表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【書籍化&コミカライズ化!】貴方に未練はありません! 〜浮気者の婚約者を捨てたら王子様の溺愛が待っていました〜  作者: 水垣するめ
二章

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/62

40話

「だから、あれほど気をつけろと言っただろ……」


 昼休み、とりあえず作戦会議、という名目で私とノクス、そしてリリスは生徒会室に集まっていた。

 ミシェルは親睦を深める意味もこめて、食堂でクラスの生徒たちと昼食を食べている。

 私も誘われたのだが、ノクスとリリスに呼ばれたのでそちらを優先する事になった。


「申し訳ございません……」


 返す言葉もなく、私は素直に謝った。

 変なことを考えていたからだ。

 こんなことになるなら、もっと隣に空白ができないようにしておくべきだった。

 教科書を置くなり、色々と出来たはずなのに……。


「うちのクラスにも留学生がやって来た。ミシェルの執事だ」

「どんな方ですか?」

「普通の執事といった感じだ。名前はオリバー・アシュモア。王子付きの執事とだけあって仕事は出来そうだな。ただ……」


 ノクスが訝しげな顔で考えこむ。


「どうしたんですか?」

「シルヴァンディアの第三王子は、この国に留学する際に、執事一人しか連れてこなかったんだ」

「え?」

「執事一人? 王族がたったそれだけの使用人で留学してきたの?」


 リリスが眉を顰めた。

 私も同意見だった。王族の使用人が執事一人だけなんて、流石に少なすぎる。


「ああ、俺達もそう思って使用人をつけようか、と申し出たんだが、『ただでさえわがままを言っているのに、そちらに迷惑をかけるわけにはいかない』と固辞されてしまった。今日から学園の寮に住むという徹底ぶりだ」


 学園にある学生寮は、王都に居住を持っていない地方の貴族や平民のための施設だ。

 王族からすればかなり手狭に感じるだろう。

 普通の人からすれば人の出来た王子だとイメージを抱くだろうが、マリベルを匿っている国であることを知っている私達からすれば、どうしても怪しさを感じてしまう。


「そう言われると、やっぱり怪しいですね……」

「ああ、王族が執事一人だけで留学してくるなんて、前代未聞だ。裏がある気がしてならない。セレナ、お前も気をつけるんだぞ。奴は何を考えているのか分からないんだからな」

「でも一応、スパイじゃないかと思ってミシェル王子のことは観察してましたけど、特に悪い人という印象はありませんでしたよ?」


 ミシェルはとにかく人柄のいい人物だった。

 自己紹介のときに「生徒として別け隔てなく接して欲しい」と言った言葉の通り、たとえ平民の生徒であったとしても丁寧に接している。

 そんなミシェルの姿はすぐに学園中に広まり、ますます令嬢から人気を集めている。

 ノクスというアイドルに婚約者が出来た今、新しい王子様の出現に、令嬢たちは色めき立っているのだ。

 ミシェルには婚約者がいないこともそれを後押ししていた。


「とにかく、引き受けてしまったものは仕方がない。が……」

「が?」


 ノクスの思わせぶりな態度と台詞に、私は首を傾げる。

 ノクスは私の頬に軽く触れてきた。


「お前は、俺の婚約者なんだからな」

「……? はい、もちろんです」


 なぜ今さら、そんなわかりきったことを確認するのだろう。


 ……いや、待って。

 私はノクスの言葉の意味に気が付いてしまった。


 もしかしてこれ、私がミシェルの顔につられて引き受けたと思っているのでは……?

 そういえば、ノクスと偽装婚約を結ぶときに、ノクスが提示した「顔のいい男を侍らせることができる」という条件に心を惹かれていたことを思い出す。


 ノクスはあの時と同じように、私がミシェルの整った顔に惹かれて、ミシェルの学園でのお手伝い係を引き受けたと思っているのではないだろうか。

 それは不名誉な勘違いだ。ちゃんと誤解を解かないと……。


「勘違いしないでほしいのですが、顔に負けたわけではありません!」

「……は?」


 ノクスが素っ頓狂な声をあげた。


「確かにミシェル王子は端正な顔立ちをしています。そして私は整った顔が好きです。でも私のタイプは、ノクス様みたいなちょっとオラオラ系が混じった顔がタイプで、優しい系のミシェル王子ではありませんから!」


 慌ててまくしたてると、きょとんとしていたノクスの頬が緩んだ。


「ああ、分かってるよ」


 ふう……良かった。これで誤解は解けたはずだ。

 そう思ってノクスの表情を見るが、しかし未だにノクスの表情が完全に晴れた、ということはなかった。

 あれ、なんで?


「でも、学園では、あいつと一緒にいることになるんだろ?」


 ノクスがそっぽを向く。

 私はさらに首を傾げてもう一度、同じことを説明した。


「へ? いやですからあくまで成り行きでお手伝い係を引き受けてしまっただけで、私としては別にミシェル王子の顔が好きなわけでは……」

「……もういい」


 ノクスはつまらなそうな顔でそっぽを向いてしまった。

 私、何か機嫌を損ねるようなことをしてしまったのだろうか。

 助けを求めるようにリリスを見てみる。

 リリスは「お手上げね」と呆れたように首を振っていた。

 やっぱり、いとこのリリスとはいえ、男心を理解するのは難しいのだろうか。

 そんな感じのことをリリスに言ったら、「お手上げなのはあなたよ」と言われた。どうして……。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
あれれれこの子ってこんなにお花畑的な女の子でしたか? ちょっと違った角度で読んでました(;^_^A
[一言] 話の流れ的に関わらせなけれはならないとはいえ、学業の成績良いのに、王子と親友の忠告が脳みそに残ってない状態に頭がお花畑感を感じます。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ