伊曽保物語
倒れていた南蛮人を家に帰った二人です、
「お腹がすいているようですので、何がお作りしましょう。その間、お袖、この方の相手をしていておくれ」
「アリガトウゴザイマス」
万吉がご飯を炊いて、干物を焼いている間、南蛮人とお袖は何か話しているようでした。
「さあ、できた。どうぞ。南蛮の方の口にあうかわかりませんが」
「イエ、イタダキマス」」
「お袖、この方となにを話していたんだい?」
「ええ、この方はゼウスって神さまの教えを広めにこの国にきたって。何でも洗礼ってのを受けると死んだら神様の国にいけるんだって」
「へぇ~、洗礼って?南無阿弥陀仏と唱えるだけじゃだめなのかい?そう唱えれば阿弥陀様が浄土に導いてくれると教えてもらったのだけどね」
「ソレハ、ヨコシマナカミのオシエデス」
「邪って…まあ、いいや、どうして、その神の教えを広めようとしていた人があんなところで倒れていたんです?見たところ、南蛮の宣教師のようですが」
「ジツハ、ナカマトハグレテシマイマシタ。ナカマトゼウスサマノオシエヲコノチニヤッテキタノデスガ」
「ああ…それなら、他の方々はこの地の領主さまの所においでになるのでは。多くの宣教師の方はその土地土地の領主に布教の許可をとって活動していると聞いていますが」
「オウ、アナタ、テンサイ、リョウシュサマ、ドコニイマスカ?」
「長浜城にいると思いますが」
「ナガハマジョウ?ドコデスカ?」
「後で、長浜城までの地図をお書きしましょう」
「オオ、タスカリマス」
「はは…」
「トコロデ、オカワリシテモイイデスカ。コノクニノショクジトテモオイシイ」
「気にいってくれたのなら良かったです」
「ドウモゴシンセツニアリガトウゴザイマシタ。オレイにコレヲ」
その宣教師が差し出したのは聖書でした。
「いえ、そのような貴重なものをいただくわけには?それに、私はこの本に書かれている文字は読めません」
「ソウデスカ。デハ、コチラヲ。イソホモノガタリトイイマス。コノクニノコトバデカカレテイマス」
「よろしいのですか」
「エエ…アナタガタフタリニカミノオンチョウガアリマスヨウニ」
その夜、万吉はお袖に宣教師から渡された本を読んでやりました。
うさぎはかめののろいのをバカにして言いました。
「お前はどうして、そんなにのろいんだい」
「そんなにバカにするならかけっこをしよう」
うさぎとかめは山の麓までかけっこで勝負をすることにしました。しかし、うさぎはかめが急いでも自分に追いつくことはないだろうと途中で寝てしまいました。寝ているうさぎをみて、その横をかめは通り過ぎていきました。目が覚めたうさぎはあわてて走り出しましたが、かめはとっくの昔に、山の麓まで来ていました。
「ふうん……、かめはどうしてうさぎが寝ちゃうってわかったの?」
「さあ、どうしてだろうな」
そうだ!私の知識ではお袖の病は治せなくても、南蛮の知識なら。こんな本がこの国の言葉になっているくらいだ。きっと病の治療を記した本もあるはずだ。




