贅沢三昧の愛妾とそれを嗜める正室
「でもさ、その愛妾って人の贅沢を止める人はいないの?」
「秀吉様のご正室様って方が止めたって聞いているよ。なんでも自分の父親の為に寺を建てたいっていうのを止めたって」
「子供が自分の親の法要をしたいと思って何が悪いんだ」
万吉の拳は震えていました。
「悪くはないさ。でもね、寺なんか建てたら、また、莫大なお金がかかるだろう。そのしわ寄せはあたしたちに来るに決まっているじゃないか。でも、正室様っていうのは偉いねぇ。なんでも秀吉様が貧しい頃から連れ添っているっていうじゃないか。あたしたちのこともわかってくれてるのさ」
万吉の拳の震えに気がついた千吉は言いました。
「小夜、もう、やめておけ。上の人たちのことだ。私たちには関係のない話だ」
「それもそうだね。あっ、寝具が足りないねえ。万吉さんとお袖ちゃんは同じ寝具でいいかい。用意してくるよ。あんたたちはゆっくり食べていて」
「あ、小夜姉さん、手伝うよ」
「じゃあ、悪いけど加代と遊んでいてくれるかい。うちの人も、さっきから加代の相手をしていて、疲れたみたいだ」
「うん。いいよ。加代ちゃんいこうか」
「すまんな。小夜に悪気はないんだ」
「わかっている。わかっているが…」
「贅沢三昧の愛妾。それを嗜める正室。世間ではそういう図式ができあがっている」
「そんな。今の景気だって茶々の、仕掛けだ。それに気づくものはいないのか」
「おらんだろうな」
「茶々は皆のためにやっていることなのに…」
「あまり気に病むな。秀吉様が健在な限り、秀吉様が茶々様を守ってくれる」
秀吉は関白となり、豊臣の姓を賜りました。
聚楽第を建て、そこに時の天皇、正親町天皇の行幸を仰ぎました。
そして、関白の名で惣無事令をだし、各地で争っている戦に介入していくことになります。




