第76話「三周目〜縁結びの御守り〜」
――四カ月後
「少し肌寒くなってきましたね」
斗哉は急に後ろから声を掛けられて、ビックリした。
「夏からずーと、いらしてる。前に熱中症になりかかって、フラフラしてた学生さんでしょ?」
斗哉は以前、「五十嵐 陸」が消えた時に学校を早退し、真夏の神社を探索をしていて、倒れかかって、この神社の神主に、介抱してもらったことを思い出した。
「あ! ……あの時は、ありがとうございました!」
ハハハと神主は朗らかに笑った。
「前の時も、熱心に何か探しておったみたいだが、探し物は見つかったのかね?」
「いえ……それはもう……見つからない、かな……」
神主は、斗哉のその様子を見て深くは探らず、斗哉が手に握っていた、あるものに気が付いた。
「それ、うちの神社の御守りですな」
「え⁉︎ あ、はい……」
「その桜貝の御守り、限定販売だったんですよ。手に入れたなんて運がいい」
「はあ……そうなんですか?」
「もしかしてここに毎日来てるのは、その御守りの片方を持ってる、相手のことでですかな?」
「え⁉︎」っと斗哉はその問いにビックリした。ハハハと神主は再び笑った。
「毎日ここに来る貴方を見ていると、『百日詣』を思い出しますよ」
「百日詣?」
「『御百度参り』と言った方が馴染みが良いですかな? 神様に願いを聞いてもらうために、神社で百回お参りをする風習ですな」
「でも、お参りするだけなんて……祈るだけなんて、何だか他力本願ですね。オレはできることがあるなら、何だってしてやりたいのに……あ、いえ、すいません! ここ神社なのに‼︎」
「ハハハ! いいですよ、そんなこと。……でも、神に縋りたいくらい、貴方には、どうしようもできない願いがありそうだ」
神主は斗哉を静かに見つめてきた。その瞳の前では、偽ることなどできないと斗哉は思った。
「オレ……もう一度、どうしても会いたい人がいるんですけど、だけどもう会えないんです。……でも、会いたい……それでも願ってたら、会えるんですかね……」
斗哉はそう言葉にして、泣きそうになった。
「もしかして、その御守りを片方渡した相手ですかな?」
「え⁉︎ ……あ、そうです。なんで分かったんですか?」
神主さんはニヤッと、得意そうに微笑んだら。
「これでもうちは『縁結び』の神社です。その片方を持っている相手も『貴方に会いたい』と思っているなら、いつかきっと会えます」
「あ……いや、あっちがどう思ってるかは。大嫌いって言われたし……」
「ふむ……大嫌いですか。それはとても強い『感情』ですな。そんなに嫌われていると……」
「それは、その、オレが悪いんです。嫌われるようなことしちゃったんで……」
「全ての『情』は『愛情』の一部なんです」
「え?」
斗哉には、その言葉に聞き覚えがあった。神主は静かに微笑んだ。
「亡くなった母が言っていた言葉です。『0』からは何も生まれませんが、『情』があるなら、まだ脈ありですな!」
「……そう……ですか?」
「貴方がその相手を想っている限り、希望はありますよ。諦めなければ、その御守りが必ず、貴方たちの縁をお助けします。一度結ばれた縁というのは、そうは簡単に切れないのです」
斗哉は自分の単純さに呆れつつも、その神主の言葉を、どうしても信じたくなった。
(ヤバイ……オレ、宗教とかに簡単に引っかかるタイプかも……)
***
如月心乃香は、死んだわけではない。
あの時の、黒猫の言葉を思い出す。自分が忘れなければ、本当の意味で彼女は死なないはずだ。
彼女は一度この世から消えて、そして戻ってきた。もう一度同じことがあったとしても、おかしくはない。
可能性はゼロじゃない。
でもそれは「希望」という名の呪いだと、斗哉は思った。
きっと希望なんて持たない方が、楽になれる。そう言った意味では「希望」とは「呪い」と同義ではないだろうか?
……それでも、たとえそれが呪いだとしても、斗哉はその「希望」を諦めることができなかった。
つづく
「面白かった!」「続きが気になる、読みたい!」「今後どうなるの⁉︎」
と思ったら、下にある☆☆☆☆☆から、作品への応援お願いいたします。
面白かったら星5つ、つまらなかったら星1つ、正直に感じた気持ちで、もちろんかまいません。
ブックマークもいただけると本当に嬉しいです。
何卒よろしくお願いいたします。




