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7 天才料理人、料理を作る

「へい、お待ちどうさま!」


そう言って出したのは肉団子の甘酢餡かけ(白ご飯付)




え?


ミートボールはスエーデンの料理で中華料理じゃない?



いいんだよ


中華料理屋で出しているからな!




それに審査員だってオレに期待してない


いや番組を見ている視聴者だってそうだろう


みんな中華の名人が勝つところが見たいんだよ




・・・とんだ噛ませ犬だな



でも審査員はきちんと残らず食べてくれたから問題なし


オレの料理人としての体面は保たれた(はず)




モンマンタイ、だ


多分、だけど







<審査員目線>



最初はなんだこれ?、と思ったね


だってただの肉団子だもん


中華料理だっていうのならフカヒレだとか燕の巣だとか珍しものを色々期待した


ところがお弁当のおかずとして有名というか、食べ飽きたと言って良い肉団子


料理対決で出てくる料理じゃない






おまけに白ご飯付き


完全に家庭料理と言って良い


・・・何考えているんだ?と言いたい




まあ挑戦者はフレンチが専門だっていうからな


中華料理がテーマだとちょっときついのかもしれん






でもそこはグルメリポーターとしての意地がある


たとえどんなに普通の味でも絶賛する自信がある


番組を盛り上げるためのテクニック、と言ってもいいだろう




伊達に何年も審査員やグルメレポートをしていないんだよ




「美味しそうだね」


内心とは裏腹に笑顔で言って箸で肉団子一つ摘まんで口に入れた




入れて数回咀嚼した後、コメントをするのが一番見栄えが良い


早すぎず、遅すぎず、視聴者が欲しいと思うタイミングで言うのが大事なのである


たとえ普通の味でもいつも通り絶賛しよう


そう思っていたのがあっさり崩れた



本当に美味かったのだ



口に入れた途端、肉団子に絡まっていた甘酢餡が舌に直撃した


ケチャップの甘さと酢の酸っぱさのバランスが絶妙だった


思わず口を手が塞いだ





なんで口をふさいだのか、だが後になって気が付いた


口の中から美味しさが逃げ出さないようにするためだという事に




思わず手が出る程、美味しかった





まあ失態といえば失態だが、そんなに気にするほどではない


よくあるリアクション、で乗り切れるはずである


このまま流れで失態をなかったことにしよう


そう言う事にした




だから餡を味わうのを止めて肉団子を咀嚼した


多分どこにでもある挽肉を丸めただけのもの


そんな先入観があった





だが実際に咀嚼して後悔した


考えが間違っていた、と





この肉団子、マジで美味い


そう思った




外側は油で揚げたおかげでカリっとしていた


中はきちんと火が通っていて噛めば噛むほど肉汁があふれ出てきた





そして挽肉の中に入っている筍だとか人参だとかのみじん切りやコーンがアクセントとなっている



よくもこんなに小さい肉団子にここまで手を加えることができたものだ、と感心した




気が付けばコメントせずに白ご飯が盛られた茶碗を左手に持ち、一心不乱に食べていた




肉団子、ご飯、肉団子、ご飯、肉団子、ご飯、・・・


ひたすら食べ続けるオレだった





食レポもせずにガチで料理を食べていた




こいつが本当に美味いものを食べた時はこうなる


それが視聴者にバレた瞬間だった





つまりは今までの放送で披露したリアクションはすべて演技なのがバレた


まあ演技でもいいのである


バレなければ、の話




もっとも今回の一件でバレてしまった


グルメリポーターとしてのキャリアが死んだことに気が付くのはもう少し後のことだった

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