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【書籍化&コミカライズ化!】貴方に未練はありません! 〜浮気者の婚約者を捨てたら王子様の溺愛が待っていました〜  作者: 水垣するめ
二章

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59話

 パーティーの翌日、学園にて。

 ミシェルはまるで昨日のプロポーズの一件がなかったかのように、いつも通りに振る舞っていた。


「セレナ嬢、今から昼食ですか?」


 ただ一点、先日までのミシェルとは違う点があった。

 それは今まで以上に距離が近くなっていることだ。昨日のことを受けて私はできる限りリリスとくっついたりしてミシェルのアプローチをかわしている。しかしミシェルは今や四六時中アプローチのようなものを仕掛けてくる。そういう偶然の場面の積み重ねで、学園の生徒のなかで私たちの関係は余計に噂されている。


 昨日あんなことがあったのに変わらず話しかけてくるのは、さすがは幼い頃から鍛えられてきた王族なだけはあるというべきか……。


「私は今からリリスと食事をとるつもりなので……」

「では、私もご一緒させてください」


 遠回しに遠慮したつもりだったのだが、ミシェルは恐らく意図的にとぼけて、私についてこようとする。


「どうして……」

「説明が必要ですか?」


 ミシェルはニコッと笑みを浮かべ、聞いてくる。

 周囲で聞き耳を立てていた生徒たちは色めき立った。


「ミシェル様がセレナ様にアプローチを!」

「積極的なミシェル様も素敵……!」


 ミシェルと一緒に昼食をとるわけにはいかないので、私はキッパリと断ることにした。


「ミシェル様とご一緒する必要がわからないんです」

「想いを寄せている女性と、一秒でも長く一緒にいたい、というのはおかしなことでしょうか……」


 私と一緒に昼食をとることを断られたミシェルは、切なそうに笑った。

 客観的に見て、顔が整っているミシェルのそんな表情は破壊的なほど魅力的だろう。普段は隙のないミシェルが突然ふと見せるその幼い顔は、普通は思わず守ってあげたくなる庇護欲をそそるはずだ。


 ミシェルとの一連の騒動を知らない人が見れば、恋に落ちてしまいそうな表情に、周囲の令嬢のなかには卒倒しそうになっている子もいた。

 だけど、私にはあまり通じなかった。ミシェルが心の内で何を考えているのか得体が知れなかったし、そもそも私にはノクスという婚約者がいる。やたらめったら美貌を振りまいてくる相手が身近にいるのだ、ある程度の耐性がついていた。


「申し訳ありませんが……」

「その通りだ」


 私が首を振ったところで、横から割り込んでくる人間がいた。


「ノクス様」

「今日は、俺と一緒に食べることになっている」


 そこにいたのはノクスだった。どうやら昼休みが始まった瞬間、こちらに来たようだ。


「おや、ノクス。あなたは生徒会の仕事があるのでは?」


 突然のノクスの登場にもミシェルは動じた様子を見せず、問い返す。


「生憎だが、もうすでに朝に終わらせてきた」


 するとノクスは私の肩を掴んで……抱き寄せた。

 制服越しに、男性特有の筋肉のある体つきの感触が伝わってくる。


「ノ、ノクス様……っ!?」


 私は顔を真っ赤に染める。


「失礼ですが、セレナ嬢を先に誘っていたのは私の方です。横入りとは感心できませんよ?」

「セレナは俺の婚約者だ。残念だが、優先されるのは婚約者の方だろう?」


 ミシェルとノクスは表面上は笑顔を浮かべているものの、水面下では火花をバチバチと散らしているのが、ありありと私の目に映った。


「ノクス様とミシェル様が、セレナ様を取り合ってるわよ……!」

「セレナ様、羨ましいわ……」


 まるで恋愛物語の一幕のような光景に、きゃあきゃあと令嬢たちは騒いでいるが、ノクスに抱きとめられている状態だったので、私の方はそれどころではなかった。

 ノクスは「俺の」という部分を強調する。ノクスの腕のなかに収められているのも相まって、自分のものだと主張されているみたいでとてもドキドキした。


 あ、いや、そんな場合じゃない。ノクスが私を庇ってくれているのだから、ちゃんと私もミシェルのお誘いを断らないと。


「ミシェル様、そういうことですので、今日はノクス様と一緒に昼食をとらせていただきたいと思います」

「おや、振られてしまいましたか」


 私がそう言うと、今度こそ諦めたのかミシェルは残念そうに肩をすくめた。


「ではまた今度、是非ご一緒させてください」


 ミシェルは爽やかに笑って去っていった。


「ふん……危なかったな、セレナ。大丈夫か?」


 ミシェルが去ったことでノクスは私の肩から手を離した。少しだけ名残惜しさを感じつつも、頷く。


「はい、大丈夫です。ありがとうございました、ノクス様」

「これで一件落着だな」

「全然違うわよ?」

「リ、リリス……?」


 今まで席を外していたのでいなかったリリスが、にゅっと割り込んできた。リリスは笑っていない笑みをノクスへと向けると、首を傾げる。


「ノクス様、私が少し席を外している間に、何私からセレナを盗ろうとしているのかしら」


 そう言ってリリスは私の腕を抱き寄せた。

 あ、そういえば今日はリリスと一緒に食堂へ行く約束をしていたのだった。勝手にノクスと行くってミシェルに言っちゃった。

 ノクスはリリスから向けられる冷気にも動じずに、肩をすくめて言い返した。


「セレナは婚約者である俺と一緒に行くことになった。これから一緒に食堂へ行くところだ」

「親友との約束の方が優先されるに決まってるでしょう?」

「そもそも、肝心な時にいなくてセレナを守れなかったお前に、任せてはおけないな」

「いつも昼休みにいないくせに、どの口が言っているのかしら。セレナにすり寄る男から私がどれだけブロックしてると思ってるの?」

「リリス……仮面が剥がれてきてるよ……!」


 私は私たち以外の誰にも聞こえないように小声で忠告する。リリスは一応学園では猫を被っているのだ。

 しかし私の忠告も虚しく、笑顔のリリスと仏頂面のノクスは火花を散らし始めた。


 その後、なんとか二人を説得して、三人で食堂に行けばいい、という結論に達した。ノクスとリリスを説得するのはすごく大変だった。

 普段なら二人のやり取りだって楽しめるのだけど、本音をいうと、明るく振る舞っているものの心はずしんと重かった。

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 ミシェルの全身(頭のてっぺんから爪先まで)の毛という毛の毛根を死滅させて、タマァ捥ごうよ!(黒笑)
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