表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ある薬師の一生  作者: 杉勝啓


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

94/98

浅井長政殿が羨ましいー徳川家康の羨望

数日後、片桐且元が訪ねてきました。

「なんだ、助作ではないか。朝鮮に行っていたと聞いたが、帰って来ていたのか。随分、やつれたな」

「ああ、朝鮮ではなかなか物資が届かなくてな、佐吉(石田三成)も国内では苦労していただろうが、私も苦労してな」

「そういえば、お前は朝鮮で兵站を請け負っていたのだったな」


「あら、あら、片桐様じゃありませんか。お久しぶりですね。万吉さんもいくら片桐様が幼馴染だからって、いつまでも助作なんてよぶなんて失礼ですよ」

「小夜殿か。何、構わんよ。もう、わしを助作とよんでくれるのは万吉ぐらいだ」

「そうですか。まあ、片桐様がいいって言うんならね。で、今日は何の御用で」


傍らでは秀頼と完子が遊んでいました。且元はちらりと秀頼の方を見ました。


「助作、あの子らは私の甥と姪で秀吉とお完だ」

「秀吉とお完・・・」

万吉と且元はお互いに頷き合いました。そして、且元は小声で小夜に気づかれないように言いました。

「秀頼様がここにおられるときいてな。徳川様が秀頼様に会いたがっている」

「徳川様が?徳川様は長浜に来ておられるのか」

「しっ」

且元は人差し指をたてて口に当てました。

「あっ・・・ああ・・・」

「徳勝寺におられる。秀頼様と来てくれぬか」

「わかった」


「小夜殿、私は徳勝寺に出かけてくるよ」

「ああ・・お師匠様とお袖ちゃんの墓参りだね。行っておいで」

「秀吉とお完も一緒に行こう。お前たちのおじい様たちもそこに来ているらしい」

「私たちのおじい様?」

二人は怪訝な顔をしました。


徳勝寺に着くと、浅井家の墓の前で手を合わせている徳川家康の姿が見えました。

「じいではないか」

秀頼は家康にかけよりました。

「おお・・・秀頼様・・・しばらく見ないうちに少し大きくなりましたな」

家康は秀頼を抱き上げました。

「完子殿もすっかり女らしくなられて」

その言葉に完子は少しはにかんでます。


「そうだ。じいいにあったら頼もうと思っていたことがあるんだ」

「なんでございますか。じいにできることなら、なんなりと」

「うん、伯父上が書き留めている薬草などの知識のことなんだ。きけば、最初はじいが言い出したことでというではないか」

「そういえば、そんなこともございましたな」

「だからね、じいが後ろ盾になってほしいんだ。きっとみんなの役にたつよ」

「それはよいことを考えられましたな」

「それでね。それを書き写すものがいるだろう。前に伯父上と千吉おじさんが話しているのを聞いたんだ。仕事がなくて困ってる人がいるって。その人たちに頼んだらどうかなって・・・」

「秀頼、それは大考えだと思うが、読み書きもできないものも、世の中には多いんだ」

「そうかあ・・・でも・・覚えればいいんじゃない。私もまだ、字が書けないんだ。私も字をおぼえたいよ。きっと読み書きができるようになれ、みんな役にたつよ」

「それは、いい考えですな。拙僧も力になりますぞ」

いつの間にかそばに来ていた雄山和尚が言いました。


「あっ・・ちょうちょ・・・ねえ・・秀頼、捕まえてよ・・」

「わかったよ・・」


秀頼と完子はちょうちょを追いかけていきました。


「父の墓に手を合わせてくださっていたのですか」

「意外ですか」

「ええ・・徳川様は父を恨んでいたのでは?」

「そうですな・・・恨んで・・・恨んで・・・そして・・・羨ましかった」

「父がですか」

「わしが、我が子の信康や妻の築山を死に追いやった話はしましたな」

「ええ・・」

「あのとき、あなたは言いましたな。信康と築山のために信長と一戦しようと思わなかったのかと。わしにはできなかった。さぞ、信康や築山はわしを恨んで死んでいったことでしょう。でも、あなたの父上は違った。それゆえに、淀の方はじめ、浅井長政殿のお子たちは浅井長政殿を慕っておられる。だから、わしは浅井長政殿が羨ましいのです」

「浅井長政殿の生涯は短かったが、長く生きてきたわしに決して劣るものではない」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ