第十八章その3
月のない夜――
すもも村でカルドンはチーゼルに呼び出された。
「こんな時間にどうした?」
「悪いわねぇ。あなたには話しておこうと思ってね。私たち人族の願いについて。」
そう前置きをして、チーゼルはカルドンに人族の願いについて語って聞かせた。
その内容は、人族の願いは勇者を使って神殺しをしてもらうというものだった。
「よくわからんな。神とは?」
「それはそのうち分かることよ。それよりも大事なのはこれから。私とスカーレットは勇者に近づいて神殺しをさせるという依頼をこの村で受けていたの。で、色々調べている内に、神の村へ行けばそのターゲットである神がいると分かったわ。」
そう言ってチーゼルは、ふぅ。と一息ついた。
「本当はね。勇者に肩入れするなんてするつもりなかったんだけどね。あなたも知ってる通り勇者ってほらいい人じゃない?私わね、勇者に神殺しなんてして欲しくないのよ。もちろん、伝承の通りの魔族を滅ぼすなんてこともして欲しくないわ。」
このまま面白おかしく生きて欲しい。と最後に付け加えた。
「なるほど。さすがに本人には言えないってことか。」
カルドンも頷いた。
「その通りよ。死ぬつもりはないけれど、こういう仕事をしている以上何があるかなんて分からないからね。とりあえずあなたに共有したの。私に何かがあったら太郎のことよろしく頼むわね。」
ふわーあ。とあくびをしてチーゼルは部屋に戻って行った。
『…太郎に魔族を滅ぼしてもらうことが俺たちの目的だった。だが、あの純粋な目を見ていると、そういった定めを押し付けるのが申し訳なくなってくるな。その上神殺しか…』
カルドンは、やれやれと首を左右に振る。
「どこまでも波乱万丈な人生を送るのだな…太郎よ…君のために俺が出来ることはなんだろうか…」
月のない夜空をカルドンが見上げて呟く。




