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剃刀  作者: パラ
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第十三話

 姉さんからバイトをする権利をもぎ取ってから一週間。なかなか連絡がこないから騙されたかもと思ったが、今日ついに連絡がきた。これでバイトすることができる!!

 「凛、私は今でも反対だからな」

 「はいはい、なに言ったって変わらないから」

 「ぐぬぬ……なぜこんな頑固に育ってしまったのだ……」

 今は姉さんと一緒にこれからバイト先となる喫茶店に向かっているところだ。姉さんがまだぶちぶちなんか言ってるが、まあもう何を言っても変わらないので言わせておくとしよう。ちなみにバイトをすることを暦さんや飛鳥には言っていない。バイト先知らせたらずっと入り浸っていそうだからな……まあ二人のストーキング能力ですぐばれるかもしれないが、自分から教えるよりはましなんじゃないかと思う。

 「ここがその喫茶店だ」

 おお、色々考えているうちについたようだ。俺が思っていた以上に綺麗な外装をしている喫茶店。これこそ喫茶店!!とでも言うような見た目をしている。

 「ほほー随分立派な喫茶店なんだね」

 「もともと友人の祖父がやっていた店らしいが、最近亡くなったらしくてな。その店を私の友人が引き継いだらしい」

 「そうなんだ~」

 カランカラン

 喫茶店に入ったらなるであろう音が店内に響く。なんかこれぞ喫茶店!!みたいなことを全てやっているような店だな……いや悪いわけじゃないんだけどさ。

 「いらっしゃいませ~ってなんだ蘭ちゃんか、お客さんだと思ったのに」

 「なんだってなんだ。お前の手が足りないって言うからわざわざ、わ・ざ・わ・ざ!!人様の弟を連れてきてやったんだぞ!!ちくしょう!!なんでこんな店で凛を働かせなければならないんだ!!」

 「ああー!バイト君連れてきてくれたんだ!!助かるよ~最近本当に忙しくて大変だったんだよね」

 姉さんと仲よさそうに話しているのは女性。え、喫茶店のマスターっていうから渋くてダンディな人が出てくると思ってたんだけど、まさか綺麗系な女性だったとは……

 「君が蘭ちゃんの弟くんかな?おお!!噂通りの顔立ちですな!!蘭ちゃんよくやった!!」

 「あ、大山 凛太郎です。これからお世話になります」

 「私はこの喫茶店のマスターをしている上条かみじょう 由香里ゆかりです。これからよろしくね~店員は私たち二人しかいないから忙しくなると思うけどね♪」

 「え、店員二人しかいないんですか?」

 「そうだよ~私と君だけ♪」

 店員二人で喫茶店ってできるものなのか……?なんか不安になってきたんだが……

 「まあ忙しいって言っても、人がもの凄くいっぱい来るってわけじゃないから二人で充分だよ~実際一人でやってたからね♪」

 「そうなんですか」

 「大丈夫だ凛。客なんて私ぐらいしかこないからな」

 「そんなことないってば!!普通にちらほらくるんだからね!!」

 ……とりあえず客があまり来ない店らしい。まあ普通にバイトできるならなんでもいいかな。

 「よっしとりあえず、一通りのこと教えちゃって店を開こうかな。蘭ちゃんは邪魔だからもう帰っていいよ~」

 「邪魔だと!?今日はずっとここに居座るつもりできているのに!!」

 「蘭ちゃんいたら騒がしくて教えられないでしょ。ほらほら帰った帰った」

 「ぐうぅぅ……凛!!バイトが終わりの時間になったら迎えにくるからな!!由香里!!凛に手をだすんじゃないぞ!!!」

 そう言って店を出て行く姉さん。おお、姉さんが誰かに言い負かされたの始めてみたかも……というか姉さんの友人を今日始めてみたな。ちゃんと友達いたんだな姉さん……

 「ふっふっふ……やっと二人っきりになれたね……」

 「へ?えっと……上条さん?」

 なんか上条さんの後ろにやばいオーラが出ているような気がするんだが……気のせいだよね?なんか暦さんやら飛鳥がだすようなオーラに似ているような……気のせいだよね!?

 「は!?いかんいかん、いきなり暴走して台無しにしちゃ意味無いんだった……とりあえず一通り教えるからこっちきてね~それと私のことは由香里って呼ぶように!!私も君のことは凛ちゃんって呼ぶから♪」

 「あ、はい。わかりました」

 黒いオーラが消えてる……?あれか、やっぱ気のせいだったのか!!そりゃそうだよなー今日はじめて会ったばっかの人が、暦さんたちみたくなることなんて無いよな!!最近人間不信になってきてるかもな……ちょっと気をつけないといけないかも。

 「とりあえず凛ちゃんにはお客さんの相手をしてもらおうかな~注文とか聞いてレジとかやってもらおうか!!」

 「わかりました。けど俺レジとかやったことないんですけど……」

 「大丈夫だって!!お店開くまでに後一時間くらいあるから、それまでに覚えられるよ♪」

 「はぁ……わかりました」

 そんなこんなで由香里さんにレジやらなにやらを色々と教わっていく。意外と簡単なもので一時間でほとんど覚えることができた。もっと小難しいものかと思ってたがやってみると簡単なんだね!!ただ教える時にやたら由香里さんが近いのはなぜなんだろうか?レジ教えるのにそんな引っ付かなくてもいいと思うんだけど……

 「本当に一時間で全部覚えちゃうんだね……蘭ちゃんの弟だからもしかしたらいけるかな~とか軽く考えてたんだけど……」

 「え?普通に一時間で覚えられるもんじゃないんですか?」

 「いや、レジの機能全部を一時間とかは普通に無理なんじゃないかな?それ以外にも色々教えたし、これ全部一時間で覚えられるのは普通じゃないんじゃ……あれ、私がダメな子なだけ!?みんな普通に全部覚えられるの!?私なんてまだレジちゃんとできないのに……」

 「……今までレジできなくてどうやってやってきたんですか?」

 「全部できないわけじゃないよ!?ちょっと小難しいところができないだけで普通にできるよ!?できないところはお客さんに手伝ってもらってただけだよ!?」

 「いやお客さんに手伝わせるのはダメでしょう……」

 「……ま、まあ今日から凛ちゃんいるから大丈夫だよ!!とりあえず今からお店開くから頑張ってね!!」

 ……この人もしかしたらめっちゃダメな人なのかもしれない。綺麗系な見た目に騙されて、しっかりとした人ってイメージだったけど……違うのかもしれない。そういえばさっきもレジ教えてるとき最初のほうは元気よく教えてたけど、俺が理解し始めて色々やりだしたら引っ付いて見てるだけだったもんな……こ、このバイト先俺が頑張らなければダメな気がする!!

 カランカラン

 客がきてしまった!!とりあえず気を引き締めていかなければ!!

 「いらっしゃいませ!!」


 

 ……とりあえずバイト初日なのにものすごく疲れた。理由は簡単だ。由香里さんがめちゃくちゃしやがる……料理の腕はいいらしく厨房にこもっていれば何も問題が無いのだが、ホールに出てくるととりあえず問題を起こしていく……運んでた料理をひっくり返して客にかけたり、レジ打ち間違えてなんか奇妙な音を響かせたりなど他にも沢山の問題を運んできてくれました!!ありがとうございます!!途中からずっと厨房に篭っててもらったから問題は起きなくなってましになったが、ホールに出たいのかチラチラとホールを除いてきて鬱陶しかったです。

 「ごめんね~いつもはこんなに人がきたりしないんだけど……」

 「いや人がどうこう以前に由香里さんがもってくる問題が大変でしたよ」

 「あ、あはは~いつもはこんなに失敗しないんだけどね~」

 今は店も落ち着き客もいなくなってこれから閉めの作業に入るところだ。今日だけで色々問題が起こったが不思議とお客さんに怒られるということが無かった。というか今日来ていた人たちはそれが普通とでも思っているのか、由香里さんが起こすトラブルに慣れきっているみたいだった。

 「……今日のお客さん、ほとんど常連の人たちだったから怒られることもなかったわ♪」

 「由香里さん……やっぱり毎回問題起こしてるんじゃないか……」

 「ハッ!!違うの!!いつも偶々起こるだけでわざとやってるわけじゃないの!!」

 「いや、それはわかってるけど……というかわざとじゃないから余計にたちが悪いんだけど……」

 「はぅぅぅ……ごめんなさい……」

 「まあ、これからは俺もいるんで大丈夫ですよ!!由香里さん料理は美味いですしなんの問題もないですよ!!」

 「そうだよね!!全然大丈夫だよね!!」

 ちょっと落ち込んでるみたいだったが、元気になったみたいだ。綺麗な人が落ち込んでいるのは精神衛生上、非常によろしくないことなので慰めておくにかぎる!!うむ、上手くいった!!

 「そうだ、凛ちゃん。一つお願いがあるのだけど!!」

 「おお、なんですか?」

 元気になったついでになにかお願いがあるみたいだ。うむうむ、姉さんや暦さんたちと違って無理なこと言ってくることもないだろう。何でも叶えてあげようじゃないか!!

 「ここにかんき……ゲフンゲフン!!住み込みで働いてもらえないかしら?」

 「へ……?住み込みでここにですか?」

 「そう!!ここの喫茶店の二階は住居スペースになっててね~私はそこで暮らしてるの♪だから一緒に住んで働いてくれないかしら?学校なんて余計な雌豚どもを引きつけるだけだし、家に帰っても蘭ちゃんにいつ襲われるかわからないし、ここが一番安全だと私は思うのよね!!それに一緒に暮らせればいつも一緒に凛ちゃんといられるし、うふふ、あんなことやこんなことが色々できるわ。これは素晴らしい考えね。他の雌豚どもを出し抜いて凛ちゃんと私の二人だけの世界にすることができる!!天才だわ!!私天才!!ああ、でもお店は続けたいからちゃんと働かなければいけないわね……でもでもそうすると凛ちゃんを狙った雌豚どもが寄ってきて大変よね……今日はじめて入ったのに、いつにも増して女性の客が多かったのは凛ちゃん目当ての客に決まってるし……あの雌豚ども私の凛ちゃんをいやらしい目で見やがって……!!いつ飛び出してその目を繰り抜いてやろうかと思ったけど、凛ちゃんがいる手前そんなことできないしで……ああ、もう!!今日は色々とイライラすることが沢山あったわ。まあそういうものも含めて凛ちゃんと一緒にくらせればなんの問題もなくなっていくわけで…………………」

 えーっと……だれかこの状態を詳しく説明してくれ。俺が住み込みでこの喫茶店で働くという話になってから由香里さんがどんどんトリップし始めてるんだが……ドウシテコウナッタ!!

 「あ、あの由香里さん落ち着いてくれませんか?」

 「私としては凛ちゃんが一緒にいてくれればそれだけで天国にいるのと同じような気分なのだけど、他の雌豚に凛ちゃんを見られるかと思うと胸が張り裂けるというか地獄に落としてやろうかというかそんなこんなで色々と悩ましいのだけれど……ってあら?凛ちゃんなにか言ったかしら?」

 ……ようやくトリップが収まってくれたようだ。とりあえず色々と聞きたいことがあるのだが……

 「あの、色々と聞きたいんですがいいですか?」

 「いいよいいよ!!凛ちゃんのためなら何でも答えちゃうよ!!それこそスリーサイズやらなにやら全部!!」

 「いや、そういうのではなく……俺たち今日始めて会いましたよね……?」

 「?ちゃんと会話するのは今日が始めてだね!!」

 「会話するのは……?どっかで会ったことありますか?」

 「会ったことはないけど、いっつも見てたよ!!蘭ちゃんがいつも自慢してくる弟ってどんなんだろ~って興味本位だったけどいざ見てみるとかっこよすぎてもう誰にも渡したくないレベルだね!!それこそ色々手回ししていつか監禁でもなんでもしようと思ってたんだけどまさかバイトに来てくれるなんて思ってもみなかったよ!!これは神様が私たちのことを祝福してるに違いないと思ったね!!蘭ちゃんには悪いけどここは強攻策をとっってでも凛ちゃんを私のものにするしか……今の聞いてた?」

 「バッチリ聞いてました」

 「あ、あはは~今のなしね!!なし!!」

 拝啓皆々様、どうやら由香里さんもストーキングをしていた人たちの一人だったようです……これはあれなのか神様は俺にどうあってもこういうタイプの女の人を仕向け様としてるのか!!!ちくしょう!!ちょっと天然入ってるけどまともな人だと思ってたのに!!

 「え、えっとね!!まあ、考えておいてね!!住み込みで働くこと!!今日はもう帰っていいから!!」

 「は、はぁ……それじゃお先、失礼します……」

 「うん!!お疲れ様!!ちゃんとまた来てね!!絶対来てね!!」

 とりあえず今日は何事も無く帰れるようだ……ふぅ危なかった……暴走してそのまま監禁コースとも思ったが意外と冷静だったようだ。しかしこうもまともな女性がいないと考えると、だんだん落ち込んでくる……あれか……神は俺のことがそんなに憎いのか……

 「お、凛!今から迎えに行こうとしてたところだったのだが……」

 「あ、姉さん……」

 「な、なんだ?元気が無いな?まさか由香里になにかされたのか!!」

 「いや、なにもされてないよ。未遂ですんだよ……」

 「そ、そうか……なんか本気で元気が無いな?」

 「姉さん……俺一つ思ったことがあるんだ」

 「なんだ?」

 「俺の周り……ろくな女性がいねぇ……」

 「……」

 「普通の女性ってあれだよね……きっと都市伝説なんだよね」

 「あーえーっと……その……なんかその……お疲れ様……」

 「あはは……なんか今日は姉さんがすごく優しいやぁ……」

 「凛!!大丈夫か!!なんかもう人生あきらめた人みたいな目をしてるんだが!!なんかその……ごめん!!謝るから!!なんか私たちがなんか色々とお前の負担になるようなことしてたのはわかったから!!だから帰ってこい!!なんかそのまま旅立ちそうな目してるからぁ!!」

 「アハハ……ウフフ……」

 「凛――!!!」


 なんか色々と疲れることがありすぎて少しおかしくなってしまった凛太郎。もしかしたら凛太郎の精神は意外と限界かもしれないのだった。

 


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