秀次 謀反
湯治から帰ってきた秀次を待っていたのは謀反の疑いでした。
「な…私が、謀反…そのようなこと…」
「貴方は諸侯に金銭的な援助をしましたね。太閤殿下はそれを謀反の証として見ています」
「な…叔父のために朝鮮に苦労している者たちだ。便宜を図ってやらねばその不満は叔父上に向かう。そのために私は…とにかく、叔父に会わせてくれ。申し開きをさせてくれ」
「太閤殿下はお会いになりません」
「そんな…申し開きもさせてもらえないと…」
そのまま秀次は高野山に向かいました。しかし、供をする人数が多いと石田三成に咎められました。
「こちらへ」
三成に促されたそこには万吉がいました。
「万福丸様?」
「佐吉に頼みました。逃げるには数は少ない方がいい」
「逃げる?」
「父が言ったのでしょう。辛くなったら逃げろと…佐吉も貴方を殺したくないのです」
「佐吉?」
「石田三成です。彼もかって父に仕えていました。その縁に頼りました」
「本当に…もう…叔父には私の声は届かないのでしょうか?」
「ええ…秀吉様も貴方に謀反の心などないことは百も承知です」
「叔父は一体、なぜ…」
「秀吉様はもうお拾いしか見ていません。もし、貴方が秀吉様のいうように五分の四を受け取っていれば、それでよかった」
「なぜです。叔父はいずれ天下を徳川家康どのに譲ると、それまでの間だけ、私に関白を譲ると、そう言っていた。だから、私は関白を引き受けた」
「お拾いのためです。秀吉様は貴方にお拾いを守ってもらおうとした。ですが、貴方は徳川殿に譲るという」
「ですが、徳川殿がお拾いに何をするというのです?」
「天下を徳川様が手中にすれば、天下のためにならぬと判断すればお拾いを生かしておかぬと…秀吉様は恐れているのです。家康様はかってご我が子でさえ犠牲にした。だから、秀吉様はお拾いに天下を譲り、その障害になるもの、すべて排除する決意をした」
「そ…そんな…」
「だから、逃げて下さい」
「逃げる…どこに…」
「やはり、私は高野山に向かいます。逃げてどうなるものでもありますまい。それに、ここで私が逃げれば私の妻妾や子どもたちがどうなるか」
「秀吉様が貴方の妻妾やお子様まで何かをすると…」
「……せめて…そこまで叔父が狂っていないと祈るばかりです」
間もなく、秀次は腹を切りました。まだ27歳の若さでした。
事件は秀次が腹を切るだけではおさまりませんでした。秀次の妻妾、子どもたちがことごとく処刑され、秀次の家臣までも腹を切らされたのです。




