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剃刀  作者: パラ
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第十二話

  女の子の知りたくも無い一面を知ってしまってから一週間。最近一人で歩くことが怖くて仕方が無い……

 どこを歩いていても誰かに見られている気がしてならない。自意識過剰なのかもしれないが、あの話を聞いてから落ち着かなくて仕方ないのだ!!察してくれ!!!

 幸い今日は休日で、家にこもっていれば安全らしいから今日は引きこもります!!

 「凛、起きてるか?」

 ……家にいると姉さんがいるのだった。最近は大学の研究も忙しくなくなったらしく、家でなにかをしているのをよく見かける。なにをしてるのかはわからないのだけれど……

 「あー起きてるよ。何か用?」

 「なんだ起きていたのか……朝ちゅーができない……」

 「しなくていいわ!!いい加減、弟離れしろや!!」

 「私が凛から離れるわけがないだろう!!愛しているのに!!!」

 「他の人に愛を向けてくれ!!だいたい弟に向ける愛は親愛だろ!?姉さんの愛は行き過ぎてんだよ!!」

 「私は一人の女として、凛のことを愛している!!」

 「なお悪いわ!!頼むからまともになってくれ!!」

 「私は世間では立派な人間ということになっている。この間提出した論文もなかなか評判がいいしな。だから大丈夫だ!!」

 「なにが大丈夫か説明してみろや!!弟の前でも立派な人間でいてくれ!!」

 まったく……姉さんのブラコン具合はどうしようもねぇな。いい加減弟離れさせるべく前々からあった計画を実行するしかないか……

 「姉さんのブラコン具合は酷すぎます。いい加減弟離れさせるべく、ある計画を実行しようと思います」

 「なんだいきなり?まさか……またおねぇちゃんのこと嫌いになるとでも言うつもりか!?わ、私はそんなことでもう屈したりしないからな!!」

 「ん?いや、そんなこと言うつもりはなかったけど……それで姉さんが落ち着くならそれでもいいかもな」

 「わわわ、私はききききき嫌われたって凛のことを愛し続けるからな!!絶対だ!!」

 「……いや、そんなガタガタ震えながら言われても全然説得力ないから」

 「ふ、震えてなんかいない!!凛が私のこと嫌いになったって!!私の、こと嫌い……きらい……キライ……」

 そう言いつつ隅っこのほうで体育座りに移行していく我が姉。何でこの人は話を始める前から自滅してるんだ?

 「あー、大丈夫だから。今から言うのはそういうのじゃないから、とりあえず隅っこから出てきてくんない?」

 「そうか!!凛がおねぇちゃんのこと嫌いになるはず無いよな!!凛はおねぇちゃんのこと愛してるもんな!!」

 「いきなり元気になるんじゃない!!話が進まないだろうが!!」

 「そうだったな!!何でも言ってくれ!!何でも私が叶えてやろう!!」

 「いや、姉さんに叶えてもらう必要はまったくないんだけどね……まあ、いいや。俺バイト始めようと思うんだ」

 「バイト?」

 「そう、アルバイト」

 前々から考えていたことだが、自立の第一歩として俺はバイトを始めようと思うのだ。なんだかんだ姉さんに甘えることが多かったし、そういうものを少しずつなくしていって俺が自立すれば姉さんも弟離れできるのでは?と思ったのだ。

 「それはダメだ」

 「え、なんで?」

 まさかこんな即答で断れるとは思わなかったんだけど……なんか理由でもあんのかな?バイトなんて今時だれでもやってることだし、許してくれると思ってたんだけど……

 「バイトなんか始めたら、凛が私といる時間が少なくなるじゃないか!!」

 「そんなことかよ!!ちょっと深刻な話かと思って身構えちゃったじゃないか!!」

 「私にとっては最重要項目だ!!ただでさえ行かなくてもいい学校などに行ってるせいで少なくなってるというのに……ダメだダメだ!!バイトなんてダメだ!!金なら私があげるからバイトなんかしなくていい!!」

 「姉さんのお金なんてもらえるか!!大体姉さんもバイトとかしてないんだから、親父たちの仕送り以外に出せる金なんて無いだろ!!」

 「私はお金なら腐るほど持っているぞ?」

 「え?」

 「え?」

 ちょっと待とうか。なんで姉さんがお金を腐るほどもってんだ?仕送りの管理とかも俺がしてるのに、いつの間にかバイトでもしてたのか?

 「姉さん、バイトでもしてたの?」

 「いや、バイトなんかしたことないけど」

 「え?」

 「え?」

 じゃあなんで腐るほどって言えるくらいお金をもっているんだ?ま、まさかあれか!!如何わしい事してシャッチョサーンあたりからむしりとったお金か!!

 「姉さんがそんなことする人だと思わなかったよ!!」

 「ええ!?なんか激しく誤解してる気がするんだが!?」

 「じゃあなんでそんな腐るほどとか言えちゃうくらい金を持ってるんだよ!!シャッチョサーンあたりと如何わしい事でもしてむしりとったに違いない!!」

 「私が凛以外とそんなことするか!!」

 「じゃあなんでそんなにお金もってんだよ!!つーか俺だったらいいみたいな言い方すんなや!!」

 「私は凛とだったらなんでもできる!!お金は普通に株で儲けたやつだ!!」

 「いい加減弟離れしろって姉さん!!って株?」

 「そう株だ。ちなみに弟離れする気はないぞ」

 株でそんなに儲けてるって……いや姉さんだったらできるのかも知れないけどさ。つーか元手はどうしたんだ?

 「元手はどっからだしたのさ?」

 「半年くらい前に友達に誘われてパチスロにいったのだが、面白いぐらいに玉が出てな。十万くらいもらえたから、それを元手にした」

 「……今はどんくらいになってるのさ?」

 「えーっと……どれくらいだったかな……一ヶ月前くらいに見たときは十億ちょっとだったかな?」

 「は!?十億!!??」

 「確かそのくらいのはずだ。一ヶ月でどのくらい増えたかわからないが、今度見てくるとしよう」

 「どうやったら半年で十万が十億になんだよ!!??」

 「増えてるんだからいいじゃないか」

 「増え方が異常だろ!?」

 「運が良かったんだな!!」

 「え?運とかそういう話なの!?違うよね!?絶対そんなんじゃ片付けられないよね!?」

 「まあ、いいじゃないか」

 相変わらずの異常なスペックだな姉さんは……こんなんじゃ真面目に働いて稼ごうとしてる俺が馬鹿みたいじゃないか……って違う!!別にお金がほしくてそういう話をしてるんじゃなかった!!危うく姉さんのペースに流されるとこだったぜ……

 「まあ、お金がいっぱいあるのはわかったよ。だけど俺はバイトするからな!これは決定事項だから!」

 「なんでだ!?お金はおねぇちゃんがあげるぞ!!いっぱいあるけどたいして使わないから好きなだけ持ってけばいいじゃないか!!」

 「お金がほしくてバイトすんじゃないの!!自立するために色々と勉強しときたいんだよ」

 「凛はずっと私と一緒に暮らすんだからそんなもの必要ない!!」

 「これは決定事項です!!今更なに言ったって変わりません!!」

 「だいたい凛の顔で接客業のバイトでもしてみろ!!そこら中の女がめちゃくちゃ寄って来るじゃないか!!」

 「別に俺は普通の顔なんだからそんなことあるわけないでしょ?」

 「ちゃんと鏡みろ!!」

 「いつ見たって変わらない顔があるだけだっての!!」

 「くぅぅ、なぜ自分の顔を認めないのだ……どんな女がみたって一目で惚れるような顔をしているというのに……」

 なんかまだぶつぶつ言ってるけど、一応は確認したし後は無理やりにでもバイト先を決めちゃえば姉さんも文句を言ってこなくなるだろう。

 「じゃあそういうことだから、俺はバイトを始めるからね」

 「待て!!おねぇちゃんは許可してないぞ!!」

 「姉さんが許可しなくたってバイトくらいできるから!そんなに認めないなら無理やりにでも決めてくるから」

 「ま、待ちなさい!!その顔でバイトしようとしたらどんな悪い女に付きまとわれるか……わ、わかった!バイトは認める!!ただし一つ条件がある!!」

 「おお、やっと認めてくれたか姉さん。それで条件ってなにさ?」

 姉さんが出すような条件だからまともな物じゃないんだろうけど……まあこれくらいは聞いておかないと後でどんな暴走をするかわかったものじゃないからな。

 「おねぇちゃんの知り合いに喫茶店のマスターをしている友人がいるから、そこでバイトしなさい。そこなら他のバイト先よりまだ安心できるから……」

 「なんでそんな知り合いがいるのかわかんないけど……そんないきなりバイトさせてくれって言っても無理なんじゃない?」

 「一昨日くらいに会ったとき、人が足りなくて困ってるって言ってたから大丈夫だ。誰かバイトしたそうな人がいたら進めといてくれとも言われたしな」

 まあ、それくらいの条件なら飲んでもいいかな……なんだかんだ心配してくれてるみたいだし。いつもみたいなぶっ飛んだ条件ってわけでもないしな。

 「わかったよ。その人のところでバイトする」

 「ああ、よかった……」

 「じゃあバイトさせてくれるか聞いてみるから、連絡先教えてよ」

 「いや、私が言っておく。絶対にバイトはさせてくれるだろうから安心して待ってなさい」

 「そうなの?まあそういうことなら姉さんに任せておくよ」

 「任せなさい、何かあったら連絡するから」

 「了解っす」

 よし、これでバイトできるようになったな。姉さんもこれからちょっとは弟離れしてくれるだろう。バイト先って行動範囲が増えればなにかと暦さんや飛鳥もストーキングすることも少なくなるはずだ!!そうに違いない!!これでもう少し平穏になるといいなぁ。


 姉から無理やりバイトすることをもぎ取った凛太郎、安心はしているがむしろやばそうな方向に自分から持っていっているのだった。



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