直江状
「御方様…秀頼様が…」
「なんですって!」
淀殿は慌てて、迎えに出ました。
「秀頼…完子…内府殿…且元も」
「秀頼…完子…なぜ…帰ってきたのですか?秀頼、母がなんのために、そなたを異母兄上に預けたと思っているのですか?異母兄上がそなたに帰れと言ったのですか」
「伯父上は逃げろと言いました。いつでも逃げておいでと言ってくださいました」
「では、なぜ…逃げずに帰ってきたのです?」
「では、母上はなぜ…逃げないのです?どうか一人で背負うとしないでください。私もいます。完子もいます。じいもいます。皆がいます」
「………」
「淀のお方様…秀頼君は幼くとも、立派なおのこじゃ。太閤の子として、一人の男として」
秀頼と完子が去って淀殿は家康と二人で対峙していました。灯りが二人を照らしています。
「そうですか…三成そのようなことを」
「はい。秀頼公の言葉なら三成も耳を貸すと思ったのですが」
「私のせいです。太閤殿下は三成にもっと大きな領地を与えようとしていたのに、私が三成の政治手腕を欲しがったばかりに…私が三成を、追い詰めてしまった…」
「淀のお方様のせいではございません。三成は死に急いでいるのかもしれません」
「そんな…こんなことなら太閤殿下の言う通り三成を遠国に行かせて、そこで手腕を振るってもらえばよかった」
「………」
「御方様…これを…」
家康が差し出したのは1枚の書状でした。世に名高い直江状と呼ばれるものでした。そこには家康を挑発するあらゆる内容が記されていました。
「上杉の直江から届いた書状です」
「このようなものを上杉の直江が寄越したというのですか」
「ええわしはこの直江の挑発に乗ろうと思います」
「それは…」
「わざと隙をみせます。わしの意をくんで三成が思いとどまってくれればいいのですが」
「三成は思いとどまってくれるでしょうか。秀頼の言葉さえ聞かなかっとのでしょう」
「これは賭けです。それでも三成が戦うというなら、お方様も、覚悟なされてください」
「もう…それしかないのですね…内府殿…心をつくしてくれたこと…感謝いたします。まさか…秀頼や完子まで佐和山に連れて行ってるとは思いませんでしたが」
「お方様に頼まれて…佐和山まで行ったのですが、良いところでした。あれほどの国を造れる者は滅多におりますまい」
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花に一夜の宿はなくともー浅井長政伝




