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幸せに暮らしている人々
「あれえ、万吉おじさんだ」
「お加代ちゃんかい。見違えたよ」
「うふふ…久しぶり」
「ねえ、おっとう、聞いて。百吉は、この間、初めて立ったんだよ」
「おお…そうか…そうか…百吉は賢いなあ」
千吉は百吉を抱き上げました。
可愛い子だ。秀次様の子どもたちだってあんなに可愛かったのに…
そう思うと、また、涙が出て来ました。
「それはそうと、亭主はどうした」
「うちの人は伏見城の普請に出稼ぎに行っているよ。何でも前の関白様がお住まいだった聚楽第っていうのが壊されて、それに変わる場所が欲しいんだって」
「お前さん、加代の亭主は京都の伏見まで行ってるけどさ、ありがたいよねえ。今まではさ、賃金なんか払ってもらえなかったけど、今はちゃんと払ってもらえたるんだからさ。太閤様のおかげなんだよ」
そうか…茶々が秀吉を許せるのはこうして幸せに暮らせる人々がいるからか…
人は誰でも失策をする。秀吉も…父上も…
だけど、今、こうして幸せに暮らしている人々がいるのは紛れもなく秀吉のおかげなんだ。
「何?万吉おじさん、泣いているの」
「ごめん、加代ちゃんたちが幸せに暮らしているのが嬉しくて」
「変な万吉おじさん」




