表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

自律式人型兵器——京

 私は歩いていた。ジャミングがかかっているせいで衛星から情報を得られないけれど、多分基地まで10kmくらいだと思う。というか思いたい。そろそろお腹も空いたし疲れたしっz……


 おっとと、昨日寝てなかったせいか眠たいんだよなー。はあ、これだけは恥ずかしいから使いたくなかったけど、背部ブースターを使うしかなさそうだ。


 背中をエイリアンみたいにガバッと開け、中からブースターを出す。

ちょっと吹かしてみたけど大丈夫そう。ハッ、フ、ヤアァ!!


 三段跳びで助走をつけて体を浮かばせ、一気にブースター起動ッ!

バサバサと私の服が騒ぎ出し、目の前には自慢の黒髪がペタッと額に張り付いていた――うわっ、前髪やべ。


 湿気を吸って張り付いた髪を落とそうと私は手を動かした。人間らしさを追求したのはとても良いと思うよ……けどさあ、腕を翼として使ってる時は切りたかったなあ。


 私は雲を貫き、太陽が見えなくなり、地面に向かって一直線で降りていた。所々で火花が散り、長細いものが私に向かって飛んでくる。

 はえー、これが新型ミサイルですか。もうちょっと近くで見たいけど、近接信管っぽいから多分死ぬ。


「拡散型ポッド起動!!」


 なんてカッコよく言ってみると、私の肩からポコポコと子機ちゃんが出て来た。

二頭身の丸っこいフォルム、かわいいねえーー。


 と、思っていると彼女たちはミサイルに向かって飛んでいき、ぶつかって亡くなった。うう、やっぱり何度見てもこの光景には慣れない。まあ、中身は私の廉価版だから感情模倣システムは付いてないのが救い、だと思いたい。


 そんなことを思いながら私は地面に突き刺さった。それこそ頭からズボッと突っ込み、胴体が地面の外に出ているだけ。


 はあ、と思いながら体を抜いた。自慢だった髪はもうドロドロだ。どこかで洗いたいんだけど近くを……おっとと、いつの間にか敵地に侵入してしまったみたいだ。地形から察するに前線基地に近いな。

 どうだろ? こんな前線に少女がいるってのも変な話なんだよなあ。まだ情報は漏れてないらしいけども。けどもって感じ。


 でも仕方ないよね。燃料もさっき飛んでいっちゃたし、予備動力源で前線を突っ切れる感じはしないし。堕とされちゃったら軍事機密も漏れちゃうし。うんうん、仕方なーい。


 そういうことなので私は敵基地に向かって足を向けた。

 ——ザッザッザッ。べちゃべちゃ。砲撃の音も近い。多分あと十分もすれば到着かな。


 私は自律式人型兵器なんだけど、いまだに敵を直接見た事がない。けれどもその言い方だと語弊があるか。もっと正確に言えば私の武器で倒れた瞬間を見た事がない。


 これで敵をエイリアンだと思ってましたー、的な展開は省かれるわけだね。

うー、緊張するな。正直目の前で銃撃戦なんてやりたくないよ。どうせ私が勝っちゃうし。


 とまあ、言ってみたはいいものの、基地が見えて来ちゃいました。戦闘機が今から出発するみたいでバーナーを点火してます。あとは兵士の人たちがちょこちょこ歩いているのが見えるだけ。三十二式火薬投射機か……結構旧式だな。


 はあ、ここまで来ても真っ先に相手の武器を見てしまうなんてなあ。戦うんじゃないんだから! ピシャッと頬を叩いて気持ちをリセット。私はJK、JKが迷い込んじゃったー。


——「すみません! ここって何処ですかねー」


「は?」


 ……二人組で哨戒していた彼らに話しかけたは良いものの、彼らはコソコソと話し合っている。どうやら、いや、当然私について話しているんでしょう。うーむ、燃料だけ掻っ攫ってさっさと逃げよっかな。


「おい、お前の名前は?」


「私の名前は京です。燃やされちゃった京都の先の文字」


「燃やされちゃった?」


 彼は顔を顰めて私を見つめる。だけども納得してくれたみたいだ。まあ、ここら辺は難民も結構生まれたからね。


「それで、何でお前はここにいるんだ? 半径一キロは重点警戒区域なんだが」


「それは私もわからないんですよ。とにかく一旦ここに入れませんか? 何処かに行くって言っても死にたくないんです」


「それはそうか……じゃあ俺が本部に連絡してやるから着いてこい」


「ありがとうございます」


 彼は以上に平坦だな、とか言っていたけれど仕方ないって。感情《《模倣》》システムだからね。あくまでも模倣って事だよ。


 まー、潜り込めたからよしって事で。あとはいい感じのタイミングでトイレでも行って、燃料を掻っ攫う。そこからはさっさと飛んでいけばいいしね。戦闘機のアフターバーナー以上の速度が出るから何とかなるし。


 私は彼に連れられるまま、一つのテントに入った。本当に簡易的な基地で、骨組みに布がかけられただけ。ほんのりとした鉄分の匂いが、人の匂いと混じって鼻にくるそんな場所。思わず誰でも顔を顰めてしまうくらい人間のきつい匂い。


 私が顔をしかめていると、彼は青年らしい元気な声で言った。


「俺は通信科の奴に行ってくるからそこで待っとけよ」


「分かりましたー」


「あ、武器とかそういうものには絶対拾うんじゃねえぞ。民間人であっても容赦はねえから」


 彼は私じゃなく、テーブルを指差した。ははぁ、そこに武器があるんだなあと思って視線を動かすと、私の肩がシュッと伸びてテーブルの砲弾を漁っていた。はあ、今は調査しないって決めていたのに。


 お前の意思だろうと思ったかもしれないけれどこれは無意識。ロボットに無意識があるのか知らないし専門家じゃないから。ほら、人間も自分の体については大して知らないでしょ。自分の精神についてもっと知らないようにね。


 こんなことを私は考えながら腕を上げた。


「すみません」


「悪気はないんだろうけど、ここでは悪になるから気をつけて。じゃ、俺は行ってくるから。絶対に触んなよ」


「はーい」


……「呑気すぎないか?」


 と言いながら彼はテントから出ていった。侵入している自分が言うのもなんだけど、ちょっと警備が甘すぎると思う。スパイだって横行しているのに。まあ、私にとっては好都合。


 私は誰の足音も聞こえないのを確認していると、バサっと音を言わせながらテントの幕が上がった。急な光に私の瞳孔収縮は追いつかない。そこに立っている人間の影が揺らめき固まり。


「おっ……お前誰だ?」


 とにかく説明しなくては。

 私は自分の名前と状況、彼が通信科に相談してくれていることを言った。彼女は特に疑問を持つことなく私の話を信じてくれたみたいだ。


——「はー、京ちゃんねえ」


 彼女は私の体を眺め、口から感嘆のため息を漏らす。私も彼女を見返してみた。

浅黒くなった頬——あくまで自然に日焼けした感じだ。そんな頬を膨らませたりしている彼女はとても綺麗だと思う。だけども、ちょっと長くした前髪から傷も見えた。


「ねえ? 本当に京ちゃんって人間?」


「どういう意味ですか?」


「悪い意味じゃないよ。全然悪い意味じゃなくて、身体中真っ白でサラサラしてたから。毛穴も全くないしさあ。ほら、戦場の天使ってこういう子のことを言うんだろうなーって」


「私は天使なんかじゃないですよ」


「そうかなあ? ま、私にとっては天使だから天使だよ」


 彼女はゴツゴツとした手で口を隠した。その後ろからクスクスと可愛い声が出る。私なんか真似できない声——ちょっとだけ嫉妬心が生まれてきた。

 システムが勝手に嫉妬心って言っているだけだけどね。実際はもっと大きい何か。


「お。お前が話してんのか」


 さっきの彼が帰ってきていたみたいだ。彼女の声に隠れて聞こえなかった、だろうか?


「お前って言わないでよ。私の名前は葵なんだから」


「はいはい」と彼は面倒くさそうに手を振った。


「ちょっと、全然分かってないでしょ」


——「なあ京? だったかな。明後日には補給部隊が来るからその時に一緒に帰る感じでいいってさ」


 それなら待ってもいいかも。いちいち面倒なことをする気もないし。うんうん、これが一番最適解だって分かってるしね。

ピコン。ピコンピコンピコピコ……


「よかったじゃん! 京ちゃんみたいな可愛い子はこんなとこにいるべきじゃないから」


「あーそうだよな。葵はまだにしても、京ちゃんは早く帰った方がいい。親だって心配——」「ねえ! 葵はまだにしてもってどういうことよ。私だって女の子なんだからさあ、もうちょっとレディっぽく扱いなさいよ」


「るさいうるさい。俺だってお前には後方にいて欲しいよ」


 はえー、私を置いてこの会話。そういう事なんでしょうね。流石に感情模倣システムでも分かるよ——私が邪魔だってことくらい。

 私はテントを開けて外に出た。背後からはイチャイチャする声が聞こえるけど。

 ま、まま。


 私はスッと基地の中を歩いて散歩。機械少女の散歩って言えばカッコいいかな? まあ、あの二人に免じて機密事項はなるべく見ないようにフェンスに沿って私は歩く。

 ところどころ空を切り裂くように爆発、拡散。十回に一回くらい墜落。


 はあ。私もあの中に帰るのかあ、正直ずっとここでダラダラしてたいなあ。あの二人の恋路を見届けたいんですよ。あーあ、私が兵器じゃなかったらな。もっと後で作られる民間用だったらいいのになあ。


 手をかざして空を見た。センチメンタルな気分、いや、ロボメンタルな気分になっていたんだと思う。案の定打ち砕かれたわけだけど。


 指の隙間から鋼鉄の鳥。もちろん私の仲間だね。人型でもない無粋な鳥は基地の上にやってきて火花を発した。ミサイルを迎撃するため私の背中から近距離迎撃システムが爆音と振動を鳴らしながら起動され、鋼鉄の弾丸を打ち出す。


——「京ちゃん! 早くこっちきて!!」


 葵さんの高い声が爆音を通り抜けて私の耳に届いた。ついでに風切音も。そして私の脳回路がカチリと変化したのも。


 ああもう、私の感情しっかり頑張ってよ! 人間ベースで作られてんでしょ!!


◇◇◇


——2053年10月35日

:東部戦線敵前哨基地

:ケース5(最高機密)

:敵基地爆撃任務最中、我が軍第X爆撃機中隊が未確認機の攻撃を受けました。このことにより中隊の大半が撃墜、失踪しました。帰還した数機を調査したところ、攻撃痕は先端技術開発局が作成した兵器と酷似しています。

私たちは本件についてケース6機密が関係しているのではないかと考えています。

:事故調査委員会


P.S ふふふ、だから言ったじゃないか、感情模倣システムなんて載せるなと。もう出来ている京型のシステムを切っといてね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ