主と従者
果てしない鍛錬
黒峰高校との練習試合まで3日。ハヤトの決意は揺るがなかった。1軍のスタメンを獲得することが目標で、彼は毎朝中野高校グラウンドをスプリントで駆け抜け、バッティングケージでスイングを磨き、守備力を高めるためにキャッチの練習に励んだ。システムのおかげでスタミナが30から32に上がり、その効果が現れ始めた。追加の回数をこなすことで筋肉は痛んだが、適応し、進歩が加速した。
(これ、想像じゃないな、とハヤトは額の汗を拭いながら思った。昔ほど疲れない。このシステム、すごいぜ。)勇気づけられ、彼はデイリーを超えてさらに努力を重ね、投球の練習をルーティンに加えた。公式戦で投げるつもりはなかったが、システムの信頼性に惹かれた。(裏切らないよな、と彼は考えた。いつか投球が役立つかもしれない。やっておいて後悔するよりマシだ。)投球はまだ不安定で軌道がブレたが、毎回少しずつ自信が積み上がり、将来への備えとなっていた。
午後が終わりを迎える頃、グラウンドは静まり、チームメイトの声が遠ざかった。ハヤトは残り、視界に浮かぶシステムの光が彼の励みとなった。
神々の見守り
星明かりの領域では、神々がハヤトの努力をさまざまな思いで見守っていた。イナリ、狐のような神は雲の上でくつろぎ、尾を揺らしながら言った。「限界を超えてるな。これが俺がシステムに込めた精神だ。」
ツクヨミ、白いローブに身を包んだ神は水晶の玉座に凭れ、冷ややかに言った。「愚かな少年だ。届かぬ夢を追い、二刀流など彼には無理がある。」
ハチマン、侍のような神は刀に手を置き、静かに頷いた。「努力自体が道を切り開く。彼の決意に力がある。」
スサノオ、嵐の隅で豪快に笑いながら言った。「ハハ!10枚の神の玉を賭けるぜ!あいつがみんなを驚かせるか見てやろう!司堂にどう立ち向かうかだ!」他の神々は警戒した視線を交わし、空気が神聖な緊張で震えた。
黒峰のブルペン談笑
一方、黒峰高校では朝の練習が熱気を帯びていた。ブルペンで、三宅ソウタがキャッチャーとしてしゃがみ、司堂セイヤがエースピッチャーとして鋭いストレートを投げ込んだ。ミットに響く音がフェンスに広がった。
三宅は手を振って顔をしかめた。「おい、セイヤ、ちょっと抑えてくれ。朝早いんだから、全力出す必要ないだろ?練習試合も近いんだぞ、覚えててくれ。」
司堂はキャップを調整し、ニヤリと笑った。「それが理由で手を抜けないんだ。あっちに強豪がいるからな。」
三宅は眉を上げ、からかうように言った。「西村か?お前、怖がってるのか?」
「うるせえ!」司堂は笑いながら言い返した。「あいつは一流だ。もしあいつを抑え込めたら、日本のトップバッターの多くも対処できる。で、愚痴るより走りを稼ぐことに集中しろよ。それで俺の負担が減る。」
三宅は笑いながら顎を掻いた。「まあ、確かに…でも、あっちのエースはどうだ?」
司堂の笑みが広がった。「鈴木か?確かに汚い投手だ。でも毎日俺と対峙してるお前がビビるなんてな。鈴木のほうが上だと言いたいのか?」
三宅は首をかしげ、挑戦的に言った。「なら証明してみろ。フィールドでどっちが上か見せてくれ。」
司堂は笑い、首を振った。「不公平だろ?お前ら、平均的な投手にもほとんどヒット打てないんだから。まぁ、1点でも取れれば俺の勝ちだ。いいな?」
三宅はため息をつき、苛立ちを込めて頷いた。「キツいな…いつも全力でやってるんだから…でも、今年はダイゴがいるぜ。」
司堂の表情が少し和らいだ。「ああ、確かに。あいつがチームを変えられるかも。でも、新入りに頼るのは少し恥ずかしいだろ。」
「いい加減にしろよ!」三宅は拳を握った。「見てろよ、俺もお前の負担を減らすからな。」
「はいはい、わかった」と司堂は笑顔で言った。「頼むぜ、ソウタ。」三宅の肩が少し硬くなり、不安が一瞬よぎった。
遠くから声がした—楠木ダイゴ、中学でトップクラスのバッターとして名を馳せた新入生だ。尊敬から司堂に忠誠を誓い、師弟のような関係が築かれていた。「先輩!おはようございます!」
司堂はちらりと見て、薄い笑みを浮かべた。「お、来たか…」
三宅は小さく呟いた。「お前、あいつに何をしたんだ?中学では自信満々だったのに、こんな従順じゃ…」
司堂は肩をすくめ、気にも留めなかった。「さあな…使えるかどうかだけが関心事だ。」
(冷たい言い草だな、と三宅は少し眉をひそめて考えた。)
ダイゴは走り寄り、丁寧に頭を下げた。「先輩、今日もよろしくお願いします。」
司堂はダイゴのくまのある目を見て言った。「おい、なんだその顔?寝てないだろ。」
ダイゴは首を掻き、気まずそうに言った。「あ、いえ…先輩の依頼で中野高校の試合を観ました。4試合見てたら朝になってて…。」
司堂の目が丸くなった。「何!?全部見ろとは言ってねえぞ!」
「すみませんでした!」ダイゴはさらに深く頭を下げた。「中野の主力がすごくて、止まらなかったんです。鈴木の投球は信じられん、西村の打撃は怪物級、藤本と秋山も一流だ。」
司堂は腕を組み、渋々頷いた。「バカ…で、どう思う?鈴木からヒット打てるか?」
ダイゴは一瞬ためらい、落ち着いた声で言った。「何度も見直しましたが、癖が読めませんでした。ただ一つ確かなのは、先輩のストレートの方が速いってことです。」
司堂は勝ち誇って笑った。「当然だ、バカ野郎。でもあの映像は去年のものだ。冬で手を抜いてないはずだ。3日後に本番だ、準備しろ。」
三宅とダイゴは決意を込めた視線を交わし、ブルペンが新たな集中力で満たされた。
決意の終わり
中野に戻り、夕暮れの空が暗くなった。ハヤトはグラウンドでストレッチをし、身体は疲れていたが精神は折れなかった。練習試合が近づき、彼の成長を試す試練が迫っていた。(3日か、と考えた。準備するぞ。)中野公園の街灯の柔らかな光が彼を呼び、次のステップへの道を約束した。




