求婚
「千吉、助作も……」
「ああ……楼主とは話をつけてきた」
と、お袖がよろめきました。
「あっ……」
「ずいぶんと弱っているようだ。大事にしてやれ」
「お袖、この男はな、腕のいい薬師だ。きっとお前の身体を治してくれる」
「あの……でも……あたし……楼主様のために稼がなくちゃ」
「いや、それはもうよい。楼主も納得の上で我らにお袖をよこしたのだから。お前は何も考えずに養生すればいい」
「まだ、体力があるまい。万吉おぶっていってやれ」
「う…うん……さあ……おぶさって」
「いいの?」
「遠慮しなくていい……千吉、助作も感謝する」
「ああ……またな」
か……軽い……万吉がお袖を背負った時に感じたのはそれでした。
千吉と片桐且元と別れて家に向かって歩いているとお袖が言いました。
「ねえ、万吉さんってどういう人なの?片桐様のような偉い方とお知り合いなの?なんで片桐様のこと、助作って呼んでいるの?」
そうか……無理もない疑問だな……
「もしかして、万吉さんて偉い人なの」
「う~ん。お袖なら秘密を打ち明けてもいいかな。実はな、私は天子様のご落胤なんだ」
「ええ〜!なんて、驚くと思ったら大間違いよ。そういえばさ、片桐様が仕えている人もさ……秀吉って言ったけ。自分は天子様のご落胤だなんて言ってるんだって。なんで、そんなすぐわかる嘘をつくのかなあ?」
「あははは……」
「何かおかしいこと言った?」
「ああ…、お袖にさえ見破れるような嘘をつく秀吉ってのがおかしくってさ」
「そうよね。せいぜい、どっかのお侍の子ってことにしとけばいいのに」
「お袖と暮らしていくと楽しそうだ」
「あたし、万吉さんと一緒に暮らすの?」
「そうだよ。滋養のあるものを食べて養生して、元気になるんだ。それで元気になったら」
「元気になったら?」
「うん……断ってくれてもいいんだけど……私のお嫁さんになって欲しい」
「あたし…遊女だったんだよ。遊女は人並みのお嫁さんにはなれないってお姐さんたちが言っていた」
「そう…お袖は私のこと、嫌い?」
「ううん…好きよ…でも、あたし、なんにもできないんだよ。お掃除もお料理も…お裁縫も」
「そんなことはいいんだ。元気になればいくらでもできる」
「うん……あたしは嬉しいけど、万吉さんはそれでいいの?」
「私は家事をしてくれる女中が欲しいわけじゃないんだ。お袖だから嫁に欲しいんだ」




