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剃刀  作者: パラ
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第二話

 「凛くん、私たち付き合ってるのよね?いつになったら私と死んでくれるの?」

 放課後の教室でいきなりこんなことを言われた。

あの事件から一週間がたったのだが…暦さんはまったく変わっておりません。むしろ前より遠慮が無くなって悪化したといえるんではないかと思っている。付き合うということをあれほど恥ずかしがっていたくせに…

一週間たって俺の周りは騒がしくなった。柊 暦と大村 凛太郎は付き合っている。そんな噂が流れ始めたからだ。

 「暦さん、前も言ったとおり心中とかしません。つかまだ付き合ってもいません。」

 「そんな照れなくてもいいのよ?私たちは恋仲って周りでは有名になったのだし、そのまま付き合えばいいの、そして死にましょう。」

 「周りがなんと言おうとまだ付き合ってはないし、付き合ったとしても死なないから」

 なぜこんなことになったかというと……実は全部暦さんのせいである。暦さんが俺に付きまとうようになったのだ。それはもう片時も離れようとはしない。べったりである。べたべたである。最近では俺の分の弁当も作ってくるようになった。登下校も一緒。周りから見れば恋人同士にしか見えないだろう。まあ悪いことはないのだが……いちいち心中を迫ってくるのは勘弁してほしい。

 「あのさ暦さん。いちいち死のうとするのはやめませんか?」

 「イヤよ。愛の最終形態は死ぬことなの。つまり一緒に死ぬことが最上の幸せ。」

 「いや…一緒に生きているのが幸せなんだと思うけど…イチャイチャしたりとか興味ないわけ?」

 「過程は必要ない。私は死ねればいいの」

 ……とても頑固である。一緒にいる間は少しでも考えを改めてもらおうと努力しているのだが……まったく成果は上がっていない。

暦さんは長い黒髪をストレートにしていて顔も人形のように整っている。そしてスタイルもいい。普通にしてればモテるのだが、頭の中がデンパなので言い寄る人は少ない。それでもアタックする猛者はいるのだが…すべて撃墜されている。……なんで俺のことが好きなのかわかんないなぁ…ちょっと聞いてみるか。

 「暦さんってなんで俺のこと好きなの?」

 「なんでって…覚えてないのかしら?」

 「え、なんかしたっけ?」

 「私はあの時から凛くんのことが好きで、ずっと凛くんのことばかり考えていたのに、それなのにそれなのにそれなのにソレナノニソレナノニ!!!凛くんはあの時のことを覚えてないって言うの!?」

 やばい…地雷踏んだらしい……でもそんなに重要なことあったか…?やばいぞ…心当たりがまったく無い……

「……………………」

「……ホントウニオボエテナイミタイネ………?」

っ!!やばい!!!考えるのに時間をかけすぎていたみたいだ!!!だんだん暦さんの目の焦点が合わなくなってきている!まずいぞまずいぞ早く答えないと……わかんねえぇ!!!何があったっていうんだよ!?普通に自己紹介から始まったはずなんですけど!?

「モウイイワ……ワタ、シ、トイッショ、ニシニマショ……?」

 なんか剃刀出し始めちゃったんですけど!?どこに隠し持ってたのそれ!?考えるのは後にしてとりあえず暦さんを落ち着けなきゃ!!

 「待った待った!ごめんなさい!!!ホントごめんなさいっ!!!!!俺が全面的に全て悪かったです!!!!だから剃刀しまってください!!!!」

 俺は必死に土下座して謝る。それはもう必死に。ここで止めないとほんとに殺されかねない。

 「……反省してるの…?」

 「ホント反省してます!!!すみませんでした!!!」

 床に頭がめり込むほどに土下座をする。かっこ悪いとか言うな!こっちは必死なんだよ!

 「まあ、いいわ。許してあげる。」

 「ありがとうございます!!!」

 何とか許しをもらえたみたいだ……危ういところだった……

 「今考えると、覚えてないのも無理ないわね。凛くん特になにもしてないわけだし」

 「え…?俺なにもしてないの?」

 「そうよ、なにもしてないわ。ただ廊下でぶつかっただけ。」

 「そんなこと覚えてろってほうが厳しくないっすか暦さん!?」

 「仕方ないじゃない…一目惚れだったんだから……」

 一目惚れ?なんでだろう…俺そんなにかっこいいわけじゃないのに…

 「まさかここまで容姿が整っている人間がいるなんて思わなかったもの。凛くんを初めて見た時は本当に人間か疑ったわ」

 「??いや俺はそんなに格好良くないけど?」

 「…凛くんは鏡を見たことないのかしら?」

 「いや鏡くらいみるけど?」

 「まさか…気づいてないのかしら……?」

 「なにが?」

 「いや…なんでもないわ…」

 ?なんかよくわからないが、とりあえず暦さんは俺に一目惚れしたらしい。どうしてそんなことになったんだろ?切欠とか無かったのかな?

 「一目惚れって言うけどなんか切欠とかないの?」

 「そうね…しいて言うなら廊下でぶつかったときかしら」

 「廊下でぶつかったとき?」

 「そうよ…倒れた私を優しく手を握って起こしてくれたの…///」

 「……それだけ?」

 「それだけよ」

 いやいや、それだけで惚れるってのはなんかおかしくないか?いやおかしいだろ絶対に!!

 「またまた~そんなんで一目惚れなんてしないでしょ~」

 「……凛くんは自分の顔の威力を知ったほうがいいわ……」

 「顔?また暦さんはよくわからないことを言うな~」

 「…ここまでくると鈍いとかいうレベルじゃないわね…」

 なんだか暦さんが呆れている気がするが、気のせいだろうか?まあいいか、そろそろ暗くなってきたし、帰るとするか。

 「んじゃそろそろ帰ろっか?」

 「そうね、そうしましょうか」

 二人で一緒に教室を出る。くだらない話をしていたら結構時間が過ぎていたみたいで、だいぶ暗くなっいた。

 「暗くなってるね…家まで送るよ」

 「そう?ありがとう」

 こうして二人で仲良く下校するのだった。


 まだまだ暦さんのことはわからないけれど、すこしづつわかっていけたらと思う。そして早いとこ危険思想をなくしてほしい。切実にそう思うのだった。


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