最悪なスタート
神様の声を聞き、(体感だが)しばらく経って、意識が戻った。なんか、意識がないはずなのに時間が過ぎていくような感覚があって少し不思議な時間だった。
目が覚めて、ゆっくり視界が開けてくる。目の前は草原だった。
――ん?あれ?おかしいぞ?赤ん坊は草原にはいないはずだ……しかも視界が360度しっかり見えるようになっている。体の感覚もおかしい。
――嫌な予感がする。恐る恐る【ステータス】と念じる。すると目の前にステータスっぽいのが浮かび上がった。
◆◇◆◇◆
《ステータス》
名前ーなし
種族《ユニーク:ワールドスライム》
職業《ユニーク:神を目指す者》《職業ランクSSS》
《LV1》
強さランク《F》レアランク《SSS》
スキル
-常時発動型-
《成長限界無効》《取得経験値増加LV10》《必要経験値減少LV10》
《魔力感知LV10》《気力感知LV10》《直感LV10》《予測LV10》
《物理耐性LV1》《毒無効》《病気無効》《疲労無効》
《体力自動回復LV1》《魔力自動回復LV1》《気力自動回復LV1》
《再生LV10》《不老》
-発動型-
《暴食》《吸収》《体変化LV10》《能力向上LV1》《速さ向上LV1》
《思考加速LV1》《叡智》《鑑定(真)》《アイテムボックスLV10》
-称号型-
《魔王の卵》《神の加護》《転生者》《ユニークモンスター》《格上特攻》
《ライバル特効》《戦闘の才能》《魔法の才能》《武器の才能》
能力値
《生命力―46》
《防御力―14》
《力―39》
《素早さ―503》
《魔力―25》
《気力―25》
◆◇◆◇◆
情報量多すぎ!そもそもなんで俺スライム!?俺が想像してた転生と違うんだけど!!
スキル強そうだけどなんでFランクのスライム!?人間どころかFランクモンスターって意味不明なんだけど!!
……ふう、一旦落ち着け。ビークールビークール。変なテンションになってる。
まず、情報を整理しよう。
名前なしは、この世界で名付け親がいないから仕方ない。
種族、スライム……とりあえずこれはいいや。
職業、神を目指す者?よく分からん。
ランクF……ひとまず置いておこう。
………………………待て。そもそもこの世界の基準値が分からん状態で情報整理しても意味無くないか?
うーむ、情報不足を解消出来そうな可能性があるのは、ステータスにあった《叡智》のスキル。スキルの発動の仕方はなんとなくわかるんだけど、ちょっと何が起こるかわからないから、怖いな。でもやるしかないし、
――よし、やるぞ!
《叡智》、この世界の基本的なステータスに関する知識、オープン!!
◆◇◆◇◆
◀ステータス▶その生物の能力、スキルなどの総称。
◀スキル▶能力のこと。最大レベル10であり、進化することもある。常時発動型、発動型、称号型がある。常時発動型は、オンオフが可能で、基本ずっと発動していられる。発動型は、自分の意志で発動するスキルで、魔力や気力を消費することが多い。称号型は、常時発動型のオンオフできないもののようなもので、効果がないものもある。
◀レベル▶そのままの意味。魔力か気力を持つ物を殺すか、成長することで、上げることができる。ちなみに人間の大人の平均値がLV30である。
◀強さランク▶その物の強さを表しているもの。
◀レアランク▶その物の希少性を表しているもの。
✳強さランクとレアランクはFからSSSまである。人間にはレアランクはない。
◀職業▶その者に生まれながらに与えられるもの。ランクがあり、EからSSSまである。進化させることもできるが、系統を変えたり、ランクダウンさせたりすることは、できない。
◀能力値▶その物の詳しい戦闘力のこと。ランクに換算すると、
F―1~50 E―51~300 D―301~650 C―651~1000 B―1001~5000 A―5001~10000 S―10001~50000 SS―50001~200000 SSS―200001~…となる。
…………………………や、やっぱ俺弱過ぎーーーー!!!
ふざけんな!あの神!何がチートだ!
――はぁ。
ここまで俺が弱いとは。転生の意味ねーじゃん。どーすんだこれから……。
これからを考え途方に暮れていると、
『ごめんごめん!連絡遅くなっちゃって。』
声が聞こえた。とても聞き覚えのある声だ。
『お?僕の声を覚えててくれたの?嬉しいな。』
もしかして、心が読まれてる?
『そうだよー。神様だからね。君の心を読むなんてわけないさ。』
なら聞くがな!なんで俺を弱小スライムに転生させたんだ?!
『おーおー、急に強気できたねぇ。まあまあ怒らない怒らない。説明するから。
実はね、君を転生させる時、君の魂が人間ではなくスライム寄りでね。スライムの体に引っ張られてたのだよ!僕が気づいた時には手遅れだった。だからせめてと思ってスキルはたくさん渡したんだけどね。君以外にも1人モンスターになってたからそっちの対応もあって大変だったからさ。体自体を強くし忘れたんだよ。てへ☆許して☆』
ふ、ふ、……ふざけるなーーー!!!許すかーーー!!!
『うわぁ!!そんなに怒らないでよ。僕だって頑張ったんだよ?』
……そうだな…。落ち着こう。悪いことばかりじゃないんだ。スキルをたくさんってことは、この世界では俺のスキル量は多いってことだからな。
『その通り。平均と比べてかなり多いよ。君の成長によってはスキル量世界最多も夢じゃないくらいにはね。しかも、利点はまだある。他の転生者達はまだ母親のおなかの中だけど魔物の君は今から活動できる。これはいいフライングだよ。』
おお、それ聞いて少し気が楽になった。
『それはよかった。それじゃ、引き続き頑張ってねー☆』
やっぱり、このキャラが素だったのか……。
よし、うまく丸め込まれた気がしなくもないが、まあ切り替えていこう。
じゃ、この世界での俺の立ち位置について知ろうか。《叡智》オープン!
◀ワールドスライム▶今から15分前に生まれたユニークモンスター。体の色を自在に変えられ、その核は虹色である。その体から作ることができる薬は、生き物の成長限界を無くしたり、病気も怪我も全て無くし二度と病気にかからず毒が効かない体にしたりなど、さまざまな種類があり、そのどれもが神話級の効能を発揮する。また、その核を食べれば全盛期の体になりそのまま不老不死状態となる。
人間たちには、おとぎ話で登場するスライムとして知られており、ユニークモンスターで、最近誕生したにも関わらず、知名度も高い。
ま、マジか……。「15分前」にツッコむ気力すらわかんな。この世界の冒険者がどういったものか知らんけど俺は狙われる身、か……。
じ、じゃあ、他のスライムに混ざれればいい。他のスライムについて知らなければ。《叡智》オープン!
◀スライム種▶お餅のような形をしたドロドロした液体の塊が膜で覆われているようなモンスター。体の形をある程度変化させることができ、ほとんどの個体が、直接戦闘能力が低い代わりに、物理攻撃に対する耐性と再生能力を持つ。表面の色や中の核の色で種類を見分けることができ、種類によってさまざまな能力を持つ。また、体や核からは、薬草よりも高性能の薬が作られたり、魔道具の素材になったりするため、450年前に、人により乱獲され、今は強力な魔物が多く存在する危険地帯である魔領域にのみ生息している。そのため、その素材は非常に高価である。
……もはや呆然としてしまう。
俺は、(少なくとも人間には)いい素材だということだ。遭遇すれば、かなりの確率で殺されてしまう。人に出会う前になんとかしないと……。
――とりあえず切り替えよう。叡智に出てきた《魔領域》という言葉が気になるな。
《叡智》オープン!
◀魔領域▶世界の中心にあるとされる広大な円状の危険なエリアである。火山地帯、森地帯、氷雪地帯、水地帯、草原地帯の5つのエリアがありそれぞれに強さランクFからSランクのモンスターが多数生息している。中には強さランクSSランクのモンスターも現れる。中心に近づくほど、強いモンスターが出現する。
ちなみにここは、魔領域草原地帯で、中心から最も遠いエリアである。
……は?ここって、そんな危険なところなのか!?
マジで俺、運悪すぎだろーーーーーーー!!!
――こうして、俺の第2の生は最悪なスタートをきったのだった。――