第2話 森の中でおやすみ
廃墟の街ファレサを去ってから、3時間。
街道の先にある森を僕とグレンは歩いていた。
転んだときのケガは、グレンに手当してもらったおかげでそこまで痛みが広がることはなかったため、すんなり歩くことができた。
辺りはめっきり暗くなっているはずだが、この森の中は何故か少しだけ明るい。
森に群生している木々の隙間からは真っ黒い色しか見えないから辺りはきっと夜だと思うのだが。
だが、さすがにあんな事があった上に3時間も、しかも慣れない初めての道を行くのだからもう疲労が限界だ。
一体どれだけ歩けばいいんだろうか。
少しだけ不安になった、そんなときグレンの口から「よし、ここらで休むか」と嬉しい言葉が聞こえてきた。
が、一つだけ思ったことがある。
「けど、師匠。こんな森の中で、危なくないの? ほら街道よりここって暗いから。魔物とか、動物とか襲ってこないのかな?」
「お、よく気づいたな。確かに何の対策もしてなければ、こんなところはやつらの狩場と同義だ。だが、リン。木の上の方を見てみろ」
グレンはそう言って木の上の方を指さしたので、見上げてみると枝の先に青白く輝く木の実がなっていた。
他のところも見渡すと、同じように青白い光が見える。
下ばかり見ていて気づかなかったが、これがこの森が夜でも明るい理由なのだろう。
「あの実は魔除けの実って言って、その名の通り魔物を遠ざける効果を持っているんだ。しかも、灯りにもなるから、旅をするときはこういう森を通ると安全ってわけだ」
なるほどと、僕は深く頷いた。
やはり世界には僕の知らないことがたくさんあるのだと胸がグワァーっと広がるような心地よい気持ちになった。
きっと今の僕は今まで以上に目を輝かせていたのだろう、グレンはぷっと吹き出しながら僕の頭をガシガシ撫でた。
「それじゃ、飯の用意と寝床の用意をしよう。リン、手伝ってくれ」
「うん!」
僕はグレンに旅の際に行うご飯の用意と寝床の用意の方法を教わり、さらに知らないことへの探究心をくすぐられた。
そして準備が終わり、焚き火を二人で囲み、グレンの持っていた干し肉をもらいがぶりついた。
こんなに美味しいと思ったのはいつぶりだろうか。
食べる手が止まらなかった。
その間も、グレンは僕の様子を見て微笑んで色んな話を分かりやすく教えてくれたのだ。
そして食べ終わる頃、僕は今日の疲れの影響でウトウトし、いつの間にか眠ってしまった。
明日はもっと色んなことを知りたいなと、僕は思った。
☆☆☆☆☆
「――お、寝ちゃったか。よっと」
今日色んなことがあって疲れたであろうリンを起こさないように抱えながら、一緒に用意した寝袋へと入れてやった。
魔除けの実の話の時もそうだったが、こんなに笑うと可愛いやつだったとは。
「そりゃそうか、まだ子供だもんな」
きっとこいつには親も手本となれる大人もいなかったはずだ。
だから俺がせめて手本になれるようにしないと。
「だが、あの魔物……ケルベロスだったか。転んで、追いつかれてしまったとはいえ、それまでは逃げ切れてたってことだろ? こんなちっちゃい体でそんな芸当を……」
化け物と言おうとしたが、俺は口を閉じた。
今のリンに化け物だなんて口が裂けても言えやしないからだ。
だが、きっとリンは将来俺なんかよりも強くなれる。
そんな気がする。
それを思うと今から楽しみだ、だが、今テンションを上げるわけにはいかない。
「起きちまうからな」
俺は焚き火の火を消してそぉーっと寝袋に入る。
「おやすみ、リン」
当たり前だが返事はない、俺はすぅーっと目を閉じ、眠りについたのだった。




