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やっぱりあった?本の呪い?

美麗と唯人は、相談の結果、結婚するまでは婚約の事は秘密にする事にしていた。

「ねぇ部長〜!」

「今私がはなしてたのに〜」

「いいじゃん。ねぇ部長?」

「あはははは。」

唯人が会社で休憩している時は、こんな風に女子社員が集まってくる。

遠目に見ていた美麗は呟く。

「あ〜ぁ。私の唯人さんなのに・・・」

唯人が美麗の方をチラッと見て助けを求めている。

美麗は、ぷいっとそっぽを向く。

(くそ〜美麗。今知らんふりしたな!助けに来てくれよ〜。あれはヤキモチ?ヤキモチなのか?カワイイな〜。)

引き続き唯人が困りながらも、女子社員とはなしていると、女子社員達の後ろから声が聞こえる。

「部長、明日の資料できましたのでご確認お願いします。」

女子社員達は怪訝そうに美麗を見ている。

美麗は気にする様子も見せず、女子社員達の間をすり抜け、唯人に資料を渡した。

「えっ?もう?仕事が早すぎで驚かされるよ。白河さん、あっちで確認するよ。行こうか。」

「お願いします。」

立ち去る二人を見ながら女子社員たちは不満そうだ。

「私達、部長となかなか話せないのに、あの子いつも邪魔して来るよね〜。」

「確かに〜。仕事しか興味ないからまわりの事見えてないんじゃない?」

「確かに〜。」

唯人は女子社員から離れた所で、美麗に話しかける。

「助かったよ。でも一回知らんふりしただろ〜。」

「そうですね。」

美麗は、自分の体で隠しながら、唯人のおしりをつねった。

「ちょっとヤキモチやいちゃいました。」

「痛いよ。ごめんって。俺は美麗以外興味ないから。」

「ありがとうございます。ぶ・ちょ・う。」

またつねる。

「勘弁してくれよ〜。」

「ふふっ。部長が助けを求めるものだから、急いで明日の資料作ったんですが、どうですか?」

美麗は仕事モードに切り替わる。

「う〜ん。作成が早くて感心したけど、完璧ではないな。ここをこうとか、あとここもこうした方が。」

唯人は仕事になると容赦がない。

美麗の提出書類は赤ペンだらけになった。

「さすがですね。部長。作りなおします。」

「あぁ。頼む。」

その日の夕方、二人は打合せが終わり、駅へと向かっていた。

「美麗が資料作成急いでくれたから、今日はこのまま帰れるね!」

「はい!がんばって良かったです!

あの〜部長。」

「もう仕事は終わりだよ。」

「うん。唯人さん。今度、花火しませんか?」

「いいなぁ!キャンプとかはどう?」

「いいですね!あまり思い出したくないんですが、こないだ人で山に行った時、唯人さんと来たかったなって思ったんです!へへっ・・・大自然の中で二人きりですね。」

「二人きりか〜誰かにいいキャンプ場聞いてみるよ!」

「お願いします!その時絶対花火しましょうね!」

「うん。花火好きなの?」

「はい!一人で公園で毎年・・・唯人さんとできたらきっともっと楽しいです!」

「よし!じゃあ明日からも仕事がんばって、休み確保しないとな!」

「部長な唯人さんに気合入ってしまうと私は恐怖を感じます・・・」

「はははっ!無理しすぎない程度にがんばってくれ。」

「唯人さん。」

「ん?」

「私、幸せです。こうやって、どんどん幸せになって、いつか家族も増えて、もっともっと幸せになるのかな?」

「そうだね。もっともっと幸せになろう!」

「はい!」

二人は明日の仕事に備えて、駅で別れて、それぞれの家に帰っていった。


唯人は駅から歩き、家の前に着いた。

マンションの前には見慣れない高級車がとまっている。

気にしながらマンションに入ろうとすると、後部座席の窓がおり、綺麗に着飾った女が乗っているのが見えた。

「唯人さん?」

女は唯人に話しかける。

「なんでしょう?ていうか、どなた?」

唯人は立ち止まる。

女は車から下り、唯人に近付いてきた。

「私を覚えていらっしゃらないの?」

「どこかで会いましたか?」

「まぁいいです・・・ごほんっ。私は西園寺風香。西園寺グループの社長の娘で、あなたに縁談を断られた者です。」

「あ〜その件は申し訳ない。」

「申し訳ないって・・・私達、あなたが出席されたパーティーで、少しお話したのよ。それから私は、あなたに恋をして、ずっと思い続けて来たのよ!」

「ごめん。覚えてない。」

「・・・まぁ、まぁいいわ。あの時私は中学生、あなたは大学生だったものね。でも今は違うでしょ?私、あなたの為に綺麗になったのよ!」

「と、言われても困るよ。俺、婚約してるし。」

「では、その婚約者とは別れて、私と結婚して。」

「ごめん。無理。俺は美麗以外は考えられないから。もういいかな?明日も仕事だし、早く帰って寝たいんだ。」

「きょ、今日の所は帰りますわ。でも、次はあなたの方から必ず私に会いに来る。覚えておいてね!」

風香は車に乗り込むと、帰っていった。

「何だったんだ?まぁいいや。帰って寝よ。」


それから何日か過ぎたある日。

唯人は、美麗と外回りを終え、会社に戻って来た。

何やらオフィスが騒がしい。

社員達はみんな電話をしている。

(そんな。今更それは無いですよ!)

(考え直して頂けませんか?)

唯人は何が起きているのか分からない。

電話をきった社員に声をかけた。

「何が起きてるんですか?」

「部長!大変なんです!下請けも、元請けも、みんなうちとの取引をやめるっていってきてて!どうしたらいいか分からないです!」

「えっ?なんで?!理由は教えてくれないんですか?」

「はい。とりあえず、取引は辞めますの一点張りで・・・」

唯人が社員とはなしていると、専務が走って唯人の所へ来た。

「ゆっ唯人くん!大変だ!」

「専務!何が起きてるんですか?」

「ちょ、ちょっと、ハァハァハァ。会議室に」

「分かりました。」

二人は会議室へ入っていった。

美麗は心配そうに会議室を見つめる。


会議室に入るなり、唯人は専務に問いかけた。

「専務、一体何が起きてるんですか?」

「うちのほとんどの取引先がうちから手を引き出してるんだよ!どうしよう!どうしよう唯人くん!」

「専務、落ち着いて下さい。

理由は?理由は何なんですか?」

「分からないんだよ!どの取引先の担当者も教えてはくれないんだ・・・」

「とりあえず、状況は分かりました。すぐに手立てを考えます。」

「唯人くん・・・頼む!僕はこんな事初めてで、どうしていいか分からないよ。」

「俺だって初めてですよ!専務も何か対策考えて下さいね!」

唯人は会議室を出て、美麗の元に駆け寄る。

「白河さん、ほとんどの取引先がうちから手を引き出してるみたいだ。理由が分からないみたいで、手のうちようがない。俺は理由を調べるから、白河さんは、手を引いてきている業者と取引内容をリスト化して欲しい!」

「分かりました。」

「じゃあ頼む!」

唯人は、足早に会社を出た。

まず、原因を調べるため、唯人は本社勤務になってから仲良くしていた取引先の営業マンを訪ねた。

「突然アポも無しにすいません。」

「いえ、来られるとは思っておりました。」

「お察しの通りです。」

「うちからは取引を辞めるという連絡はしておりません。ただ・・・未だ、社内で検討中です。何しろ、奏さんの戦うべき相手は、西園寺グループですから。」

「西園寺?どこかで聞いた事が・・・」

「それはそうですよ。奏さんは海外が長かったから日本の大手企業についてはあまりご存知ではないかも知れないですが、西園寺グループに刃向かえる企業はほとんどありません。今回の件、主導で動いているのは、西園寺風香、社長令嬢です。なかなかのやり手と聞いています。うちも西園寺とは肩を並べる大手ではありますが、わざわざ西園寺と仲違いする必要があるのか?ただ、ずっと一緒にがんばってきた奏さんの会社を見捨てるのか?という議論に終わりが見えず、動けない状況です。」

「西園寺風香・・・ありがとうございます!何故こんな事になっついるか、分かったかもしれません!」

「かっ、奏さん!?」

唯人は走り出した。

(西園寺風香、あいつの言ってた事の意味が分かった。俺から会いにくる?ふざけるなよ!めちゃくちゃなヤツだ!)

唯人は、会えるかも分からず、西園寺グループの本社ビルに急いだ。


唯人は、西園寺グループのビルの受付にいた。

「はぁはぁはぁ。あの、西園寺風香さんにお会いしたい!」

「あの、失礼ですが、どちら様でしょうか?」

「奏唯人と申します。どうしても西園寺風香に会わないといけないんです!」

「奏様ですね。伺っております。ご案内致します。」

「伺ってる?アポ取ってないんですけど・・・」

「奏唯人様という方が来られたら、部屋に案内する様にいわれておりましたので。」

「そっ、そうですか。」

(これで、嫌がらせであいつが手を回して色々したのは確実だな。)

唯人は怒りがこみ上げてくる。

トントントン。

「専務奏唯人様が来られました。」

「どうぞ〜。」

ガチャ。

「そちらへお掛けになって。」

「では、私は失礼致します。」

案内してくれた受付嬢は、退室した。

「奏唯人。来たわね。私のいった通りになったわね。」

「ふざけるなよ!お前、めちゃくちゃな事しやがって!お前一人の為に色々な人が迷惑してる。俺の会社の社員達はこのままじゃ路頭に迷う。今すぐこんな事今すぐ辞めろ!」

「うるさい!うるさい!うるさ〜い!あなたが悪いのよ!」

「意味が分からない!」

「なんで?いったでしょ?私はあなたが好きなのよ!」

「その気持ちには答えられない!」

「それじゃぁ、あなたの会社はもうすぐ倒産ね。」

「・・・」

「観念したかしら?さぁ、婚約者と別れなさい。そうすれば、全部元に戻してあげるわ。」

「・・・・分かった。」

唯人は、怪訝そうに帰っていった。


その日の夜、唯人は美麗の家の前にいた。

ピンポーン。

「はぁ〜い。えっ?唯人さん?今開けるね。」

ガチャ。

「お待たせ。」

「ちょっと話がある。入っていい?」

「話?とりあえず入って。」

唯人は、部屋に入るなり、美麗に頭を下げた。

「ごめん!何も聞かずに別れて欲しい。」

「えっ!?なんで?」

美麗は頭が真っ白になり、何も言えずにいた。

「ごめん。そういう事だから。」

唯人は、そう言い放つと、足早に帰っていった。

美麗は現実が呑み込めず、ベッドに座り、放心状態だった。


唯人は西園寺風香に電話をかけた。

(もしもし。)

「西園寺さん。今婚約者とは別れて来た。」

(そう。良くできました。明日全部元に戻してあげる。)

「頼んだ。」

(それじゃぁ明日、 プープープー。)

唯人はまだ風香がはなしていたが、電話を切り、絶望にくれ、天を仰ぐ。

「星、キレイだな。この前星がキレイな夜は幸せだったな・・・」

唯人の目から涙が流れていた。

「はぁ。帰ろう。」


次の日、朝から会社は電話が鳴り続けていた。

昨日の謝罪をしたいという連絡が何件もきていた。

社長と専務は大忙しの様子だ。

「はぁ。こんな簡単に俺の会社はかき回されてしまうんだな。唯人は、西園寺グループの恐ろしさを痛感していた。」

美麗は今日、休んでいた。

「美麗・・・大丈夫かな・・・」

唯人は心配できる立場でない自分を悔やんでいた。

唯人は淡々と仕事をこなし、帰路についた。

「はぁ。もうがんばる理由が見つからない。会社辞めようかな。」

唯人が絶望の中、自宅の前に着くと、

前に見た高級車が止まっている。

「はぁ。気付かれない様にさっさと家に入ろっ。」

「唯人さ〜ん!」

「はぁ。」

「ようやくお帰りですか。」

「お前のやった事の後始末に追われてたんだよ。」

「これからお食事でも?それとも唯人さんのお家でお食事にしますか?シェフも連れてきておりますのよ。」

「結構です。お帰り下さい。」

「そんなぁ。ようやく邪魔者がいなくなったのに。」

「邪魔者?!いい加減にしろよ。もう俺に関わるな!」

「そんな。約束が違いますわ。」

「約束?約束は守っただろ?お前は、婚約者と別れたら、全て元に戻すと言った。俺は婚約者と別れて、お前は全て元に戻した。これで終わり。もうここにも来るな!目障りだ!」

唯人は怒りをあらわにした。

風香は、初めて人から怒鳴られた様で、困惑している。

「ごめんなさぁ〜い。」

風香は泣き出した。

「泣くのかよ。勘弁してくれよ。」

「だって。だって。唯人さんの事、本当にずっとずっと好きだったの!」

「怒鳴ったのは悪い。でも、こんな事されて、好きになるわけ無いだろ?今まで全て思い通りになってきたのかも知れないけど、今回は違う。お前はもっと人の気持ちとか考えて行動した方がいいぞ。でないと、いつか独りぼっちになるぞ。じゃあな。」

「いやー!行かないでー!分かったわ!また同じ事するわよ!次の条件は私との結婚よ!」

唯人は風香に近づき、睨見つける。

「俺の今言った意味つうじてんの?もう勝手にしろよ。俺がいる事で会社に迷惑かかるなら会社は明日辞める。それから、お前一人の欲望であんな事を繰り返したのが分かれば、いくら西園寺グループでも、どうなるか分からないぞ。忠告しといてやるよ。もう会うことも無いだろう。じゃあな。」

「まっ待ちなさいよ!」

風香が引き留めるのを無視して唯人はマンションに入っていった。


次の日から会社は何事も無かったように元に戻っていた。

唯人は、社長室にいた。

「ゆっ、唯人!どういう事だ!辞表とは!」

「叔父さん。お世話になりました。俺は、アメリカに帰って適当にやるよ。」

「理由になっとらん!まっ、まて唯人!」

バタン。

唯人は叔父が呼び止めているのを気にもせず、社長室をでて、帰路についた。

「はぁ日本にくるんじゃなかった。アメリカにいた時はそれなりに平和に生きていれたのに。日本に来なければ、こんなに辛い思いしなくて済んだのに。」

唯人は真っ直ぐ家に帰り、ソファーに倒れ込んだ。


その頃、美麗は、ようやく現実がのみこめてきた様で、心が締め付けられる様な感覚を感じていた。

「ふるのと、ふられるのどっちも辛いな。唯人さん・・・私何か悪い事したかな?おしりつねったの怒ったの?会社が大変になった時私使えなかったから?」

美麗は、別れを告げられた理由が分からなかった。

「約束・・・結婚しようって・・・家族が増えてもっと幸せになれるって・・・花火は?キャンプは?・・・約束守ってよバカ唯人!」

美麗は泣き出した。

そして、泣き続け、また眠った。

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