成績がいいといっても他の生徒の邪魔しちゃダメですからねー?」

 「わかりました。気をつけます」

 「はい♪わかってくれればいいのです♪」

 この一風変わった先生は、霧島きりしま 風花ふうか一応現代語を担当している先生だ。まったく先生には見えないのだが……去年新任の先生としてやってきたのだが、見た目が俺たちと同じくらい若いのだ。いやもとの年齢もそんなに俺たちと変わらないのだが、なんていうか……子供っぽい先生なのだ。これを言うと先生は怒るが、生徒たちには非常に人気がある。授業のほうもわかりやすく、見た目も可愛らしいということもあって男子生徒からの人気はすさまじいものがある。たしかファンクラブもあったような……ちなみに霧島先生は俺たちの担任だったりもする。

 「……凛くん、そんなに先生と話せたことが嬉しかったのかしら?顔がものすごくにやけているけど……」

 「え、そう?そんなことないけど?」

 「……ソウ、そんなニ凛くんハ私と心中しタイのね……」

 「今の話の流れから何でそうなるの!?ちょっと剃刀しまって!!怖いから!!ホント怖いから!!」

 「ダイジョウブ……イタイ、ノハ、イッシュン、ダカラ」

 やばいやばいやばいぃぃぃ!!!暦さんの目がだんだん濁ってきてるよ!!これは本気でやばい!!!神様、仏様、精霊様俺を助けてください!!!つーか助けてくれるんなら悪魔でもいいから助けてくれえぇえぇぇ!!!!

 「こらこら柊さん?大山くんが怖がってるじゃないですか!そんなもの大山くんにむけないでください!!」

 「……」

 「霧島先生!!」

 神はいた!!!今は霧島先生が女神に見える!!!だが安心するのは早いぞ俺……暦さんは神をも殺せる器だ……あの目をみたら神様だって全速力で逃げ出すだろう。そういえば……あの目で見られて平気なのって今まで飛鳥だけだったんだよな……霧島先生はなんで平気なんだろ?助けられてなんだけど、今の暦さんには関わらないのが得策だと思うんだけど……

 「あー!大山くん!!いつも言ってるじゃないですか!!風花先生ってよんでくださいって!!ほら、ちゃんと言い直してくださいよー!!」

 頬を膨らまして講義してくる先生は可愛いのだが、今はそれどころじゃないって!!!暦さんがやばいから!!!ホント目をそらしたら瞬殺されそうな勢いだから!!!

 「ちょ!先生今それどころじゃないですから!!」

 「あー!先生のいうことはちゃんと聞かなきゃダメなんですよ!?ほら、風花先生って読んでください!!」

 ぎゃー!!そんなこと言ってる場合じゃないんだって!!!ほら今にも暦さんが剃刀振りかぶって……って!!!ちょ!?まってまってホント死んじゃいますからー!!!

 「……イッショニシニマショ……?」

 暦さんが剃刀を振り下ろす。あ、これは死んだ……とっさに目を閉じ、最後のときを待つ。

 ……ってあれ?いつまでたっても何もおきないんですが……どうなってんだ?恐る恐る目を開けてみる。そこには暦さんの剃刀を俺の教科書で受け止めている霧島先生の姿があった……って俺の教科書半分くらい切られちゃってるじゃん……

 「人が話してる最中に割り込んでくるのはマナー違反ですよー?」

 「霧島先生……私は凛くんに用事があるんで……ちょっとどいてくれませんか?」

 「ダメですー先生も大山くんと話してるのでそれは譲れませんねーましてや未来の旦那さんがピンチとあっちゃ助けないわけにはいきませんねー」

 「……なるほど、あなたもですか先生」

 「むっふっふー大山くんは私のものですー」

 「……それは違います。凛くんは私のものですから」

 いや、どっちのものでもないから!そんなことを言い出すとこっちに矛先が向きそうだから黙っておくが……へたれとか言うな!!俺だって命は惜しいんだぞ!!!

 「なら、どっちのものか今決めますかー?」

 「そうですね。そうしましょうか」

 どうやらこの勝負で俺がどちらのものかを決めるらしい……勝手に決めないでほしいのだが……そんな俺の考えはまったく関係なしに周りの緊張感は高まっていく……そして二人が踏み出そうとしたとき!!キーンコーンカーンコーン……授業が終わった。

 「あらら、授業終わっちゃいましたねーまあ仕方ないですねーこの勝負はおあづけってことにしましょうかー」

 「……わかりました」

 「聞き分けのいい子は先生好きですよー?それじゃーみなさん授業を終わりまーす」

 そんなことをいって先生は教室から出て行ってしまった。暦さんのほうも気が抜けたらしく、若干疲れた顔をしている。

 「あ~なんというか……お疲れ様?」

 「なんだかすごく疲れたわ……霧島先生は油断ならないわね……」

 「そ、そっか……お疲れ様……」

 ……とりあえず、なにもおこらなくてよかった。俺は一人で安心しているのだった。周りの生徒たちもどこかほっとしている感じだ。まあ暦さんがああなったらとりあえず黙っとくのが正解だよな……今回は霧島先生に感謝しなきゃな。あとでお礼を言っておくとするかー


 こうして今回はギリギリのなんとかなったが、この先も凛太郎は無事に高校生活をすごせるのだろうか?

 ……たぶん無理だろう


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