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デスマーチ

中野高校1軍グラウンド、朝練前

朝日が昇る中、1軍チームが集まり、空気には期待と緊張が漂っていた。山田カントクは脇に立ち、鋭い視線で観察しながら、中村ハヤトと加藤リョウタが新しいチームメイトの前に進み出た。

ハヤトは軽くお辞儀をし、決意を込めた声で言った。「中村ハヤト、2年生です。外野手をめざしてます。よろしくお願いします。」

鈴木ハルトは目を細め、静かに挑戦的な思いを抱いた。(あの最後の試合がただの偶然じゃなかったって証明してみせろ。)

田中レンは腕を組み、顔をしかめた。(あんな騒がしいチビが同じグラウンドにいるなんて信じられねえ。こいつに何を見たんだよ?)

リョウタが続き、緊張しながらも決意を込めて言った。「加藤リョウタ、2年生です。ピッチャーをめざしてます。よろしくお願いします。」

チームに微妙な波紋が広がった。みんなの視線が一瞬鈴木に集まり、こっそり嘲笑う笑い声がリョウタを待ち受ける試練を予感させた。レギュラーたちの間でささやきが始まった。木村タイヨウが上杉コウキにニヤリと近づき言った。「1日で終わりだろ、この新入り。」

上杉は笑いながら眉を上げた。「厳しすぎだろ…3日は持つかもな。」

小倉ナツキはリョウタをじっと見つめ、言った。「いや、あの目見てみ。決意と闘志があるぜ…」

鈴木は小さく息を吐き、苛立ちを隠さなかった。(チッ…なんでいつもこうなるんだ? 俺がサディストじゃないよ。ついてこれない奴は置いてけぼりだ。)

秋山ショウタがニッと笑い、雰囲気を和らげた。「今年は面白くなりそうだな。」

藤本イッセイは横目で警戒しながら言った。「面白くても長くは続かねえ。ここはのんびりする時間ねえよ。」

西村ソウマの声が鋭く割って入った。「その通りだ…おい、2人とも、いつまでそこに突っ立ってるんだ? 自己紹介は終わりだ。走れ。」

ハヤトとリョウタは姿勢を正し、どもりながら同時に答えた。「は、はい、キャプテン!」

西村は小さく頷いた。「いくぞ!」

チームは一斉に「オー!」と応えた。

西村は内心で2人の姿を見つめた。(ここまで来たならな。実力で証明してみせろ…)

山田カントクは無表情を保ちつつ、心の中で考えた。(間違ってないってみんなに示せ。俺を恥ずかしめるなよ。)


ジョギング中

チームは周回を始め、足音がグラウンドに響き渡った。ハヤトはペースに乗りながら息が上がってきた。(くそっ、今日のデイリーはもう終わらせた。ちょっと疲れてきた…おい、ペース速すぎじゃね? もうほとんど走ってるぞ。)

秋山が隣を走り、ハヤトの苦しさに気づいた。「どうした? お腹でも壊したか?」

ハヤトは無理やり笑顔を作り、首を振った。「いえ、先輩、大丈夫です…ただ、あそこより強度が全然違うんで。」

秋山は眉を上げた。「あそこ? あぁ、2軍のグラウンドか。てめえら何やってたんだ? こいつはただの軽いジョギングだぜ。」

ハヤトは内心で笑顔が引きつった。(ジョギング? ぜんぜん軽くねえよ…)「あ、そうなんですか、へへへ。」

西村の声が前方から轟いた。「あと14周回! ペース落とすなよ!」

ハヤトの目が見開かれた。(何!? 14周回も!? こんなことになるならデイリーやんねえ方がよかった…でも、スタミナ上げてきてて良かったわ。)


10周回後

疲労がチームのペースを鈍らせ始めた。小倉ナツキはリョウタが息も絶え絶えなのを見て言った。「おい、新入り見てみろ。もう限界だな。」

鈴木ハルトは冷たく言い放った。「ほっとけ。俺たちはベビーシッターじゃねえ。自分のことに集中しろ。」

石川カズヤは近くを走りながら同情が湧いた。(可哀想に。あんな早くピッチャーなんて言わなきゃよかったな。)

ハヤトは前に進みながらリョウタを気遣うようにちらっと見た。(おい、リョウタ、そこで潰れるつもりか…くそ、今は他人を気にしてられる場合じゃねえ。俺も限界近いし。まだ何周回残ってんだ?)

リョウタは歯を食いしばり、心の中で闘志を燃やした。(くそっ、ここで情けなく見せられねえ。ようやくここまで来たんだ。今度はここにいる価値があるって証明する番だ。)

藤本イッセイは新入り2人に並び、息を切らしながらも落ち着いた声で言った。「おい、新入り2人。コツを教えてやる…慣れるにはとにかくやり続けるしかねえ。死ぬまでやれ。止まったら脚が諦めるからな。」

小倉は頷き、苦笑いを浮かべた。「昔を思い出すな…本当に悪夢だったぜ。」

田中レンは歯を食いしばり、過去を振り返った。(そう、くたばれ! この地獄を俺は骨身に染みて学んだ。いまだに慣れねえよ。)


ジョギング終盤

疲れがチームを襲い、ペースが落ち、みんなが限界に近づいていた。西村ソウマの声が鞭のようにはじけた。「残り2周回! 全力ダッシュだ!」

ハヤトとリョウタは驚いた視線を交わし、心の中で同時に叫んだ。(何!? 無理だろ!)

チームは一斉に走り出したが、ハヤトとリョウタはすぐに遅れ始めた。彼らは限界まで全力で走ったが、筋肉が焼けるような激痛で体が引き裂かれそうだった。

西村の叱咤が空気を切り裂いた。「それが全力か? 2軍のグラウンドにジョギングでもして戻れ!」

その言葉に急かされ、ハヤトとリョウタは歯を食いしばり、少しペースを上げた。叫び声を上げて自分を鼓舞したが、最終周回で体が限界を迎えた。

ハヤトの頭にシステムの通知が響いた:

5km/5km 達成

報酬:スタミナ+1

ハヤトは心の中で安堵した。(絶妙なタイミングだ。必要なブーストだ! これならなんとかいけるかも。)

一方、リョウタは完全にペースダウンし、頭を垂れてぼんやりと走っていた。ハヤトは前を向いていたため、リョウタが大きく遅れているのに気づかなかった。チームの他のメンバーはすでにフィニッシュし、疲れを癒すためにストレッチを始めていた。

ハヤトがゴールに近づいた時、後ろを振り返ってリョウタがいないことに気づき、驚いた。少し確認しようとすると、遠くに一定のペースで近づく人影が見えた。

その人影がリョウタに近づき、後ろから声をかけた。「それでピッチャーになれると思うのか? 諦めとけ。」

リョウタは聞き慣れた声に我に返り、ゆっくり頭を上げた。「…鈴木先輩…」

鈴木ハルトは軽やかにリョウタを追い抜き、言った。「ピッチャーに一番必要なのはスタミナだ。それが限界なら、他のスポーツでもやれ。」

そのレベルの差にリョウタは衝撃を受けた。(これがトップ選手に必要なものか…全く別次元だな。普段何周回やってるんだろ。)

ハヤトは15周回を終え、膝に手をついて荒い息をついた。それでもリョウタを励ました。「頑張れ、リョウタ! あと少しだ!」

リョウタは全力を尽くしたが、意識が薄れ始めた。目が閉じかけ、足が地面に引っかかり、ついに倒れ込んだ。

チームの遠くからのざわめきが消え、ハヤトとリョウタは耐久と野心の岐路に立った初の1軍試練が新たな決意を刻んだ。

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