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本の呪いなんて本当はない!

美麗は何もする気が起きず、数日間泣いたり、ゴロゴロしたり、寝たり、泣いたりした。

「なんか食べなきゃな。」

カガミを見て美麗は呟く。

美麗は少し元気を取り戻しはじめていた。

それでも唯人の事を思い出すと、涙が止まらなくなった。

「今日何曜だろ?」

美麗は、重く長い時間を一人ぼっちですごしていた。

「前まではずっと一人ぼっちだったのにな。」

美麗はまた、泣きながら眠りについた。


ブーブーブー。

美麗は、携帯の音で目をさました。

「誰だろ?」

美麗は携帯をみた。

電話の主は唯人だった。

「部長・・・ごめんなさい。今は出られません。」

美麗は、小さくつぶやき、携帯を裏返した。

またベッドに倒れ込み、しばらく天井を見つめていた。

ピンポーン。

「まさか唯人さん?」

美麗は布団を被りうずくまった。

ピンポーン。

「唯人さん・・・今会ったらダメなの。」

ブーブーブー。

今度は携帯がなる。

美麗は仕方なく、電話にでた。

「もしもし。」

(白河さん?何で何もいわずにいなくなるんだよ!)

「ごめんなさい・・・ごめんなさい。」

(家にいるんだろ?ドア開けてくれよ!)

美麗は無意識にドアに近付いていた。

本当はドアを今すぐ開けて、唯人の胸に飛び込みたい。

「ダメです。」

ドアの前で美麗は固まっていた。目からは涙が流れていた。

(頼むよ!俺、縁談なんか受けないよ!)

「ダメです。部長は社長令嬢と結婚して将来は立派な社長になるんですから。」

(勝手に決めるなよ!俺は、俺は!)

「ダメっそれ以上はいわないで。」

美麗は崩れおち、ドアにもたれかかる。

唯人もドアにもたれかかり、座った。

「なぁ聞こえる?」

唯人は電話をきった。

「はい。なんだか間にドアがあるのに温かい気がします。」

「俺は美麗と一緒にいられるなら、何だってするからな。」

「ダメです。私達が会うのはこれが最後。」

「会ってないし。顔見せてよ。」

「ダメです・・・私部長と出会えて良かったです!」

「俺はもう美麗がいないとダメなんだよ。頼むから開けてくれ!」

「唯人さんは大丈夫・・・」

美麗は小さな声でつぶやく。

「ダメになるのはきっと私の方。」

「分かった。今日は帰る。でも俺は美麗が好きだから!ずっと好きだから!」

唯人が去っていく足音が遠くなっていく。

美麗は、両手の掌を顔に押し当て、泣いた。ずっとずっと泣いた。

美麗が気がつくと、朝になっていた。

廊下の向こうから差し込む光がまぶしい。

「私・・・玄関で寝ちゃったんだ。」

美麗は、立ち上がり、ベッドに座った。

「よし!出かけよう!」

美麗は気を紛らわせるために出かける事にした。

身支度を整え、玄関を出た。


「あ〜気持ちいぃ〜!」

美麗は、行き先を決めずに電車に乗り、山の中の駅で下りた。

山の中の舗装された道を歩いていると、すごく気持ちが晴れた。

「あっ!川だ!」

美麗は川を見つけて、斜面を下る。

水に触れてみた。

「冷たい。なんだか生きてるんだなって思えるな。あっ魚だ!私、インドアだったのもったいなかったな。たまにはこういう所もいいな・・・唯人さんと来たかったな・・・ダメっ!私は唯人さんを一生分愛したの。だからもう大丈夫だよ美麗!」

美麗は川の横でレジャーシートを敷き、お弁当をたべて横になった。


カァカァカァ。

カラスの鳴き声で目が覚めた。

「あれっ?!まずい!もう日が暮れ始めてる!」

美麗は急いで駅に戻った。

「やっぱり終電終わってる!どうしよう・・・」

美麗は途方にくれ、駅のベンチに座っていた。

「最悪だ。なんでこんな事に。暗いし怖い・・・」

美麗は縮こまって座り、涙があふれてきた。

「私、最近毎日泣いてるな。」

美麗は、ただ座って朝が来るのを待っていた。

ブーブーブー。

美麗の携帯がなり美麗はびくっとなった。

誰だろ?

携帯をみると唯人だった。

美麗は暗くて怖い気持ちがいっぱいで電話に出てしまった。

「もしもし。」

(美麗!家にいないの?)

「う、うん。ちょっと。」

(どこにいるんだ?今すぐ会ってはなしたい。)

「じっ、実は・・・山です。」

(はい?山?)

「気分転換に電車に乗って、山の中の駅で下りたんですが、川のそばで寝てしまって、起きたら夕方で、終電終わってて・・・暗いし怖い。」

(迎えにいくから場所教えて!何駅?)

「だっ、だめだよ。」

(そんな事言ってる場合じゃないだろ!)

美麗は仕方なく駅を伝えた。

唯人は車で、電車をつないだまま向かってくれていた。

「大丈夫か?安全なとこにいるのか?」

「無人駅で、駅と言うより小屋かなぁ・・・唯人さん早く来て。」

「正直になってきたな!急ぐから待ってて。」

「ありがとう。ホントにごめんなさい。」

二人の距離は、離れていたのに前より近くなっていた。

キー。

車が急ブレーキをかける音がした。

向こうから人が走ってくる。

「唯人さん?」

「はぁはぁはぁ。お待たせ。」

美麗は唯人に飛びついた。

「怖かったよ〜。」

「無事で良かった。」

美麗は唯人にしばらくしがみついていた。

「なぁ、美麗。怖かっただろ?」

「えっ、うん。ものすごく。」

「空見てみなよ。」

美麗は、空を見上げた。

「わぁ〜星がすごい!」

「キレイだな。」

「うん。」

「人生なんて、この駅と同じだよ。怖く見える駅も、空を見上げたらこんなにキレイなんだ。」

「ん〜。ロマンチックな事言いたそうだけど良くわからないよ。」

唯人は美麗の頭を優しくなで、

「美麗のいない俺は、回りが星だっていっても、下しか見えない暗い駅なんだよ。」

「うん。よくわからない!ふふっ。」

美麗は久しぶりに笑った。

「やっと笑った!」

「だって唯人さんが意味分からない事言うんだもん。」

「ははっ。なぁ、美麗。」

「はぁい。」

「俺と結婚してくれ。美麗がいないともうだめなんだ!」

「ダメダメだなぁ〜」

「ダメダメで結構だよ。」

「私も、唯人さんがいないと生きていけそうにないです。結婚して下さい!」

「本当か?」

「はい。お願いします。」

「やったー!」

唯人の声が暗闇に響き渡る。

二人は我慢して頂いた気持ちが溢れ出した。

長い間、強く抱きしめ合った。

唯人は美麗の肩を持ち、見つめ合う。

無言のまま距離が近づき、美麗は目を閉じた。

「痛っ」

二人の鼻と鼻がぶつかった。

「ちょっと唯人さん!今大事な所ですよ!」

美麗は頬を膨らませ、両手を唯人の頬に当て、キスをした。

「ふふっ。私のファーストキスです。」

唯人は嬉しそうだが複雑な感じだ。

「もう一回!」

唯人は美麗にキスをした。

「ふふっ。唯人さん、ちゃんとできたね。」

「なんか複雑だよ」

「ごめんなさい。とっても嬉しいですよ。」

「ははっ。良かった。」

「あーぁ。私頑張ったんですよ。だから会ったらダメだったのに。」

「美麗は頑張り方を間違えてるよ。社長も専務も美麗を認めて、美麗が俺と結婚してくれて良かったってなるように頑張りなさい。」

「はい。ごめんなさい。」

「俺も美麗に偉そうな事言えないんだけどね。美麗がいなくなってから数日間、抜け殻みたいになってたらしくてさ、あまりにふびんに見えたから、専務が口をすべらせたんだ。だから、昨日美麗の家にいったんだ。でも会ってくれなかったから会社でうなだれてた。そしたら専務が社長に俺たちの仲を認める様に直談判してくれたみたいでさ、社長が謝ってきたんだよ。それから、お前にどうしても必要な人なら、絶対に捕まえてきなさい!裏から手を回してなんだか、唯人には一番幸せになれる道を歩んで欲しい。っていってくれて、目が覚めたんだ。美麗にすぐ電話したよ。」

「社長も専務も唯人さんが大好きなんたね。」

「とてもいい人たちなんだ。美麗の件は許さないけどな!」

「ふふっ。私も二人に認めてもらえる様にがんばる!」

「そうだね。でもしんどくなったらいってくれよ。今回みたいに勝手にいなくなるのは禁止だからな!」

「はい。ごめんなさい。」

「さぁ!帰ろ。」

「うん!」

次の日が土曜日ということもあり、途中で晩御飯を食べ、二人は唯人の家に帰った。

二人は、疲れて、ソファーに座り込んだ。

「あっ・・・」

「もしかして着替え?」

「はい。」

「ははっ。お互いの家に買って置いとかないとだめだね!」

「そうですね。順番に罰ゲームしてますね。」

「確かに。じゃぁいつもの意匠用意しとくよ。」

唯人はイタズラな笑顔で笑った。


美麗と唯人はベッドに横になっていた。

「唯人さん、私達結婚するの?」

「そうだよ。そうだよね?」

美麗は起きあがり、一枚だけ着ていたシャツを脱いだ。

「えっ?ど、ど、どうしたの?!」

「私、キレイですか?」

唯人は必死に平然を装う。

「うん・・・すごくキレイだよ。」

唯人はベッドから立ち上がり、服も下着も全て脱いだ。

そして恥ずかしそうにベッドに横になり、美麗と自分に布団を被せた。

「ふふっ。なんだか恥ずかしいですね。」

唯人は優しく美麗を抱きしめた。

「温かい。落ち着く・・・落ち着かないけど。」

「ふふっ。なんですかそれ?」

「そのままの意味です。」

唯人はもう止められなくなってしまった自分を美麗に押し当てた。

「あら〜大変な事になってますね・・・まだ結婚してないから、おあずけしちゃおうかな。」

「美麗、もう無理だよ。」

唯人は美麗に優しくキスをした。

「ふふっ。優しくして下さいね。」

この日、沢山愛し合った。

幸せな夜だった。


チュンチュン。チュンチュン。

唯人は鳥のさえずりで目を覚ました。

微睡みの中、美麗を見ると、

「おはよう。」

美麗は起きていて、唯人を見つめていた。

「おはよ。」

唯人も美麗を見つめて、答える。

「唯人さん。私とっても幸せ。」

「俺もすごく幸せだよ。」

「ふふっ。お腹すきませんか?」

「うん。朝ごはん作ろうか。」

「はい。」

二人はしばらく抱きしめ会ったあと、立ち上がった。


朝食を終え、ソファーでくつろいでいると、

ブーブーブー。

唯人の携帯が鳴る。

「誰だろ?」

画面を見ると、叔父さんだった。

「おはよ、叔父さん。」

(おはよう!唯人。どうだった?白河さんは捕まえられたか?心配で心配で電話してしまったよ!)

唯人はチラッと美麗を見ると、美麗の肩に手を回し抱き寄せた。

「今ちゃんと一緒にいるよ。俺たち結婚する事になったよ。」

唯人と美麗は見つめ合い、微笑み合っている。

(良かったー!しかも、今一緒にいるなら丁度いい!昼にいつもの料亭に二人で来てくれ!)

「二人で?」

唯人は美麗を見ると、美麗は優しく頷く。

「分かった。美麗も連れて行くよ。」

(すまんな。休日に。じゃあまた後で!)

前回の事があったので、二人は少し不安だったが、身支度を整え、二人で料亭に向かった。

「ねぇ、唯人さん。今日は、何の記念日でしょう?」

「えっ?記念日?まだ出会って1年も経ってないし〜なんだろ・・・」

「正解は、婚約してから初めてこうして歩いた記念日です。毎年の今日は、ちょっとだけでもこうしてお散歩したいな。」

「なるほど。覚えておくよ。」

「ふふっ。ありがとう。」

「あっ、ここ」

唯人は立派な和風の建物を指さす。

「すごっ。さすが社長の行きつけのお店ですね!」

「うん。料理もすごく美味しよ。今日は緊張して味分からないかもしれないし、また二人だけで来ようね。」

「うん!」

二人は料亭に入ると個室に案内される。

部屋に入ると、専務も来ていた。

「良く来てくれた。さぁ座ってくれ。」

二人は上座に座らされた。

「叔父さん、何で俺たちが上座?」

「・・・」

唯人の叔父と専務は、少し黙った後、後ろに下がった。

「二人とも、申し訳なかった!」

「申し訳なかった!」

美麗は上座に座った自分と唯人に、社長と専務が畳におでこが付きそうなくらい頭を下げているのを見て、一瞬呆気に取られたが、なんだかおかしく思えてきた。

「ふふっ。」

困っている唯人の横で、美麗は微笑んでいる。

「社長、専務頭を上げて下さい。」

二人は頭を上げ、美麗を見つめる。

「すごく辛い思いをしましたが、今こうして唯人さんと結婚する事になり、私は幸せです。だからもう気になさらないで下さい。」

「わっはっはっはっ!白河さん!ありがとう!」

社長と専務は笑っている。

「そろそろ席を交代しませんか?」

美麗の提案で、4人は席を入れ替わる。

それぞれ着席すると、社長は嬉しそうに話始める。

「いゃ〜、白河さんは実に頼もしい!唯人が困っているだけだったのに、社長と専務の謝罪にひるむ事なく場を鎮めるウツワ。唯人の嫁に適任だ!白河いやっ、美麗さん!唯人を支えてやってくれ!」

「はい!もちろんです。全力で唯人さんを支えて行きます!」

「唯人、黙りっ放しじゃないか!しっかり美麗さんを守るんだぞ!」

「分かってるよ〜なんだか俺が一番悪い事になってない?納得いかないわ〜」

『ははははは〜』

笑いが巻き起こり、場の雰囲気が温かくなった所で、料理が運ばれてきた。

4人は楽しく食事をし、仲を深めることができた。

「じゃあ俺たちは帰るね。ごちそうさま。」

「あぁ、休日に悪かったな。楽しかったよ。」

唯人は美麗と店を出た。

美麗は、店を出た後、さっきまでいた部屋をチラッと見た。

社長と専務が向かい合いはなしているのが見えた。

(なんだろ?さっきまであんなに笑ってたのに、深刻そう?気のせい?)

「美麗、どうしたの?行こ。」

唯人は美麗に手を差し伸べた。

「うん。」

美麗は唯人に駆け寄り、唯人の手をとった。

二人はゆっくり歩き、帰路についた

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