第十一話
学校の創立記念日から一週間。とりあえずみんなに言っておこうと思う。
何も無かった。そう本当に何も無かったから安心してくれ……あの後、姉さんの部屋に拉致監禁されそうになったが、俺の対姉さん用必殺技を駆使してなんとか逃げ出した。いや本気でやばかった……今までもやばいことは結構あったが、それに比べてもトップレベルのやばさだった……まあそのおかげかあれ以来姉さんが学校をやめろとはいってこなくなった。
「凛くん、私の話きいてます?」
「え、ああごめん。聞いてなかった」
どうやらボーっとしていたらしい。久々に屋上に出て暦さんと一緒に昼飯を食べていたところだったんだけど、平和すぎてちょっとボケてたみたいだ
「どうかしたの?なんかとても悟った目をしてたけど……」
「いや、なんでもないよ。それで何の話だっけ」
「心中と監禁のどっちがいいか?って話です。」
「結局それかい!!いい加減あきらめてよ!!!」
「そうはいかないわ。私は凛くんを愛しているのだから」
「愛の方向が違う!!もっと全うに付き合うとかにしてよ……」
まったく、進歩が無いというか何と言うか……暦さんはいつも通り電波さんのままだ
「でも私もちょっと考えてみたのよね……心中か監禁かってパターンが少なすぎると思わないかしら?」
「いやまずその二つがとっても間違ってるから!!普通に付き合うとか穏やかな方向にもっていってくれませんか?」
「それは何度もいってるけど、恥ずかしいからダメね」
くそぅ……何度もこのやり取りをしているがいつまでたっても平行線のままだ……いつか暦さんをまともな女の子にしたいという俺の密かな野望はいつになったら上手くいくんだろうか……
「なんだか面白そうな話してるわね~」
「あら飛鳥さん。今日は遅かったわね?」
「ちょっと授業が長引いてね~それで、監禁か心中意外に選択肢がないかだっけ?」
「そうね。もうちょっとパターンがあっても面白いと思うのだけど……」
厄介なやつが、厄介なタイミングで出てきやがった……最近飛鳥と暦さんのする話は物騒なものばっかだからやめてほしいんだが……
「そんな物騒な話やめてくれ。心中も監禁もしないのが一番に決まってるだろ」
「そうはいかないわよ。あたし達にとっては最重要項目なんだから!」
「いつか凛くんがされることだから、ちゃんと聞いといたほうがいいわよ?」
「とりあえず俺に監禁か心中するという考えをまずやめようか!」
「はいはい、ちょっと凛太郎はあっち行っててね~」
「俺仲間はずれ!?俺になんかするって話なんじゃないの!?」
「まあこの話はおいおいということでいいんじゃないかしら?」
「まあそうね~いきなりパターン増やすってなっても思いつかないしね」
ちくしょう……なぜか会話の中に入れてない気がする……ここは俺が話題を提供してこの危険思想な二人の意識を安全なとこまで持っていくしかない!!
「暦さんや飛鳥って休日はいつもなにしてるんだ?」
「なによ、いきなり……そんなこと聞きたいの?」
「二人が危ない会話ばっか続けるから、まともな方向に会話をもっていこうとしてるんだ」
「凛くんは私のことが大好きだから何でも知りたいのよね?」
「え?いや、そういうつもりで聞いたわけじゃ……」
「凛くんは私のことが大好きだから何でも知りたいのよね?」
「え、その……」
「凛くんは私のことが大好きだから何でも知りたいのよね?」
「……ハイ」
「うふふ、照れてないでそう言ってくれればいいのに」
「ちょっと待ちなさいよ。凛太郎は暦が気になったんじゃなくて、あたしの事が気になったから聞いてきたのよ!!そうよね凛太郎!!」
「あら、凛くんは私のことが大好きってさっき言ってたの聞こえなかったの?」
「無理やり言わせたようなもんじゃない!!」
「飛鳥さんはついでなのだから答えなくてもいいんじゃない?ねー凛くん」
「むきゃあああああああああああああああ」
「……もうなんでもイイヨ」
普通の会話に戻すだけで何でこんなに労力を使わないといけないんだ……もうちょっと二人がまともになってくれれば俺も真面目に二人のこと考えるんだけどなぁ……この二人そういうの求めてもダメな気がするけど……
「まあいいわ、休日になにしてるかだっけ?私は某監禁サイトをみてあたしならどうするかとかをシュミレーションしたりしてるわね」
「監禁サイト?それはあれか?監禁のやり方とかが書いてあるサイトなのか?」
「まあ大体はそんな感じね。自分の体験談とかが多いかな~現在進行形で書いてあるブログとかもあるけど」
「そんなサイトがあるのね……飛鳥さん後で教えてくれない?」
「いいよ~普通に調べればでるサイトだからね」
「ちょーっと待て。今現在進行形で書いてあるとか言ってたよな!?それはあれだよな!現在進行形で監禁の物語を書いてあるっていうフィクションの話なんだよな!?」
「フィクションじゃないって。全部今起きている話ノンフィクションの話とかだよ。過去やってたってのが多いけど今現在も監禁してる人って結構いるんだよ?」
「警察はなにをしてるんだぁぁぁぁ!!!仕事しやがれ!!!今も監禁されて苦しんでる人がいるんだぞ!!」
「あたしに言わないでよ!!それにちゃんとみんな愛されてるから大丈夫だって!!写真とか動画もたまにあるし!!」
「証拠充分じゃねぇか!!!愛されてるとか関係ないですから!!監禁は犯罪です!!」
「なにも対処されないってことは警察も認めてるってことよ!」
「認められてたまるかぁ!!!」
まったく休日になにやってんだコイツは!!そんなもんばっか調べてるから監禁、監禁ってアホみたいに言ってくるようになったのか……飛鳥のことをもっと気遣ってやればこんな子にならなかったかもしれないのに……いや、どんなに気遣っててもいつかなる気がするな。
「あたしはそんなもんよ。暦はいつもなにしてるの?」
「私は読書とかかしら?」
「おお、やっとまともな趣味をしている人が……」
「心中する話とか監禁する話をメインに読んでいるわね」
「あーうん、あれだよね?有名な作者が書いてるようなものだよね?暦さん?」
「凛くんが想像しているものとはちょっと違うと思うわ。具体的に心中や監禁のやり方を載せたものとかよ」
「そんなことだと思ったよ!!!」
「特殊な薬の入手方法とかも書いてあるわ」
「なんかさらにやばそうだよね!?」
「そんな本があったのね!!後でタイトル教えてよ!買いにいってくるから」
「ええ、いいわよ」
ダメだ……この二人の会話がどうやっても普通の女の子の会話にならない……神は死んだのか……このような試練を残して俺にどうしろというんだ……
「ああ、そういえば読書以外にも休日はしてることがあったわ」
「おお……あまり期待してないけどよければ教えてよ暦さん……」
「ストーキングしてるわ」
「は?」
「だからストーキングしてるのよ」
「だれの?」
「凛くん以外にする人なんかいないわ」
「俺のかよ!!貴重な休日になにやってんだ!!」
「ああ、それならあたしもしてるわね」
「飛鳥もかよ!!」
「霧島先生もたまに凛くんのストーキングしてるわよね」
「……俺の周りには普通の人がいないんだろうか」
「今ストーキングしてる人、あたしら以外に何人くらいだっけ?」
「だいぶ片付けたけれど……たしか私と飛鳥さんを含めて5人くらいだったと思うわ」
「……俺って休日出かけないほうがいいのかな」
「それは困るわね。一度凛くんの家に盗聴器とカメラをしかけたけれど、すぐ誰かに破壊されてしまったし。外に出てくれないと休日に凛くんを見ることができないわ」
「あーそれは蘭さんだね。あたしもやったけどすぐに壊されちゃった。蘭さんが家にいるから家の中まで強襲することができないんだよね~」
「……今の話とか前の話は全部聞かなかったことにする!!いやもう今日の話全部きかなことにするからぁぁぁ!!!!盗聴とかカメラとか何にも聞いたことなんてないからぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!」
「ちょっと!いきなりどうしたのよ凛太郎!!落ち着きなさいよ!!」
「凛くん、ちょっとおかしくなっちゃったわね」
俺は今日なにも見てない!聞いてない!!全部なかった!!何も無かったんだ!!
……とりあえず女の子は影でなにやってるかわからないものなんだと思ったよ。帰ったら姉さんになんかしてあげようかなぁ……なんだかんだ我が家の安全を守ってくれてるみたいだしな~ケーキでも買っていってあげるか。
女の子の知りたくも無い一面を知ってしまった凛太郎だった。