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ある薬師の一生  作者: 杉勝啓


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疑惑

「ごほごほ…」

「あなた…」

「一の台か。そこにある薬をとってくれ」

「ええ…」

「ああ…やはり万福丸様の薬はよく効く」

「万福丸様…淀の方の異母兄君ですね」

「あの方は私をかってくれているようだが、早く関白の座など降りたい」

「ええ…」

「そなたの父に随分動いてもらって勅命を、出してもらおうと思っていたのだが、昨年、正親町上皇がお隠れになったことを理由に断られてしまった」

「天下を五つに分けてそのうち一つをお拾い様に与え、残りは私に与えて、お拾い様と私の姫と結婚させようと言うのだが…この話に私は条件を付けて受けようと思う」

「殿…」


「秀次め」

「お前さま…秀次様はなんと?」

「おねか」

「あやつめ、小賢しくも条件を付けてきおった」

「条件ですか?」

「朝鮮にいる諸侯を日本に引き上げさせろというのだ」

「何か問題でもありますか」

「一辺の土地も得ておらんのにそんなことができるか」

「あいつの関白は暫定的なものだと言い聞かせておったのに、今になって惜しくなったか。でなければ、このような馬鹿げた条件をつけるものか」

「なぜでございますか?諸侯の負担も大変なもの。和議が結ばれているのですから、引き上げさせるには問題はありますまい」

「何もわかっておらんな。お前は。あいつはその諸侯らに経済的な支援を行っているのだ。諸侯を呼び戻してわしに対抗するつもりだ。それに朝廷や公卿に近づきすぎる。わしが一の台を遠ざけたというのに、あいつが娶ったのじゃ」

「ですが、一の台殿の父君はお前様の関白就任に奔走してくださった方ではありませんか」

「あいつは朝廷や公家の力を後ろ盾にしているのだ。危険この上ない」

「お前さま…お前様がお拾いが可愛いのは分かりますが…天下のためには何がよいか、考えて下さい」

 

わしが盗った天下じゃ。可愛い我が子に継がせたいと思って何が悪い。



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