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1 天才料理人、ラーメンを食べに行く

ラーメン○○亭


冗談のような店名だが本当にあるから驚きだ


さらに驚きなのは行列ができるほどの超有名店だったりする


・・・美味いラーメンの開発が忙しくて店名を考える時間がなかった、とネットでは話題になっていたな(笑)




という訳で今日は実際に食べるために○○亭に来た


というかお昼前の11:30だというのにもうすでに店内は満員で外に30人ほどの行列ができていた


・・・世の中、暇な人間が多いんだな





まあ最近ではスマホというものがあって、時間を潰すのに昔ほど苦労はしない


だから皆並ぶのだろう




もっともオレは文庫本持参だ


読書は心を豊かにするんだ


だからネットサーフィンするくらいなら本を読んだ方が良い


会社に入って1日目に「退職します」なんていう人間になってもいいのなら止めないけどな




とまあ文庫本を読み始めて約50分後、ようやく店内に入れた




券売機で一番人気のラーメン ~そのへんは事前に調べててきた~ の券を買い、カウンター越しに店員に渡す


そして待つこと5分




「おまちどうさま」


注文のラーメンが出て来た




両手を合わせて、心のなかで「いただきます」を言う


昨今では食前の感謝の言葉を言うだけで驚かれるからね


でも言わないという選択肢はない


という訳で妥協したんだよ




・・・今後、日本人の和の心はどうなるんだろうね(涙)











<料理人目線>



「ねえ、あれ、海原匠じゃない?」


客席からそんなヒソヒソ声が聞こえてきた




視線をたどってみると本当に海原匠がいて驚いた





うちのようなラーメン屋にくる人じゃないだろ!?


マジで思った




海原匠といえばこの業界では知らない人間がいないというほどの有名人だ


大学卒業した後に料理人の世界に入ったかと思ったらあっという間に三ツ星のレストランの料理長にまでのし上がった逸材




曰く、天才


曰く、和洋中どれもいけるオールラウンダー


曰く、料理対決では無敗


曰く、中学卒業と同時に修行するのが常識な和食界からは蛇蝎のごとく嫌われているが実力で叩きのめした


曰く、テレビ番組で食レポしようとしたタレントがあまりの美味さに声がでなくて放送事故になった


との数多くの伝説が飛び回っている




そんな有名人をほかっておくメディアはいない


テレビに雑誌にニュースにと海原匠本人の映像や写真は世の中にあふれることとなった


どこに行っても話題になるという有名人



昔の陳〇一だとかと同じだと思ってくれればよいと思う




そんな有名人だが今は三ツ星レストランを副料理長スーシェフに譲って、隠れ家的なレストランをやっているらしい


もっともこれも噂で誰一人そのレストランに行ったと言う人間が居ない


いや本人が何やっているかすらも聞こえてこない


一説には引退したとも言われている





そんな有名人がうちのような独立系のラーメン屋に来たのだからビックリした


優雅にフレンチを食べている姿しか想像がつかないからな




もっともそれはお客達も同様みたいで驚きの表情で海原匠がラーメンを食べるのを見ていた


一部の強者はショックから立ち上がりスマホでパシャパシャ写真を撮っていた


・・・すさまじいメンタル強さでびっくりだよ









海原匠しゅじんこう目線>



まず最初にレンゲでスープを掬って飲む


やはり最初の一口はスープだろう


なにせラーメンの命だからな




飲んでみて思った


美味い!



今はやりの豚骨スープに醤油を入れてあっさりに仕上げた系?


濃厚な豚骨と脂がガツンと来る


でもそれを和らげる醬油味


重さと軽さという事なるジャンルを兼ね備えたと言って良い





うんいい仕事している


早く言えばそう言う事




スープの次は麺だ


麺にスープを絡めて一口食べる



細い縮れ麺ゆえにスープが絡みやすい


麺に適量のスープが絡んでいる



濃い味のスープと味が薄い麺のコラボレーションがいい





スープだけでもだめなのです


麺だけでもだめなのです


両方が必要なのです


そう言う事




黙々とラーメンを食べていると同じ味なので少し飽きがきた


そこで付け合わせのもやしとナルトを食べて舌をリセットする



麺、麺、もやし、麺、ナルト、麺、麺、スープ、煮卵、麵、麵、麺、もやし、スープ、麺、麺、板ノリ、・・・




飽きが来ないようにローテーションを考えて食べた


そしてスープの一滴も残さず完食



ごちそうさまでした


手を合わせて心の中でそう言った








<店主目線>



「あ、あの!」


海原匠が食べ終わり、両手を合わせて少しお辞儀をしたところで声を掛けた





多分もう二度と会う事はないだろう


だから今聞けるうちに聞いておかないと


その思いから思わず声が出た




「うちのラーメンはどうだったでしょう?」




まさにドキドキの瞬間


酷評?


賞賛?


どっちだろう




海原匠の酷評で店が潰れたという噂も聞く


だから聞かないという手もあった


だがどうしても自分が人生をかけて作ったラーメンの感想を聞きたかった


ドキドキしながら返事を待った



他の客もラーメンを食べずに注目している


そんな中、海原匠が言った



「美味しかったです」



やった!、と思ったね





他の客も笑顔で


<パチパチパチ>


と拍手をしてくれていた





ここで止めればよかった


だが調子に乗って思わず聞いてしまった


「何点でしょう?」





・・・後悔先に立たずとはよく言ったものであると後になって後悔した

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