愛妾として生きるか母として生きるか
「異母兄上、いらしてたのですか?また、塀を超えて忍び込んだのですか」
「はは・・・今度は私の顔を覚えていてくれた者もいたから、門から入ったよ」
「そうですか」
「熱がある。もう少し横になっていたほうがいい。可哀想にその熱は乳が張るからだ。先ほど、大蔵卿殿に言って絞ってもらった」
「ああ・・それで・・先ほどまで胸が痛かったのに・・」
「泣いていたのか・・」
「わかっているのです。あの子を豊臣の世継ぎにするためにはおね様に預けた方がいいと・・」
「豊臣の世継ぎか。それが鶴松の幸せだと思うかい」
「何が言いたいのです」
「お前が人々のために、関白様を支えていこうとしているのはわかる。だがな、鶴松を巻き込むな。腹を痛めた我が子に乳も飲ませてやれない。そんなのは間違っている」
「攫ってきてやろうか」
「え?」
「関白様を支える愛妾ではなく、ただの母として生きてみないか。もちろん、このような、豪奢な暮らしはさせてやれんが、お前と鶴松ぐらいは養ってやれる」
「でも、義母兄上・・見つかれば・・」
「お前の人生に口出しはしないと決めた。だが、お前はつらそうだ。よく、考えてみてくれ」
と、二人が話していると大蔵卿から声をかけられました。
「あの・・お方様・・北政所様からのお使いの方が・・・」




