淀殿も秀頼も殺したくない
「そうですが。淀のお方様がそのようなことを」
万吉は大坂城で政務をとっている家康と対峙していました。
「はい」
家康は目を閉じました。かって我が子信康と妻、築山を死に追いやった自分を淀殿に重ねていたのかもしれません。
「淀のお方様とわしの願いは一つ。この国から戦をなくし、平和な国にすること。淀のお方様も秀頼公を贄になさるとおっしゃられるか」
「徳川様…私は茶々も秀頼も殺したくないのです」
「わしとて、殺したくない。だから、わしには策がある」
「策ですか?」
「豊臣家の力を削ぐことです」
「と、おっしゃいますと」
「豊臣家に戦う力がないとわかれば浪人たちも頼ってはこないでしょう。わしは豊臣家を六十万石くらいの小大名にします。こたびの戦で戦功のあったものには豊臣家の持っている石高を与えます。そして、淀のお方様には神社、仏閣の修繕をしていただきます」
「………」
「今までも淀のお方様は淀城や養源寺の根粒を太閤殿下にねだられてました。それは…決して淀のお方様のわがままではなく、民に仕事を与え、経済を回すことだったとわしはわかっています」
「徳川様は茶々の想いをわかってくださっていたのですか」
「わしとて、領地経営を行ってきたものです。わからないはずがありません。淀のお方様がどれほど心を砕いて、太閤殿下を支えてきたか」
「それと、わしは孫の千姫を秀頼公に嫁がせて岳父として秀頼公を支えてゆくつもりです」
「ありがとうございます。徳川様がそのようにお考えくださっていたとは」
「万福丸殿…その方も苦労いたしますな」




