第二十二章その3
ワイとダリアは見事異種族の全てを仲間にすることに成功した。
全ては<神の軍勢>に抵抗するため。
「アタイらは別に構わないけど、長耳とかずんぐりむっくりも了承してる話なの?」
つまり、神たちを倒すことを話しているかどうかってことか。
「それは話してないんだけどさ。むしろまだ本当に戦うかどうかも決まってないし。最悪の場合はってことなんだけど。」
「私達小人族は、勇者様を全面的に支持いたしますわ。」
タイニーがスカートを両手で軽く持ち上げながら片足を引く。そのまま膝を折って前かがみになって貴婦人のようなお辞儀をした。
「ダリアは元々タローの言うことに大賛成なのだ!」
ダリアもタイニーの真似をしようとしたが、そもそもスカートじゃないし上品な振る舞いなんて言葉似合わない。
ぐいっ。とケツを後ろに突き出しただけの形だ。
「あんた。何やってんの?」
チラコンチネがジト目でダリアを見る。
「なっ!何ってタイニーの真似なのだ!」
やや焦りながらダリアが言う。
だから無理があるって。
ぷーっとダリアがふくれっ面になった。
まぁあれだよね。ダリアのこういうところは可愛いと思う。
「まぁ長耳もずんぐりむっくりも、勇者やダリアが言えば素直に言うことに聞いてくれそうだしいいんだろうけどね。」
相変わらず両手を頭の後ろで組みながらチラコンチネが言う。
まぁでもワイもそんな気がする。
何だかんだワイって勇者だし?
ダリアも魔王の娘だし、ワイとダリアの特権で何とかなりそう。
「私達犬人族も勇者様に一生ついていきます!」
尻尾を振りながら、撫でて欲しいと言わんばかりにこちらにすり寄ってワチワヌイが言う。
またダリアが怒りそうだな。
「同意。機械族も勇者に付いていく。」
「とりあえず俺が考える今のところの予定なんだけど、みかん町に仲間がいるんだ。人族だけど。」
人族という言葉を聞いた瞬間に、チラコンチネ・タイニー・ワチワヌイ・1が殺気立った。
「その仲間も含めて<神の村>に向かいたいんだ。」
「それは聞いたよ。んで、神に交渉するってわけ?」
チラコンチネが噛みついてきた。
まぁ人族を認めてないんだろうからしょうがないか。
「神たちは俺に、魔族を滅ぼすように言ってきてるんだ。それはつまりダリアのお父さんである魔王を殺せってことなんだけど、俺としてはそれは承服できないわけだ。だから交渉をするってこと。そもそも何で魔族を滅ぼしたいのかも知りたいしね。」
素直にワイがみんなに言う。
「ダリアもそれは気になるのだ。かつて神と戦ったとパパからは聞いたけど、それはもう昔の話なのだ。」
ダリアも頷く。
つまりダリアも、神が自分達魔族を滅ぼしたい理由を知りたいのだろう。
魔族が何か問題を起こしていて、滅ぼさないとダメならば仕方ないかもしれない。
でもワイが見て回った限りでは、そんなことは全くなかった。
「なるほどねー。魔族を滅ぼす理由か~。確かに昔戦争していたからってだけだと意味分からないもんね。」
チラコンチネが納得したように言う。更にチラコンチネが続ける。
「アタイはその言葉を聞いて納得したよ。人族と一緒にいてもそれを認めるよ。他の奴らがどう感じるかは知らないけど、アタイは人族を絶対に許さない。でも、勇者とダリアの言葉を聞いたら我慢はできる。その後のことは知らないけどね。」
「エルフには、他の種族には聞くなって言われたんだけど、なんで人族をそんなに恨んでるの?」
ここまで来たら知りたくなった。
「そっか。勇者は知らされてないんだ?じゃあワチワヌイ達が怒ってた理由も分からないし、アタイ達が人族に協力しない理由も分からないでしょ?」
そう言ってチラコンチネが教えてくれた。
「そもそもこの地に最初に誕生したのが魔族なんだよ。で、次にアタイら人族以外の種族。人族が誕生したのはかなり後。なのにあいつら我が物顔で蹂躙してさ、知能だけ高かったから、それで魔族は住処を追われて、アタイらいわゆる<異種族の世界>に追いやられたのさ。」
「その後に神と呼ばれる存在を誕生させてしまってからは、人族は神の奴隷らしいのです。」
チラコンチネの言葉を引き取ってタイニーが続けて話した。
なるほど。これだけでも確かに人族に恨む理由になるわな。
「つまり、神に俺が話に行くとなると魔族を滅ぼすための作戦を練るみたいな感じに聞こえるわけか。」
ワイがなるほど。と思って言うと、そゆこと。とチラコンチネが言った。
「んでさ、交渉って言ってたから、自分じゃなくて他の人に魔族討伐をお願いするとかさ、ダリアと上手くいってるからって理由で、討伐したくないって言いたいのかな?って思ってたわけよ。そもそもさ、勇者は魔族を倒すための存在って言い伝えられてて人族と仲良くしてるわけじゃん?アタイらからしたら何しにここに来たの?ってなるわけよ。」
「でも、ダリア様と一緒にいて、魔族を滅ぼさないと聞いて、私達も協力しようと思ったわけなんです。」
タイニーがにこりと言う。
なるほどね。
人族に恨みを持つ異種族たち。
人族と行動を共にしていた勇者のワイが神に会いに行こうとしていた。
そっか。確かに信用できないわな。
エルフの長が言ってたな。自分の目で世界を見ろと。
つまり魔族が本当に悪なのかどうかを見極めろってことだったのかな?
今のワイからしたら、神が一番の悪に感じるな。
人族は…自分勝手だけど自分達繁栄のために他の種族を追いやったんだろうな。
「もしも、この話が本当だとして、神が自分勝手な理由で魔族を滅ぼそうとしているなら、俺は神の力にはなれそうもないな。むしろ敵対するかもな。考え方はちょっと変わったけど神に抵抗するのは変わらないかな。」
考え方が変わったのは、人族に対する評価。
カルドン達は知ってたのに、ワイに教えてくれなかったんだろうな。
都合に悪いことは言わずに、そのまま神に従ってワイに魔族を滅ぼさせようとしていたんだろうな。
で、ダリアが魔王の娘と知って、ちょっと考え方が変わった。だからよそよそしい態度だったのかもしれないな。
ワイは勇者という立場だから、魔族を倒すべき存在と、勝手に決めつけられてきた。
異種族やダリアといると、全てが自分の意思決定。
決めつけがないんだよな。
こっちの方が居心地がいい。
「もしさ、究極の選択で人族と魔族どちらを選ぶかってなったら。今の俺は魔族を選ぶかもしれない。」
ワイの言葉に他のみんなが目を見開いた。
「勇者…いいのか?そんなこと言ったら勇者という立場じゃなくなるかもしれないんだぞ?」
チラコンチネが言うが、ワイは勇者という立場になりたいと思ったことないしな。
「勇者はやめれませんけど、本当に立場が危うくなるかもしれませんよ?」
ワチワヌイも慌てて言う。
「警告。そういう発言は滅多にするものではない。」
あぁ、そういうことね。
「ま、ここにいるみんなのことは信用してるからさ。誰にも密告しないでしょ?」
ワイがそう言うと、ダリアが笑顔でもちろん!と答えた。
うん。ダリアは密告する相手もいないしね。
ま、ワイの勇者としての使命は、この笑顔を守ることだから。
ワイ達は機械族のテリトリーを後にして、山脈を越えてみかん町へ向かうことにした。
神と戦うかもしれないのに、こんなに仲間がいて心強い。




