第二十章その2
――りんご市。
<神の軍勢>の幹部、<性欲>のスクリュードライバーは、ギルド長を待っていた。
コンコン。
短いノックの後にギルド長が入ってきた。
取り繕った笑顔を顔に貼り付けている。
「お待たせしました。急な来訪で、何か不都合でもございましたか?」
「知れたことよ。俺様が来たのは不都合があったからだ。でなければわざわざ出向かん。こんな辺鄙な場所まで。」
大陸の北方にあるりんご市は確かに辺鄙かもしれない。
とはいえ、田舎かと言われたらそうでもない。
<神の村>から遠いというだけで辺鄙扱いされてしまったことに、ギルド長はちょっとムッとした。
しかしここは大人の交渉術。
下手に出て、ご機嫌を取らねばならない。
「左様でございましたか。わざわざお越しいただきありがとうございます。おっしゃって下されば、我々の誰かをそちらに向かわせますので、以後はそのようにしていただければ、お手を煩わせることもないかと思います。」
ギルド長が社交辞令を述べる。
神が来た方が早いから、向こうから出向いていることも知っているし、以後なんてあって欲しくない。
「安心せよ。俺様が今日来たことは、お前たちにとっては悲報ではあるが、最悪の絶望というわけではない。俺様の主であるゼウス様は、お前たち人族をお許しになるそうだ。」
ここでスクリュードライバーは一言間をおいた。
ギルド長の表情が変わるのを観察しているかのように、じっと顔を見つめる。
『…許す…我々人族の企みがバレたとでもいうのか?いやカマかけの可能性もある…』
ギルド長は黙ってスクリュードライバーの次の言葉を待った。
「我ら<神の軍勢>の中には、<呪い>の力を使える者がいる。今、そいつの力が開放されようとしている。呪いには、誰にどんな呪いをかけるのかを正確に伝える必要があるらしいのだ。で、俺様が聞いた情報をお前ら人族に伝えるように言われたのだ。呪いの種類は死の呪い。対象者は人族全員。発動条件は、神に逆らった場合。だそうだ。」
ニヤリと笑ってスクリュードライバーは再びギルド長の顔を見る。
自信満々、無表情を貫こうとしていた人族が、恐怖の顔をするのを楽しむかのように。
「わ…私共は…」
精一杯振り絞ってギルド長が言葉を出す。
「今までもこれからも、神に逆らうつもりなどございません。」
顔中汗だらけだ。
「その言葉、信じるぞ。それでは俺様は他の街にもこのことを伝えねばならないから失礼するよ。何しろ誰か1人でも反抗的な意志を見せれば、その瞬間人族は呪いによって根絶やしにされてしまうからな。それは我々神も望んでおらん。」
ニヤリと笑ってからスクリュードライバーは、その場を後にした。




