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製造ギルド実習

学校で製造ギルドの実習が始まることを告げられた頃には、母のつわりがだいぶ落ち着いてきていたので助かった。

母が朝から店に出られるようになったので、ジェシーは学校の帰りに店に寄って、少しだけ荷運びなどの手伝いをするだけでよくなった。午後の時間がほぼ自由になったので、またミリアと二人で森にも行けるようになっている。


ジェシーとミリアは、森での採取で得たお金で、徐々に装備を増やしつつある。


「今度、膝当てを買ったら、次は短い槍を買おうかなぁ」


「うん、わたしもカマじゃなくて、短剣がほしいなー。かたほうにギザギザがついてるやつ。あれがあるとクッコイの実を切って、タネがとりだしやすいし」


ジェシーは父親に聞いたアドバイス通りに装備を揃えていっているが、ミリアは最初に鎌を買った。固い茎の薬草を採取しやすそうだという理由からだ。

次も村に帰ってからも使えるような短剣を買おうとしている。


初級クラスでの一年も残すところ後半分なので、ミリアの思考も村に帰ってからの採取生活に向けてのものになってきているのだろう。


ミリアと一緒にいられるのも、あと一年と半年か。

こういう時には、ちょっと寂しさを感じる。ミリアの将来はもう決まっているのだが、ジェシーはまだ自分が何になりたいのかわからない。


今度の製造ギルドの実習は、自分がやってみたい職場を選べるらしい。


ミリアは、教えてもらったことを村に帰ってからも生かせるからと言って、すぐに縫製工場の実習を先生に頼んでいた。

ジェシーは縫物をしていると、イライラして叫び出したくなるので、ミリアと一緒に縫製工場に行くわけにはいかない。


あーあ、実習、どこにしよう。


いっそのことチャドんちのおじいちゃんに頼んで、鍛冶を教えてもらおうかなぁ。そうしたら、自分の武器を自分で作れるし。経済的じゃない?



そんなことを考えて、森から帰ってきてすぐに裏のおじいちゃんに頼みに行ったら、けんもほろろに断られてしまった。


「いくらジェシーの頼みでも、それは聞けんな。鍛冶師は体力勝負じゃ。女の力では鉄に負けてしまう。目の前にある金属の塊をねじ伏せて、なだめて、そいつがなりたい器を渾身の力で造ってやるのが、わしらの仕事じゃ。ま、ジェシーが生まれ代わって男にでもなったら、考えてやらんでもないがな」


そう言って、ワッハッハと笑ったおじいちゃんの背中を、ジェシーとチャドは二人だけがわかる思いで見つめてしまったのだが……いや、それはいくらなんでもマズいでしょう。


男に変身する?


いやいや、今回は学校がらみの実習だから、それは無理だ。

でも今後、鍛冶をする時だけ男になるという、そんな選択肢もあるのかもしれないなぁ。


ジェシーが何を考えているのかわかったのだろう。チャドは苦虫を噛みつぶしたような顔をしていた。


「お前、鍛冶を安易に考えるなよ。片手間にできるような仕事じゃないんだぞ」


「それは経験してみないとわからないでしょ? チャドだってやれてるんだし。ま、今回は違うところで実習をするよ」




それからも色々と考えてはみたのだが、結局どれもが決め手にかけるので、もう深く考えないことにした。

そうよ、実習でやったからって、必ずその職業に就くわけじゃないんだし。何でもやってみないと自分に合ってるかどうかなんてわからない。


ということは、採取で馴染みのある薬草を扱う仕事にしてみようかな。


一旦決めると行動の早いジェシーは、翌朝、さっそく先生に申し込んだ。


「先生、製造ギルドの実習のことですが、薬師のところでお願いします」


「え? 本当にそこでいいの?」


先生は不安そうにジェシーに確認してくる。

ジェシーとしては先生が何を心配しているのかわからなかったが、もう考えるのもめんどくさくなっていたので、そのまま薬師見習いとして実習を受けたいとお願いしておいた。


授業が終わった後で、ワルスの子分のブラッドが、珍しくジェシーに近付いてきた。


「お前さぁ、あそこのばあさんのこと知ってるのか?」


「どこのばあさんのこと?」


「うちの町の薬師といったら、ヴェルカばあさんしかいないだろう。薬師が増えないのはばあさんのせいだって、みんな言ってるじゃん。もう何年も薬師見習いをしたいなんて言い出す生徒はいなかったし、先生も困ってるんじゃないか?」


そういえばブラッドは情報屋なんだった。


どうやらジェシーのお師匠様になる人は、一癖も二癖もある人らしかった。

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