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【書籍化&コミカライズ化!】貴方に未練はありません! 〜浮気者の婚約者を捨てたら王子様の溺愛が待っていました〜  作者: 水垣するめ
一章

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26話


 そして週末になった。

 この日は友人と街へ出かけることになっている。

 私の親友である公爵令嬢のリリスだ。

 しゃなりと涼しげな銀髪に、湖畔の女神かと思うような美貌を持つリリスは学園で男性女性を問わず憧れの的だ。

 しかし今日は──


「いつ見ても本当に似合うね。リリスのそれ」

「ええ、そうでしょう? どう、別人に見えるかしら」


 銀髪をまとめ上げて金髪のウィッグに入れており、服装はシャツとジャケットにズボンというラフな服装。

 今のリリスはどこからどう見ても男性にしか見えなかった。しかもとびきりの。

 私もリリスが口を開かなければ初見でリリスだとは分からなかっただろう。

 リリスはそれなりに背も高く、今は厚底の靴を履いているので、もう男性にしか見えない。


 私も今日は全くの別人に見えるような、変装メイクをメイドにしてもらっている。

 街中で男性のように見えるリリスと歩いていて、変な噂が立つのはノクスにも申し訳ないからだ。


「最近、私に構ってくれないから、今日は私が独り占めするのよ」

「そうなんだ」

「……」


 リリスの独占欲に聞こえるような言葉はいつもよく聞く冗談なので、聞き慣れた私はサラッと流す。

 何か言いたそうにしていたリリスだが、


「でも、なんでいつもそんなにバッチリ変装してるの?」

「前に言ったじゃない。セレナと一緒よ。正体がバレたくないから男装してるのよ」

「確かに正体はバレないだろうけど……」


 今のリリスは全くの別人だ。

 上位貴族が街中を歩いていて、通行人を不意に脅かせてしまう、なんてことはないかもしれない。


「これだけ変わってたら絶対にバレないでしょ?」

「確かにそうだけど……」


 その代わりとっても目立ってるんだけど……。

 さっきから通行人の視線がとても痛い。

 特に女性からの視線が多い。もちろん向けられているのはリリスだ。皆リリスを見て頬を赤らめている。

 リリスは目を引くような美少年に変化しているので、その注目も仕方がないとは思うのだが……。

 まあ、リリスは私と出かけるたびに男装してくるので、私もだいぶ慣れてきた。

 それに私は知っている。


「本当は男装が好きなだけでしょ」

「……それもあるけど」


 正体がバレないように、という理由も本当なのだろうが、リリスは男装そのものが好きなのだ。

 親友なんだし、見ていれば分かる。

 ただ、世間から見ればまだ女性が好んで男装するというのは奇異の視線で見られることが多いので、リリスは公にはしたがらないが。


「私は何とも思わないよ」

「ありがとう、セレナ。あなたのそういうところに本当に感謝してる」


 リリスの大げさな感謝を受け流すと、私とリリスは街を歩き始めた。

 男性に見えるように、表情や仕草、話し方までも変えているリリスは、キラキラと光る笑みを私に向ける。


「それで、今日はどこに行くの?」


 私はリリスに質問する。

 今日の予定はリリスにお任せすることになっている。

 というのも、「最近私がリリスを構わなかった」という理由で駄々を捏ねられたので、リリスを宥めるために今日は一日付き合うことになったのだ。

 リリスは顎に手を当てて考える。

 そんな仕草も恐ろしいくらいにハマっていて、不意にどきりと心臓が跳ねた。


「今日の予定は前からセレナが行きたがってたパフェのお店に行って──」

「あ、ごめん。そのお店はもう行ったんだ……」


 ノクスと偶然会った日、もうパフェは食べてしまったのだ。


「……」


 またリリスが何かを言いたそうな目で私を見つめていた。


「ご、ごめん。その時の流れでつい食べることになって……」


 私はリリスに謝る。

 するとリリスは案外すんなりと許してくれた。


「別にいいけど。じゃあ、他の店に行こうか」

「わかった」


 私はリリスに断りを入れずにパフェを食べてしまった手前、罪悪感からその言葉を受け入れた。


 リリスに連れられてきたのはこれもまた、あのスイーツが網羅されている本に載っている、有名な店だった。

 店の中に入った途端、店内の視線が一気に私たちに注がれる。


「セレナは何を食べる?」

「私は紅茶と……これを……」


 リリスと私は店員に注文して、おしゃべりをしながら注文した商品を待つ。


 リリスはやってきた紅茶を飲む。

 その仕草一つまでもが洗練されており、改めて見ても完璧な男装だなと感心させられる。

 店内の女性の視線はすでにリリスに釘付けになっており、ついでに私にもその視線は注がれている。

 こんな美少年の隣にいるのはどんな女だ、と値踏みするような視線だ。

 幸いにも試験には合格したようで、すぐに私からは視線が外れていった。


 そしてカフェから出ると私とリリスは歩きながら、次はどこに行こうかと話す。


「次はどこに行くの?」

「服を見に行こうかな」


 私が質問するとリリスがそう答えた。

 そしてスッと腕を差し出してくる。

 私は何も言わずにその腕に自分の腕を添える。

 これはナンパを防ぐためだ。主にリリスへの。

 そうして、私とリリスが腕を組んで歩いていると……。


「あ」

「ん?」


 ノクスと遭遇した。

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