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6/11

これは白河美麗、初めての恋です!

唯人が転勤して来てからの一週間、地獄の様な働き詰めの日々が続いた。

美麗は一週間働ききり、帰宅後、ベッドに倒れ込む。

「あ〜。疲れた・・・来週からは少し落ち着くっていってたけど、どれくらい落ち着くんですか?唯人さま〜!でも唯人さんじゃなかったら、ただの地獄だったから、良かったのかな・・・」

美麗はそのまま眠ってしまった。

カーテンも閉めず眠ったせいか、眩しい朝日で目が覚めた。

「あ〜最悪ぅ〜。目がさめちゃったよ。もう少し寝たかったな。」

美麗は眠ろうとしたが、今日は唯人と図書館に行く日。気持ちが高揚して眠れない。

美麗は仕方なく起きて、身支度をした。

「約束は昼からだけど、本選びたいし、早く行こうかな。いってきま〜す!やっぱり一人暮らしって寂しいな。誰もいってらっしゃいっていってくれないし・・・」

バタン。カチャ。

「でも今日は唯人さんと初デート!デート?・・・デートだよね?デートです!」

美麗はウキウキと緊張を胸に図書館へ向かう。

「あれっ?」

「あっ、おはよう。」

「部長、今日はお昼からじゃ無かったですか?」

「帰ったら、ベッドに倒れ込んで寝ちゃってさ、カーテン閉めてなかったから朝日で目が覚めちゃって。眠れなかったから早く来たんだよ。」

「ふふっ。私も全く同じです。」

(部長は私と違って、お仕事の事考えてしまったんだろうな・・・)

二人は、どんな本の話が好きとか、

この本どうですか?とか、図書館で楽しい時間を過ごし、美麗が借りる本を決めると、受付で美麗の持っている本を唯人が借りた。

「はい。どうぞ。」

美麗は唯人に本を手渡した。

(この本、私と唯人さんみたいなんだよね。この本読んで、唯人さん、急に冷たくなったりしないかな。)


運命の人は会社の上司

この本は、図書館で同じ本に手を伸ばした男女が、会社で上司と部下になる事からストーリーが始まる本だった。

二人は恋に落ちるが、大手企業の社長令嬢との半ば強制的な婚約で二人は引き裂かれてしまう話だった。

大まかに言えばそんな話だったが、二人の色々な気持ちが詰まっていて、切なく、心揺さぶられる話だった。


「白河さん、この本、どうだった?」

「えっ?ネタバレしない様に、言いますと・・・」

美麗は考える。

「好きだけど、嫌い・・・ですね。」

「はははっ、全然分からないな!まぁ楽しみに読んでみるよ。」

「はい。」

二人は図書館を出た。

「白河さん。お腹すかない?」

「はい。お腹空きました。」

「そこの店のランチが美味しいらしいんだけど、一緒に行かない?」

「はい。こんなところにお店あるの気づかなかったです。」

「俺も先週来たとき店探してたんだけど、結局駅前まで行ったんだ。専務にその話したら、教えてくれてさ。外回りがこの辺りで、時間があるときに必ず行くくらい美味しいらしいよ。なんならこの店中心にその日の予定を組むんだ!って熱く語ってた。」

「それは・・・すごく楽しみですね!」

(なんで図書館に行った話になったんだろ?あ〜。日曜日なにしてたの的な世間話か。一瞬私の話してたとか勘違いしちゃった。唯人さんにバレたら気持ち悪がられるよね。)

「うん、楽しみだ!」

(あ〜。専務となんでそんな話になったかとか聞かれなくて良かった。俺嘘とか隠し事苦手だからな〜。白河さんと出会った経緯を問い詰められた後、お弁当作ってくれたりとか、頑張ってる姿見て好きになって、しかも日曜日に図書館一緒にいく事になったって白状させられたってのは秘密にしないと。上司が自分の事好きとか知ったら気持ち悪いだろうし、セクハラだよな。)


カランカラン。

二人は店に入った。

「いらっしゃいませ。」

「部長!このお店、すっごく素敵ですね!」

「うん!料理も楽しみだ!」

二人は席に座り、料理を注文した。

「いただきます!」

「美味し〜!」

ランチを食べながら、美麗は不思議に感じていた。

こんなに会話が続いて楽しい事は今まで無かった。

コミュニケーション能力ゼロのばずの自分が楽しく会話している。

(本当に不思議。こんなにはなしていて、楽しいなんて。でも・・・今月の月一のデートはこれでおしまいか。)

「あのさ、白河さんさえ良かったら、月一ディナーはまた別でごちそうしてもいいかな?」

「えっ?申し訳ないですよ。」

「俺がそうしたいんだ。いい?」

「はい。ありがとうございます。」

(唯人さん、私の心を読んだんですか?)

その後も二人は一週間話せなかった分、沢山話をした。

二人は食事を終え、しばらくはなした後、店を出た。


「部長!ごちそうさまでした。美味しかったですね!」

「うん。すごく美味しかった!また来たいね。」

「はい!」

「ふぁ〜。」

唯人はあくびをする。

「ちょっとどこかで横になりたいな。」

「えっ!?」

(そっ!そっ!それって?ホテルですか?そういう事ですか?私は・・・今すぐ心の準備をします!)

「そこの芝生とかどう?」

(あっ、残念。残念?)

「あっ、ごめん。服、汚れるか。」

「わっ私、レジャーシートあります!毎週、芝生でお弁当食べてるので。」

「じゃあ、ちょっと横になりたいな。」

「はい!」

二人は芝生にレジャーシートを敷いた。

「ごめんなさい。レジャーシート・・・小さいですね。」

「小さいね。」

「あっ、部長横になって下さい!」

「ちょっと二人で寝転んでみない?」

「えっ?」

「二人ギリギリ寝転べそうじゃない?」

「そうですね。多分ギリギリ寝転べそうですね。」

二人は、レジャーシートで寝転んでみた。

「ギリギリ寝転べたけど、肩当たってるね・・・」

「はっ、はい。」

「嫌じゃない?」

「全然嫌じゃないです。」

「良かった!ふぅわ〜」

唯人は伸びをした。

「やっぱり芝生で寝転ぶのは気持ちがいいな!」

「はははははっ!」

美麗は突然笑う。

「どうした?なんで笑ってるの?」

「だって部長!膝から下がシートからはみ出てますよ!」

「ほんとだ!ははっ。しかもシートで寝転ぶから靴ぬいでるし!」

「部長大きいですね・・・私はレジャーシートにピッタリおさまってます。」

「ほんとだね。小さくてかわっ・・・」

「えっ?」

(今、部長かわっ?って?かわいいっていいかけた?)

「なんでもないよ〜!ちょっと寝てもいい?」

(危ない!セクハラ発言しかけたー!てかこの肩が触れている状態はセクハラではないのか?白河さん大丈夫っていったけど、嫌われたりしないかな?)

「はい。寝て下さい。」

「ありがとう。」

唯人は数分間頭の中で色々考えていたが、疲れが勝って眠ってしまった。

唯人は眠った状態で寝返りをうった。

「きゃっ!」

美麗は小さく悲鳴をあげた。

嬉しい悲鳴だ。

唯人が寝返りをうった時に、美麗に腕が乗り、抱きしめている様な形になった。

数秒美麗は固まってしまっていたが、

「あの〜。部長・・・?」

恐る恐る美麗は唯人の顔をみた。

唯人の顔が数センチの所にある。

(顔ちかっ!)

「部長、寝てるのか。」

(びっくりした〜!抱きしめられたのかと思った。幸せー!でも、いつもカッコいいのに、寝顔はすごくカワイイ!あー!このまま時間よ止まれ!)

唯人が寝ている間、美麗は眠れなかった。

眠らなかったが正しい。

疲れていたが、1秒も眠りたくなかったから、眠らない様に頑張って、唯人を見つめていた。

(あ〜顔近い。キ・・・ス・・・してみたいな。)

そんな事を思いながら唯人を見つめていると、唯人のまぶたがゆっくりと開く。

美麗は、恥ずかしくなり、空を見た。

「わー!ごめん!」

唯人は飛び起きようとするが、寝起きで力が入らず、体制をくずして美麗のうえに覆いかぶさる。

二人は見つめ合い、数秒間動けず固まってしまった。

ふと唯人は我に返り飛び起きた。

「ごめん!本当にごめん!どっか痛くない?」

「大丈夫ですよ。そんなに謝らないで下さい。」

「いやっ!謝らないと!俺ずっと白河さんに抱きついて寝てたの?」

「ふふっ。そうですね。寝心地はいかがでしたか?」

「寝心地良は・・・とてもよかったです・・・俺いつも朝起きると、布団を丸めて抱きついて寝てるんだよ。本当にごめんね。」

「部長が心地よく寝られて良かったです。だから、気にしないで下さい。」

(部長、私、部長の布団になりたいです!)

「ありがとう。お詫びに今月のディナーはとびきりのお店を探すよ。」

(良かった〜白河さん怒ってなさそうだ。まてよ、後で一人になって泣いちゃったりしないかな。俺ひどい事しちゃったな。)

「ふふっ。よろしくお願いします。」

(私は部長とディナーならファーストフードでも嬉しいんですよ。)

二人は思った事をお互い隠しながら、平然を装っていた。

「あっもうこんな時間か!日が暮れてきたね・・・明日も仕事だし、そろそろ帰ろうか?」

「そうですね。明日からもがんばらなきゃですもんね。」

「うん。俺の補佐役大変だと思うけど、白河さんが補佐役で良かった。明日からもお願いします。」

「はい!頑張ります!」

「じゃあ、送るよ。」

「えっ?部長疲れててしんどいんじゃ?」

「全然!とてもいい睡眠をとらせてもらったから。」

「ふふっ。それは良かったです。じゃあお願いしようかな。」

「うん。」

今日は唯人は車で来ていた。

助手席に美麗を乗せ、唯人は走り出した。

(いつも電車だから、唯人さんの運転姿初めて見たな。素敵。尊い〜!)

美麗が唯人をチラチラ見て幸せに浸っている間に美麗の家に到着する。

二人は少し黙って固まっていた。

離れたくないな。と二人は思っていた。

美麗は我に帰り、

「今日はありがとうございました。すごく楽しかったです!」

「俺も楽しかった!ありがとう。そのっ・・・芝生で寝てた時の事・・・本当にごめん。嫌だったらディナーとかも断ってね。」

「そんな。ダメです!・・・ちゃんとディナーはおごってもらいます!私の抱き枕代は高いんですから!」

「ははっ・・・嫌われて無くて良かった。ありがとう。」

「もぅ。大丈夫っていってるじゃないですか。」

美麗は頬を膨らませてスネてみせた。

「もう、あの件で謝るの禁止ですからね。」

「うん。ありがとう。」

「じゃあ、送ってもらってありがとうございます。本当はお茶でも出したい所なんですが、このアパート駐車場ないし、明日もお仕事ですしね。」

「そんな、恐れ多いです。今日は帰って反省致します。」

「ふふっ。よろしくお願いします。でわ。」

「うん。明日も頼むよ。」

美麗は何度か振り返りながら家に入っていった。


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