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偽りの告白と、俺と私の十日間リフレイン  作者: カムナ リオ
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93/100

第93話「大切な人?」

「あんた、八神君と別れちゃったの?」


 何の脈絡もなく、姉が突然心乃香に尋ねてきた。


「……え?」

「だって、八神君、全然家に来なくなっちゃったじゃない?」

「あれは、勉強のためであって、元々付き合ってなんかないけど」

「は⁉︎」


 姉は座っていたソファーから、勢い良く身を乗り出した。


「いやいやいや! 嘘でしょ⁉︎ マジ付き合ってなかったの?」

「始めに、そう言ったと思うけど」


 心乃香は、夕飯で使うサヤエンドウの筋取りをしながら、淡々と答えた。


「嘘……あんた八神君のこと、何とも思ってなかったの⁉︎ 八神君の方は絶対、あんたに気があったでしょ?」


「八神がそう言ってたの?」


 姉は信じられないと、顔を片手で覆った。


「言わなくたって分かるでしょ? 何とも思ってなかったら、受験の年の夏休み中ずっと、つきっきりで勉強教えに来ないでしょ⁉︎」


「ああ。それは私が頼んだからで……」


「頼む程、仲が良かったってことじゃないの?」


 「はあ……」と心乃香は説明が面倒くさくなった。八神との不思議な関係を、上手く説明できる気がしない。


「仲が良かった訳じゃないよ。なんか、流れというか……他に頼れる人も居なかったし」


「は? ……よく分かんないけど、引き受けてくれたんだから、あっちはそれなりに、思ってたんじゃないの?」


「うーん。上手く説明できないけど、なんて言うか、八神は贖罪として引き受けたんだと思う」


「贖罪? ……って、あんた八神君になんかされたの⁉︎」


「まあ、色々あったんだよ……」


 心乃香は、これ以上姉に突っ込まれる前に自室に逃げたかった。もう全部終わったことなのだ。


「ちょっと! 何されたの⁉︎ あんた、まさか……」


 姉がいよいよ物理的に迫ってきた。


「ちょっ、肩掴まないでよ! サヤエンドウのスジが……」


「そんなの良いから‼︎」


 はあっと、再び心乃香は溜め息を吐くと、姉を睨んだ。


「何、想像してるか知らないけど、絶対お姉ちゃんの考えてるようなことじゃないから!」


「じゃあ、何なのよ⁉︎」


「……」

 

 これは適当に誤魔化しても、トコトン突っかかってくるパターンだと、心乃香はウンザリした。早く夕飯の手伝いを終えて、この場から立ち去りたい。


「……中二の頃、私、あいつに告白ドッキリに嵌められそうになったの」


「……は⁉︎ 何それ⁉︎ 嵌められそうにって何よ⁉︎」


「嵌められる前に、返り討ちにしてやったけど」


「……何それ……八神君にそんなことされたの? 信じられない、そんなことするようには……」


 はんと、心乃香は鼻で笑った。


「……お姉ちゃんの目は節穴だよ」


「でも、それ中二の頃でしょ? 八神君が来てたのって、中三の夏じゃない?」


 その空白の一年に関しては、とても説明できない。


「そのお詫びに、勉強教えに来てたって言うの?」


「まあ、そう言うこと……」


 姉は完全には腑に落ちないようだが、何とか納得したようだ。


「でもな……あんたへの態度見てると、とてもそれだけに見えなかったけど。大体あんた、八神君のこと返り討ちにしたんでしょ? だったら、結局告白ドッキリされてないってことじゃない?」


「……うっ……まあ……ね」


 心乃香は、痛い所を突かれたと思った。その態度を姉は見逃さなかった。


「そんな相手に、勉強教えてもらおうとするなんて、あんたも結構悪女だね?」


「いや……だからそれは、他に頼る相手が居なかったから……」


「仲のいい友達も作らないあんたが、それだけ八神君のこと、信頼してたってことじゃない? 確かに、八神君が実際あんたのことどう思ってたか分からないけど、それ、あんたにとっては、大切な人ってことでしょ?」


「え……」


 心乃香は、自分の気持ちに、急に名前を付けられて戸惑った。そんな風に考えたことが、なかったからだ。

 


つづく

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