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ある薬師の一生  作者: 杉勝啓


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わが子を育てられない

「棄てでございますか?」

「ああ、捨て子は育つというからな。一度、棄てて拾わせるのじゃ。あの子は近々、こちらに引き取ってわしの世継ぎとして皆に広めるつもりじゃ」

「それはよろしいのですが、立ち消えになった浅井長政殿の為の寺を建立するというのは」

「まあ、そう目くじらをたてるな。あの子が罪人の孫では困ると淀がいうのでな」

「でも、今は景気がよくありません。そのような中で寺などを建てるとしわ寄せがいくのは、そして、その批判の的になるのは淀殿ではありませんか」

「そうじゃのう。確かに淀の評判はよろしくないからな」

「では、どうでしょう。その子の養育を私が行うというのは。その子を私の養子とすれば、その子の母は私ということになり、淀殿が批判がされることではないのでは」

「そうじゃ、そうしよう」


話は進み、淀城にも知らされました。

「なぜ、あの子は私の子です。私が産んだ子です。どうして私が育てられないのですか」

「関白殿下の、決められたことです」

「そんな、殿下に会わせてください。私が話します」


「淀、わかってくれ。おねの養子となればあの子の将来も確かなものになる。おねは大事に育てると約束してくれた。また、近いうちに会わせるから、お前とあの子を守るためなのじゃ」


世間にそのことは知れ渡り、わが子を正室に預けてほったらかして贅沢三昧する愛妾との噂がたちました。


その話は万吉のもとにも伝わってきました。

「そんな…茶々がそのようなことをするはずがない。あれほどわが子を欲しがっていたというのに」




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