ジュニア登録
この校外実習は、冒険者ギルドへのジュニア登録手続きも兼ねていたらしい。
町の学校では、卒業後の就職を見据えて、冒険者ギルド、商業ギルド、製造ギルドなどに仮登録する制度があるようだ。
こうやって子どもたちに広く職業体験をさせることで、親の後を継ぐだけでなく、本人の適性に応じた職業を選択できるようにしているそうだ。
なかなか理にかなった制度じゃないだろうか。
西の森から帰って来たジェシーたちは、そのまま皆で冒険者ギルドに行き、ヤンに教えてもらいながら薬草などの買い取りをしてもらった。
ジェシーとミリアが採ってきたものは、量が多く、状態も良かったので、他の子より高く買い取ってもらえた。
ミリアは小さい頃から山で木の実や果物を採取していた経験があるので、食べられる物を見分ける目が育っている。
ジェシーは、やはり前世の記憶があるということが大きいのだろう。今回のような実習になると仕事の段取りなどが問われるんじゃないだろうか。目的に応じた採取方法を工夫したり、どうすればいいか考えて効率よく動いたり、そんなことが自然にできるというのは大きなアドバンテージになるようだ。
それに途中で開眼した魔法的なサーチ能力のおかげがあった。
帰り道では、ピンポイントで薬草が見つけられたしね。
雑に採取していた男子たちが、結果を聞いて悔しがっていたが、そんなこと知~らない。
悔しかったら、我が身を振り返り自分の採取方法を反省したまえ。ハッハッハ
そんな風に図に乗っていたのだが、ジェシーにもまだまだ勉強が必要だったみたいだ。
買い取り場所にいたお姉さんが一束の草を持ち、残念そうにジェシーに話しかけた。
「このポレポレ草って、なかなか見つからないんだけど、本当にウエスト・フォレストにあったのよね」
「はい」
「じゃあ今度、採取にいくことがあったら、根元の赤い色がついてる辺りまで採ってきてくれる? この草はポーションの材料になるんだけど、根元の部分に一番滋養があるの。赤い部分まできれいに採取できてたら、もう少し高く買い取れるからね」
「そうなんですか、わかりました」
ガーン、そうだったのか。
それでもこういう失敗を教えてもらえるのは、ありがたい。悔しい思いをしたからこそ身に付くというものがある。絶対次からはもっと工夫してみようと思えるもんね。
今日は冒険者ギルドで解散になった。
今後、草の採取や探し物など、冒険者カードを使って活動する場合は、ギルドの受付に来て届け出るよう言われた。
森に行く時には「方向石」というものを貸し出してくれるらしい。この石を持っているとギルドがある方角がわかるので、迷子にならないそうだ。探し物をしたり誰かの手伝いをして稼ぐ時には、受付のお姉さんが双方の間を取り持ってくれると言っていた。
これはなかなかいいアルバイトになりそうだ。
ミリアと今度の休みに森へ採取に行ってみようなどと相談しながら歩いていたら、道の向こうからものすごくピカピカ光ってるお姉さんが歩いてきた。その人は、さっきジェシーたちが出てきたばかりの冒険者ギルドのドアを開けて中へ入って行った。
あの人、何?
えっと、光っているということは、役に立つ草……じゃなくてぇ、役に立つ人間?
「ジェシー、さっきからどこ見てるの? ぼうけんしゃギルドにわすれものでもした?」
ミリアに怪訝な顔をされたが、何でもないと言ってごまかした。
その人の中の何かが光る。
うーん。
その人が有能かどうかで光る? いや、それだと先生や冒険者ギルドの人たちが光ってなかったのはおかしいな。
あ、もしかして魔力?
「そうだ、それだっ!」
「ああ、びっくりした。それって、どこにあるの?」
「ふっふっふ、魔力だよミリア」
「ん、もう。ジェシーったら、今日はなんだかおかしいよ」
そうだね、今日は今までで一番、おかしな日だったかも。
ミリアと別れた後で、おじいちゃんちに寄ってみた。そこで作業場にいたサード叔父さんを見つけた時に、ジェシーは確信した。
やっぱり魔力が光ってるんだ。
サード叔父さんは、あのお姉さんほど眩しくなかったが、それでもそこにいる人の中で一人だけ、ほんのりと白く光っていた。