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一軍の門

中野高校・山田カントクのオフィス、朝

山田カントクは椅子に寄りかかり、目の前に立つ2人の若者を見据えた。「井上カントクから状況を聞いてると思うが、改めて1軍入りおめでとうと言わせてくれ。」

中村ハヤトと加藤リョウタは揃って頭を下げ、敬意を込めて口を揃えた。「ありがとうございます! よろしくお願いします!」

ハヤトの頭に柔らかな音が響き、新しい通知が現れた:

称号獲得:ベンチ入りメンバー

ブースト:集中力+2

システム:今装備しますか? Y/N

ハヤトは少し眉を寄せ、心の中で考えた。(ちょっと微妙だなこれ。けどルーキーファイターよりはマシか…)心の中で「Y」を選び、頷いた。

山田の声がハヤトの思考を切り裂いた。力強く、容赦なく。「まだ俺に感謝するのは早いぞ。確かにここまで来たが、それがチーム入りした意味じゃない。今はお前たちが門の前に立ってる状態だ。その門をどうやって壊して中に入るかは、お前たち次第だ。」

ハヤトとリョウタは一瞬目を合わせ、決意を宿した視線を交わし、頷いた。

ハヤトのシステムに新たなクエストが表示された:

新クエスト解除:レギュラーになる

報酬:称号:レギュラーメンバー

ブースト:???

(また称号か。どんなブーストが来るのかな、とハヤトは胸にわいた好奇心を抑えきれなかった。)

山田は話題を変え、ビジネスライクな口調で続けた。「とはいえ、今日からここで練習を始める。もしお前たちに実力があると認めれば、試合に出して実力を試す機会を与える。質問はあるか?」

ハヤトは内心で自信が湧き上がった。(システムがあるなら心配なし。ステータスを磨き続けるだけだ。)

リョウタは少しためらいながら手を挙げた。「すみません、カントク。鈴木ハルト先輩以外にピッチャーはいらっしゃいますか?」

山田の表情は変わらず、淡々と答えた。「はっきり言って、今は鈴木ハルトだけだ。」

リョウタの目が希望に輝いた。「じゃあ、俺がすぐレギュラーピッチャーになれるってことですか?」

「誰がお前がピッチングすると言った?」山田は鋭く言い返した。「お前たちをここに呼んだのは、実力を証明するためだ。ピッチングしたいなら、それを見せろ。」

ハヤトは首を傾げ、懸念を口にした。「でも、鈴木ハルト先輩が負担で怪我しやすくなりませんか?」

「新しいピッチャーを探さないとは言ってない」と山田は落ち着いた声で訂正した。「ただ、ポジションを勝ち取る必要があるってことだ。ピッチャーに限らず、全ポジションでな。」

リョウタはさらに追及し、苛立ちが滲んだ。「じゃあ、なぜ他のピッチャーがいないんですか? 予選がもうすぐなのに。本当にそんなに難しいんですか?」

山田はため息をつき、珍しく表情が和らいだ。「まあ、みんな諦めたからな。責められんよ。すぐ分かるさ。」

リョウタは心の中で考えた。(なぜ諦めるんだ? 鈴木ハルト先輩と一緒に練習できるなんて最高のチャンスなのに。)

「他に質問がなければ、俺の話は終わりだ」と山田が締めた。「グラウンドに行って他のメンバーと会え。秋山ショウタが案内してくれるはずだ。」


中野高校1軍グラウンド、朝

ハヤトは整ったグラウンドに足を踏み入れ、かつての空き地とは比べ物にならない光景に目を奪われた。「こっちは本物の野球場だな。あそこの空き地とは大違いだ。」

リョウタも頷き、周囲を見渡した。「うん、ようやく本気で野球をする感じがするな。」

突然、好奇心に満ちた声が割り込んだ。「へえ、本当にそんなにひどいのか?」秋山ショウタがニヤリと笑いながら会話に飛び込んできた。

ハヤトとリョウタは顔を見合わせ、言葉を失った。

秋山は笑いながら手を振った。「悪い悪い、邪魔しちまった。俺は秋山ショウタ、キャッチャーだ。試練試合で対戦したけど、今日が初の正式な顔合わせだな。もう名前は知ってると思うが。」

ハヤトとリョウタは軽くお辞儀した。「おはようございます、先輩。中村ハヤト、外野手です。加藤リョウタ、ピッチャーです。よろしくお願いします。」

「そんなに丁寧にしなくていいよ」と秋山は笑いながら手を振った。「野球やるためにここにいるんだから。」

ハヤトとリョウタは頷き、少し緊張が解けた。

「さて」と秋山が切り替えた。「朝の練習メニューを説明するよ。まずグラウンドを一周ジョギングして、ストレッチ、キャッチボール、ポジション別ドリル、打撃練習、短距離ダッシュ、最後に筋トレだ。放課後の練習は似てるけど長め。時間に余裕があれば、施設を自由に使っていい。質問はあるか?」

ハヤトは内心で肩をすくめた。(2軍の練習と大差ないな。なんとかなる。)「シンプルで分かりやすいです。」

「俺もOKだよ」とリョウタが頷いた。

「じゃあ、中に入ろう」と秋山がグラウンドの方を指した。「みんな準備できてると思う。」

中に入る瞬間、ハヤトとリョウタはレギュラーたちの存在感に圧倒され、突然重い空気を感じた。

ハヤトは息を詰まらせた。(うわっ、空気が一気に変わった…本当にここにいるんだな。)

リョウタは一瞬手を握り潰した。(くそっ、急に緊張してきた…今怯む時じゃない。鈴木ハルト先輩に良い印象を与えなきゃ。)


中野高校1軍グラウンド内、練習前

レギュラーたちの間でざわめきが広がった。

木村タイヨウは新入りをちらりと見て呟いた。「2軍上がりの奴らが来たのか?」

上杉コウキは考え込むように頷いた。「そうみたいだね。」

小倉ナツキは少し眉を寄せた。「ピッチャーが上がるのは分かるけど、もう一人は…」

石川カズヤは肩をすくめた。「確かに。山田カントクが何を見たのかな。」

田中レンはニヤリと笑い、辛辣に言った。「何もね。そのチビはしつこいだけだ。」

ハヤトは顎を固くした。(確かにお前たちについて話してるな。)

鈴木ハルトが前に出て、堂々とした態度で口を開いた。「他人の心配より自分を心配した方がいい。こいつらは見学に来たわけじゃないぞ。」その言葉に一瞬の静寂が訪れた。木村は気まずそうに目を逸らし、小倉は小さく呟いた。「確かにその通りかも。」田中は鼻で笑ったが、ニヤけが消えた。

リョウタは鈴木を見つめ、心臓が早鐘を打った。(あの人だ。目の前にいる…)

藤本イッセイは軽く笑い、気にする様子もなく言った。「つまり、いつベンチにいるか分からないってことか。俺は平気だけどね。」と笑い声を上げた。

山田カントクが現れると、ざわめきは止んだ。

西村ソウマが鋭く叫んだ。「集合!!」

選手たちは素早く山田の前に集まった。

「朝だ」と山田が落ち着いた声で始めた。「見ても分かる通り、新顔がいる。今日の朝練前に、新しいメンバーを歓迎してくれ。中村、加藤、こっちへ来い。」

「はいっ!」ハヤトとリョウタは揃って答え、決意に満ちた足取りで前に進んだ。物語はここで終わり、彼らの1軍への旅が本格的に始まった。

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