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ある薬師の一生  作者: 杉勝啓


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子供の頃の茶々

「うん……」

薬草を眺めていた千吉が、ふと漏らした。隣にいた万吉が顔を覗きこみました。

「どうした、千吉」

「薬草が残り少なくなってな。いつもは加代の亭主に頼んでいるんだが、あいにく出稼ぎに出ておる。かといって、私には診るべき患者がいるし……」

「なら、私が行ってこよう」

「そうしてもらえると助かる。さしあたって必要なものは……」

「ああ、わかった」



「伯父上、どこかに行かれるのですか?」

旅支度をしている万吉のもとに秀頼がやってきました。

「薬草を摘みに行くんだよ。一緒に来るかい」

「うん」

「じゃぁ、秀吉も用意をしておいで、動きやすい格好をするんだよ」


「ああ…ちょうどよかった」

「小夜殿、どうかしましたか?」

「いえね、秀吉ちゃんも完子ちゃんもここへ来たときの着物しかないだろう。その着物みたいな上等なもんじゃないけどさ、縫ってみたんだよ。完子ちゃんのは加代の古で悪いけどね。そのうち、完子ちゃんにも縫ってあげようと思ってるよ」

「そ…そんな悪いです」

「子供は遠慮なんかしなくていいと言っただろ。薬草を摘みに行くなら、いま着てる上等な着物よりこっちの方がいいよ。さあ、袖を通してみな」

「あ…ありがとうございます」

「いいんだよ。それにしても上品な子だねえ。万吉さんの異母妹さんはお侍に嫁いでいると聞いたからそっちの血筋かねえ」


「うん…見当で縫ってみたけど、ぴったりだ。後、握り飯も作ったから持ってきな」

「小夜殿、何から何まで申し訳ない」

「いいんだよ。万吉さんにはうちの診療所も手伝ってもらってるんだからさ」


伊吹山まできました。

二人で山道を歩いています。

「秀頼、疲れないかい。おんぶしてやろうか」

「大丈夫です。歩けます」

「うん…そうか…」

 

秀吉にあれだけ溺愛されて、周りのものにかしずかれて育ってきたのだから、もっとわがままに育っているかと思っていたが…そう言えば茶々がこの年のときはすごくわがままだったな…


「どうかしましたか」

「うん、お前の母上の子供の頃のことを思い出していた」

「母上ですが?母上の子供の頃って、どんなのだったのですか?」

「わがままだったよ」

「母上がですか」

「意外かい」

「ええ…母上はおしとやかで優しくて、私がわがままをいうとすぐ叱りましたから」 

「はは…お前のおじい様が、率先してそのわがままを許してたからな」

「おじい様?」

「浅井長政というんだ。信長に、敗れて自刃した」

「………」


「お前の母上が一番、得意だったのは何だと思う?」

「何ですか?」

「木登りだよ」

「ええ~!」




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